第125話 取扱に注意せよ
たくさんある作品の中から
見つけてくれて、ありがとうございます♪
カーム教国の首都アベリアに戻ってきた翌日、僕たちはロータルさんの工房に向かった。
北国の二月初旬は滅茶苦茶寒く、雪こそ降らないが吹く風は肌を刺すように冷たい。
皆が厚着をしてコートを着用しているが、寒いものは寒いのだ。
「うう、お兄様温めてください」
街中で寒さに耐えきれなくなったリゼが、僕に抱きついてきた。
「いいよ、おいで」
僕は着ているコートの左側を開けて、中にリゼを入れてあげた。
「えへへー、暖かいです」
コートの中で僕に抱きついているリゼが、満足そうに笑みを零している。
ああ、僕の妹は今日も超絶可愛い!
クラウが羨ましそうにこちらを見ているが、僕より背の高い彼女をコートの右側に入れるのは厳しいだろう。
そんな状況下でクラウは、自分の欲望よりもリゼの護衛を優先してくれたらしい。
僕の左側に控えて、周囲を警戒しながら歩いてくれている。
するとエルがクラウの左側に移動して抱きついた。
幼馴染の二人は相変わらず仲が良い。
カルラは道に出ている露店の料理を、楽しそうにキョロキョロと見ている。
しばらくしてロータルさんの店に到着すると、そこには先客がいた。
「バスラー隊長、お久しぶりです」
「おお、クリスじゃないか! いつ戻ってきたのだ?」
バスラー隊長が長ズボンにタンクトップという薄着で、ロータルさんと会話をしていた。
こんな真冬に寒くないのだろうか?
というか、タンクトップの胸元がパックリと開いていて、Fカップの谷間がとてもエロい。
「昨日帰ってきました。ところで寒くないのですか、そんな恰好で」
「ん? ああ、運動していないと寒いぞ。さっきまでメンテナンスが終わった剣の試し切りをしていたからな」
バスラー隊長が満足そうに笑みを浮かべている。
「結果は良好だったみたいですね」
「ああ、さすがロータル。完璧な仕上がりだ」
ロータルさんが両腕を組んで、当然だと言わんばかりにうんうんと頷いている。
「クリス、頼まれていた剣ができているぞ」
「ありがとう。早速、確認してもよいですか?」
ロータルさんは黙って頷くと、店の奥の方へ消えた。
そして四つの布袋を持って戻ってくる。
「まずはクラウの剣だ。確認してくれ。長さと重さは以前使っていたものと同じにしてある」
僕がクラウを見て頷くと、彼女は顔をほころばせて赤い布袋を手にした。
中から出てきた剣は、これまた赤い鞘に納められている。
クラウがそっと剣を引き抜くと、銀色に輝く両刃の両手剣が姿を現した。
よどみなくキラキラと美しく輝くその様を、クラウがウットリと見つめている。
どうやら気に入ってくれたようだ。
「ほれ、クリスも確認してくれ」
ロータルさんが僕に黒い布袋を手渡してきた。
「お兄様の分も依頼していたのですね」
「うん。僕が十五歳の大人になったときに、使えるものをと思ってね」
僕が黒い布袋から剣を取り出すと、黒い鞘に納められている。
優しく剣を引き抜くと、クラウと同じ銀色に輝く両刃の両手剣が降臨した。
ずっしりとした感じで、まだ十三歳の僕には少し重く感じる。
剣の長さも、今の僕には長めかもしれない。
でも二年後、身長が伸びて筋力も付いた状態ならぴったりな気がする。
「ロータルさん、ありがとう。二年後に使うのが楽しみです」
ロータルさんが右手の親指を立てて、頷きながら微笑んだ。
「クリスとお揃いの剣……。アタシ一生大切にする」
クラウが剣を鞘にしまって、ギュッと抱きしめている。
僕もこの剣を大切にしようと思う。
「残りの茶色の袋は、二つともカルラの分ね」
「自分の分もあるんすか!?」
驚くカルラに、僕は少し短めの袋を二つ手渡した。
「開けてもいいっすか?」
「もちろん」
カルラが茶色の袋を開けると、中から茶色の鞘に納められた短剣が出てきた。
どうやら赤、黒、茶の色分けは各々の髪色に合わせたようだ。
さすがロータルさん、これなら誰のものか一目瞭然である。
カルラが短剣を引き抜くと、両刃の片手剣が出てきた。
「ほえー、奇麗な銀色っすねー」
「その短剣は魔物の解体用だよ。もちろん護身用にも使えるけれど」
「マジっすか! 早く解体してみたいっす!」
カルラが興奮気味に喜んでいる。
「もう一つの方も開けてみて」
「はいっす! 今度は何が出てくるんすかね? ワクワクするっす!」
最後に残った茶色の袋から出てきたのは、茶色のケースに入った包丁である。
もし素材に余りが出るようなら作って欲しいと、ロータルさんに頼んでいたものだ。
「今日からこの包丁で料理するっす!」
「カルラ、ちょっと待つのじゃ。これは固い食材専用にした方がよいぞ」
張りきるカルラにロータルさんが待ったをかけた。
「どうしてっすか?」
「まあ、試し切りをすれば、わかるじゃろうて。クラウもクリスもやってみてくれ」
僕たちはロータルさんの後に続いて、工房の裏庭に移動した。
「まずはクラウからじゃな。あそこに直径十センチメートルくらいの木材を打ち込んである。適当に切ってみてくれ」
「承知した」
クラウが木材の前に立ち、剣を両手で持つと袈裟切りにした。
円柱状の木材がスパっと斜めに切れて、そのまま真下にズリ落ちた。
「ぬおっ! なんだこの切れ味は! 切っている途中に全く抵抗を感じないぞ!」
巨大ミーアキャット素材の両手剣が、あまりに切れすぎてクラウが驚嘆している。
「そうじゃろう。この剣の強度は、希少素材のミスリルと同等じゃぞ。ワシが実験したから間違いない」
ロータルさんがドヤ顔で教えてくれた。
クラウの次に僕も試し切りをしたのだが、剣が重くて素早く振ることができなかった。
通常の剣なら途中まで木材に刺さって止まってしまうだろう。
だが巨大ミーアキャットの両手剣は、なんの抵抗感も無くスパッと一刀両断にしたのだ。
そして圧巻だったのが、カルラの包丁である。
短剣の切れ味は文句なしで、最後にカルラが軽く包丁で木材を切りつけると、僕のときと同じ現象が再び起こったのだ。
「確かにこれはヤバイっすね。切れすぎて、もしうっかり指でも切りつけたら大変なことになるっす! 固い食材のときだけにするっすよ」
カルラが苦笑してロータルさんを見ている。
「じゃろう? 取り扱いには注意するのじゃぞ。それからクリス、今回は珍しい素材を提供してくれて感謝する。ワシの最高傑作を作ることができて満足じゃ」
「いえいえ、僕たちも助かりました。大切に使わせてもらいます」
僕はロータルさんと固く握手を交わしたのだった。




