第126話 天使の笑顔
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工房の裏庭で剣の試し切りを終えた僕たちは、店内に戻り支払いを済ませた。
これでクラウの装備が整ったし、大人になってから使う僕の剣も準備完了である。
さらにカルラの短剣と包丁まで入手できた。
後はリゼとエルの魔法の杖が欲しい。
それも本格的な、一生使い続けられるくらいのものが必要だ。
リゼは今まで、大聖女リーゼロッテが使っていたとされる杖を、僕が土魔法で再現しただけの物を使っていた。
エルにいたっては、杖すら持っていない。
本来、大人が使う魔法の杖は、魔力を含む魔力石を杖に組み込むのが一般的だ。
それにより魔法の発動がスムーズになり、魔力消費量も軽減できるらしい。
魔力量が普通のエルにとっては、魔法の杖を持つ恩恵は特に大きいだろう。
「そう言えばクリス、教皇様がお前たちインフィニティを探していたぞ」
ロータルさんの店内に残っていたバスラー隊長が、真剣な顔で僕を見ている。
「えっ!? 僕たち何かやらかしましたか?」
普段の行動には気をつけていたはずだが、もしかしたら教国特有の法に何か触れたのだろうか?
「ああ、違う違う。悪い意味じゃないぞ。お前ら国中の冒険者ギルドを回って、巨大熊を討伐してくれただろ? それに対するお礼だと思うぞ。たぶん……」
「ちょっ、たぶんとか言わないでくださいよ。不安になるじゃないですか!」
「あー、スマンスマン。呼ばれた理由含め、日時の確認をしておくから教皇様に会ってくれるか?」
バスラー隊長が苦笑しながら僕に尋ねた。
「断る理由もありませんし、お会いするのは構いませんが……」
「よし! 言質は取ったぞ。今日中に確認しておくから、明日孤児院に顔を出してくれ」
そう言い残すと、バスラー隊長は走って外に飛び出していった。
その後僕たちはロータルさんの店を出て、街にある武器屋や道具屋を回ってから帰宅した。
現在、郊外の草原に僕が複合魔法で建てた平家にて、夕食後の紅茶を飲みながら休憩中である。
「お兄様。奇麗な魔力石のついた杖が、手頃な値段で沢山売っていましたね」
皆で買い物をするのが楽しかったようで、リゼが嬉しそうに笑みを零しながら僕を見つめている。
まるでブルーダイヤモンドのように深く青いセルリアンブルーの瞳が、あまりに美しく思わず吸い込まれそうになってしまう。
「お兄様?」
「へ? ああ、ゴメンゴメン。確かに魔法の杖が沢山店頭に並んでいたね。でも探しているのは、希少な魔力石を使った杖なんだ」
「クリス、それだと杖の値段も高額になるのだわ」
「確かにエルの言うとおりだけど、一生使えるくらいの魔法の杖が良いと思ってさ。多少高くても希少な魔力石を探したい。それに教国は大陸一の魔力石の産地だから、探せば見つかると思うのだけど」
「うーん、沢山のお店を回りましたけど、お兄様の言う希少な魔力石を使った魔法の杖は、売っていませんでしたね」
「そうなんだよね。さて、どうしたものか……」
僕、リゼ、エルの三人で悩んでいると、カルラがケーキを持ってやってきた。
「さあ、デザートを食べて気分転換っすよ」
カルラが用意してくれたのは、ショートケーキを更に半分にしたくらいのミニケーキだ。
沢山の種類が皿に並べられているのだが、小さくカットされているので、色々なケーキを堪能できて女性陣に大人気である。
美味しそうなニオイにつられて、離れた所で新しい剣をウットリ眺めていたクラウも加わり、全員でカルラ特製のミニケーキを味わう。
そんな中で最近リゼが始めたのは、ミニケーキを更に半分の大きさに切り分け、その一つを自分で食べて残りを僕に食べさせることだ。
こうすることで、全種類のケーキをコンプリートすることが可能になるらしい。
「はい、お兄様。あーん」
リゼが自分で使っているフォークに、半分こにしたケーキを刺して、僕の口に運んでくれる。
しかも種類の違うケーキごとに毎回だ!
なんという至福のひととき……
リゼも幸せそうにミニケーキを堪能している。
そして皆でケーキを完食すると、カルラが注目を集めるように立ち上がった。
「さあ、第二回ファッションショーを開催するっすよ! 今回は制服コレクションっす!」
カルラが左手を腰にあてて、右腕を高々と掲げている。
「制服?」
「そう、制服っすよクリスっち! リゼたんも自分も学校の制服を着たことが無いっすからね。教国の古着屋で良さそうな物をゲットしてきたっす。ねー、リゼたん」
「ねー、カルラ。今日もお兄様をドキドキさせちゃいますね」
リゼが微笑みながら右目を閉じて、僕にウィンクした。
ああ、小悪魔モードのリゼも超絶可愛い!
「う、うん。お手柔らかに」
「じゃあ、リゼたん。着替えに行くっすよー!」
「はーい!」
リゼがカルラと仲良く手を繋いで退室した。
しばらくすると、カルラが先に戻ってきたようだ。
左に曲がる通路の壁から顔だけ出して、こちらを見ている。
「じゃあ、行くっすよー! まずは冬服っす!」
姿を現したカルラが、腰に両手を当てて真っすぐに歩いてくる。
上はグレーのブレザー、その中に白いシャツを着て、エバーグリーンのリボンを蝶結びにしている。
下はエバーグリーンのスカート、丈は膝上五センチメートルくらいだ。
エルとクラウから『可愛いー!』と声援が飛んでいる。
その瞬間カルラが破顔して、笑みが零れた。
そして僕たちの目の前まで来ると立ち止まり、僕に投げキッスをした。
うう、どういうリアクションをするのが正解なのか。
僕が困っていると、それに満足したのか、カルラが少し移動して道をあけた。
すると次にリゼが登場する。
上はワインレッドのブレザー、その中に白いシャツを着て、リボンは茜色のチェック柄を蝶結びにしている。
下は茜色のチェック柄スカート、丈は膝上五センチメートルくらいだ。
エルとクラウから『天使……』と声が漏れる。
僕も同意見だ。リゼの長く美しい銀髪が、ワインレッドに良く似合う。
ミスコンがあれば、リゼがダントツで優勝するに違いない。
そしてリゼが僕たちの目の前まで来ると立ち止まり、奇麗なカーテシーを披露した。
エルに教えてもらい、今では完璧にマスターしている。
僕、エル、クラウの三人が拍手で称えた。
そしてリゼとカルラが再び仲良く手を繋いで退場していく。
数分後、左に曲がる通路の壁からカルラが顔を出した。
「最後は夏服っす! クリスっち、覚悟しておいた方が良いっすよ!」
不敵に笑うカルラが颯爽と姿を現した。
上着は白地に襟が紺、水色のスカーフをリボン結びにしている。
下は紺のミニスカート、いわゆるセーラー服だ。
「斬新なデザインなのだわ」
「見たこと無い形だが可愛いな」
エルとクラウにも好評なようだ。
そしてカルラは僕たちの目の前まで来ると立ち止まり、胸元のスカーフを緩めた。
するとカルラのGカップの谷間がチラリと見える。
ギャル系? ここでカルラが自分のことを『あーし』と言えば完璧だが。
しかしカルラは再び投げキッスを選択してきた。
二度も同じ手は通用しないと、僕は笑顔を返して余裕を見せてやる。
するとカルラが少し悔しそうに唇を突き出した。リベンジ成功だ。
そしてカルラが少し移動して道をあけると、リゼの登場である。
上着は白地に襟が紺、赤のスカーフをリボン結びにして、下は紺のミニスカート。
カルラと同じセーラー服だ。違いはスカーフが赤であることか。
機関銃を持たせたら絵になりそうだ。この世界には存在しないと思うけれど。
「ギュッと抱きしめたいのだわ」
「お姫様抱っこしたい」
エルとクラウもリゼが愛おしくて仕方ないようだ。
しかしスカートが短すぎないか?
これだと見えてしまいそうだが。
するとリゼが歩くたびにスカートの裾が上下して、チラチラと白いものが見え隠れしている。
こ、これは!
いやいや、落ち着くんだ僕。
どうせカルラの策略で、あれは白い水着だろう。
僕だって日々成長しているのだ。もう騙されたりしないぞ。
でも、リゼが白い水着を着ているのは、初めてのような気がする。
そもそも持っていなかったような……
ん? だとするとチラチラ見えているあの白い物体は……
「ちょっ、リゼ! 見えてる! 見えちゃってるよ!」
僕が慌てて注意すると、リゼがその場で立ち止まった。
「大丈夫ですよ。私は、お兄様になら見られても平気です」
そしてリゼは、スカートのホックを外してチャックをおろすと、そのまま手を離した。
すると当然スカートは重力で落下し、純白の下着が丸見えになる。
僕は慌てて両目を、両手の掌で隠した。
「お兄様、お願いですから目を逸らさずに私を見てください」
リゼが僕に懇願している。
ならば問題ないよね?
僕は恐る恐る指の隙間からリゼを見る。
するとリゼは上着も脱ぎ捨てたようで、上下白い下着姿だった。
六年間リゼと一緒に暮らしてきたが、堂々と下着を見るのは初めてだ。
なんだかドキドキして、顔が熱っぽく感じる。
下着姿のリゼも超絶可愛いのだけど、なんとコメントしてよいのやら。
あれ? なんだろうか、この違和感は?
前世の僕の記憶と比べると、ブラの形状が違うような。
「リゼさんや、これって水着というのでは?」
僕が質問をすると、女性陣が一斉に両手をあげて歓喜した。
「「「「大成功!」」」」
ぐぬぬぬ、全員グルだったのか。
「お兄様、ドキドキしましたか?」
リゼが満面の笑みで僕に問いかける。
「うん、ドキドキした」
「やったー!」
リゼが皆とハイタッチして喜びを分かち合っている。
「ねえ、リゼ。白い水着って持っていなかったよね?」
「はい。今日のために新しく買いました」
妹の弾けるような笑顔を見ていたら、注意する気も失せてしまう僕なのであった。




