第124話 それぞれの成長
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カーム教国を代表する鍛冶師であるロータルさんに、超レア魔物巨大ミーアキャットの死骸を提示したことで、クラウの剣を作ってもらえることになった。
「クリス、巨大ミーアキャットの死骸から、素材になる牙と爪のみを取り出せるかの?」
ロータルさんの提案は当然である。
工房の裏庭に全長五メートルを超える魔物の死骸を置いていかれたら、処分に困るだろう。
「少し待ってください。カルラ、解体をお願いできるかな?」
「かしこまりっす!」
僕は収納ボックスから専用のナイフを取り出すと、カルラに渡した。
すると彼女は、見事な手際で牙と爪を摘出していく。
「ほー、カルラは魔物の解体ができるのか。彼女の専門って、一体何なのだ?」
バスラー隊長が僕に疑問をぶつけてきた。
「カルラは優秀な料理人ですよ」
「はあ!? カルラって料理人だったのか。冒険者パーティーに料理人が居るとか、さすが皇族だな」
「あはは……」
「クラウが護衛でカルラが料理人、だとするとエルの役割は何なのだ?」
バスラー隊長が興味津々に、瞳をキラキラさせて聞いてきた。
「エルは軍師です」
「軍師? 戦場でもないのに? てか冒険者パーティーに軍師って、聞いたこと無いのだが」
「ああ、元々エルは僕とリゼの家庭教師だったんです。でも、あまりにも優秀だったので、僕が勝手に軍師と命名しました」
「ふーん、何か面白いなお前たち」
バスラー隊長が微笑んで僕を見ている。
「しかしクリス、こんなレア素材どこで手に入れたのじゃ?」
腕組みをしたロータルさんが、小首を傾げながら聞いてきた。
「えーと、デス砂漠でクラウが討伐しました」
「なんじゃと!? あの過酷な環境で戦ったのか?」
ロータルさんがクラウの方を見て、目を見開いている。
「あんな灼熱の中で戦ったのは、アタシも初めてだ。討伐後に熱中症で倒れてしまったし。でも、旦那様にお姫様抱っこをしてもらって、幸せだった」
クラウが両手を組んで、ウットリしながら虚空を見つめている。
「お姫様抱っこじゃと?」
「あー、色々大変だったってことです」
クラウが妄想の世界から帰ってこないので、僕が適当にごまかしておいた。
「だけどクリス、デス砂漠でキャンプなんて難易度高すぎると思うのだが」
迷探偵のくせにバスラー隊長が、鋭い疑問を投げてきた。
リゼのことは秘密だし、僕の魔法もなるべく内緒にしておいた方が良いと思う。
「えーと、そのへんは国家機密なので言えません」
「むむ、国家機密だと。うーむ、さすが帝国だな。秘密兵器があるということか」
難しい顔をしながらも、バスラー隊長が納得してくれた。
「クリスっち、牙と爪を全部取り出したっすよ」
「ありがとうカルラ。じゃあ、洗浄も済ませてしまおうかな」
僕は土魔法で大きめの箱を作ると、水魔法を使いたっぷりの水で満たす。
その中に牙と爪を風魔法を使って放り込んだ。
そして箱の中の水を風魔法でかき混ぜて洗浄を済ませると、牙と爪を空中に持ち上げて温風で乾燥させる。
すると、肌寒さを感じる裏庭に暖かな風が舞う。
「はい、完了。ロータルさん、素材をどこに置いたら良いですか?」
「工房の中に頼む」
「わかりました」
僕は風魔法を使って、剣の素材になる牙と爪を全て工房内に運んだ。
ふう、後は細部の確認をして終了かな。
裏庭に戻ると僕は、巨大ミーアキャットの死骸を再び収納ボックスへ入れた。
すると、バスラー隊長がジト目で僕を見ている。
「クリス、ちょっと待て。何だ今の魔法は? 土、水、風、火と四種類の魔法を使っていたよな? だとするとお前、光魔法と闇魔法合わせて全六種類の魔法が使えるのか!? そんなヤツ聞いたことがないぞ!」
興奮したバスラー隊長が、目を血走らせて僕の両肩を掴んだ。
「あ……、えーと国家機密なので秘密にしてくれると助かります」
「かわった。秘密にすると約束するから、各魔法の適性を教えろ」
鼻息を荒くしたバスラー隊長が、マジで怖いのだけど!
「……闇魔法B以外は全部Sです」
「なんだと! クリスお前、魔法の天才だったのかよ! ……お前ならアイツと……闇魔法SSのリュディガーと互角に戦えるかもしれないな」
「リュディガーって、バスラー隊長の幼馴染の?」
「ああ。だけど今の言葉は忘れてくれ。アイツは私が倒す。これは教国の問題だ。お前を巻き込むわけにはいかない」
冷静になったバスラー隊長が、僕の肩から手を離した。
「ん? もしかして、デス砂漠で起きた巨大サソリのスタンピードを防いだ少年ってクリスか?」
「はい。でも討伐後に魔力切れで、気を失いましたけどね」
僕が苦笑していると、バスラー隊長が首を横に振った。
「普通のヤツなら戦闘中に魔力切れを起こすだろうよ。……てことは、お前たちが新しく誕生したSランクパーティーなのか」
「はい、僕たちはSランクパーティー『インフィニティ』です」
「なるほど。でも、クリスに護衛は必要ないよな。だとするとクラウはリゼの護衛か! しかし、なぜこんな危険な旅に、リゼのような可愛い少女が同行せねばならんのだ?」
マズイな、リゼのことは絶対に秘密だ。
「それは、私がお兄様と離れ離れになるのが嫌だったからです」
リゼが僕の左腕に抱きついて言った。
「僕だってリゼと一緒じゃなきゃ嫌だよ」
「お兄様……」
嬉しそうに笑みを零したリゼが、僕の胸に飛び込んできたので、僕はリゼをギュッと抱きしめた。
「なるほど、仲良し兄妹だったのだな。そうかそうか」
どうやら信じてくれたようだ。
最後にバスラー隊長が迷探偵ぶりを発揮してくれて助かった。
まあ、嘘は言ってないので良しとしよう。
その後ロータルさんと作る剣についての詳細を詰めたのだが、新しい剣ができるまでの間、ロータルさんの剣をクラウに貸してもらうことになった。
クラウが言うには、これもかなりの業物らしい。
そして剣ができるまで三か月くらいかかるそうなので、その間僕たちは能力上げに集中することにした。
カーム教国の冒険者ギルドを順番に回って、魔物を討伐しまくるのだ。
それから訓練開始一か月後には、僕の闇魔法がBからAに上がり、クラウの風魔法もBからAに上昇した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ロータルさんに剣の作成を依頼してから三か月が経過し、僕たちはカーム教国全ての冒険者ギルドを回り、再び首都アベリアに戻ってきた。
途中で年越しを迎えて、皆が一つずつ歳をとっている。
この世界では、一月一日に全員が一斉に一つ歳をとるのだ。
現在は二月に入っており、寒さも厳しく外に居ると吐く息が白い。
そして恒例のステータス確認を皆でするため、僕が複合魔法で作った平家のリビングに集合している。
「皆、三か月の特訓お疲れ様。ひたすら魔物を討伐する日々、こんなに濃厚な訓練は初めてだね。皆の目標が達成できていることを祈りつつ、まずはリゼから行こうか」
「はい! お願いします、お兄様」
僕はリゼの右手に自分の左手を重ねて、僕の右手にはエル、クラウ、カルラの手が触れている。
【リゼット・ブレイズ・ファルケ】
ファルケ帝国 第1皇女(大聖女) 12歳 女
知力 92/95 (91から92へ上昇)
武力 29/29
魅力 100/100
剣術 G/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 G/F
光魔法 SS/SS
話術 S/S
算術 A/S
芸術 S/S
料理 C/C
「お兄様、知力が92に上がりました」
「うんうん。リゼの場合、ほぼ能力が上がりきっているので、ステータス上は大きな変化が見られないかも」
「少し寂しくはありますが、仕方ないですね。でも、光魔法SSの新しい魔法を複数習得したので、いつか皆に披露したいです」
「うん、楽しみにしておくね」
12歳になったリゼは成長著しく、背も少し伸びてAカップだった胸もBカップに迫る勢いだ。
三年後15歳になり大人になったリゼは、どのような女性になっているのかドキドキである。
「では次、エルいくよー」
「クリス、よろしくなのだわ」
【エルネスタ・フォン・リートベルク】
ファルケ帝国 リートベルク侯爵家長女(賢者) 16歳 女
知力 99/99
武力 48/53 (47から48へ上昇)
魅力 95/95
剣術 F/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 D/D
火魔法 C/C
水魔法 S/S (AからSへ上昇)
話術 S/S
算術 S/S
芸術 S/S
料理 E/D
「水魔法がSに上がっているのだわ!」
「エル、おめでとう。水魔法がAになってからは、巨大熊相手にも魔力切れせずに討伐できていたものね」
「ありがとう。そうなのよね、水魔法BとAでは雲泥の差があるのだわ。これからは全ての水魔法Sを使えるようにしたいから、引き続きよろしくねクリス先生」
「了解、全力でサポートするね」
16歳になったエルは、最近ブラがキツイとよくつぶやいている。
もしかすると、Hカップを越えていくのだろうか。
こちらもドキドキである。
「では次、クラウいくよー」
「よろしく頼む、旦那様」
【クラウディア・フォン・オルレアン】
ファルケ帝国 オルレアン伯爵家長女 16歳 女
知力 43/60 (41から43へ上昇)
武力 99/99 (98から99へ上昇)
魅力 95/95
剣術 S/S
槍術 B/A
弓術 G/B
馬術 B/A
風魔法 S/S (AからSへ上昇)
話術 D/D
算術 E/E
芸術 D/D
料理 F/D
「うおお、ついに武力が99に上がったぞ!」
「おめでとう、クラウ。水魔法もSに上がっているよ」
「本当だ! これで兄上と父上に勝てるかもしれないな」
「そうだね。でも、そのためには風魔法Sを全て使えるようにしないとね」
「ああ、これからも手取り足取り教えて欲しい。よろしく旦那様!」
「う、うん。よろしくね」
16歳になったクラウは、外見的な変化は特にない。
だが感じやすい彼女は、油断するとすぐに新しい扉を開けそうになるのだ。
こちらは別の意味で、毎日ドキドキである。
「では次、カルラいくよー」
「よろしくっす!」
【カルラ・ミュラー】
ファルケ帝国 平民 16歳 女
知力 71/80 (70から71へ上昇)
武力 53/54 (52から53へ上昇)
魅力 90/90
剣術 G/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 D/C
火魔法 D/D
水魔法 D/D
話術 B/A
算術 C/B
芸術 B/A
料理 S/S (AからSへ上昇)
「ふおお、ついに料理がSになったっす!」
「おめでとう、カルラ」
「ありがとうっす、クリスっち。これで親父に一歩近づいたっすよ。更に精進して、絶対に親父を追い越してやるっす!」
「うんうん。頑張ってね、カルラ」
16歳になったカルラは、最近ダイエットに夢中だ。
毎日の料理中に味見をしてから皆と同じ量を食べているので、高級食材もあるせいか食べ過ぎてしまうらしい。
でも毎日一緒にお風呂で水着姿を見ているけれど、元々スレンダーな彼女は、少しぽっちゃりしたところで太ったようには見えないのだ。
それでもカルラは毎日室内で、腹筋を鍛える運動を中心に頑張っている。
「では最後に僕」
【クリストハルト・ブレイズ・ファルケ】
ファルケ帝国 第3皇子(賢者) 13歳 男
知力 99/100
武力 76/80 (75から76へ上昇)
魅力 99/99
剣術 A/S (BからAへ上昇)
槍術 G/S
弓術 G/S
馬術 G/S
火魔法 S/S
水魔法 S/S
風魔法 S/S
土魔法 S/S
光魔法 S/S
闇魔法 S/S (AからSへ上昇)
話術 S/S
算術 S/S
芸術 S/S
料理 C/S
「お兄様、闇魔法がSになって全部の魔法がSになりましたね」
「うんうん。これで複合魔法の効果も上がるかもしれない。色々試してみたいかも」
「旦那様! 剣術もAに上がっているぞ!」
「そうだね、次は剣術をSにしたいかな。クラウ、これからもよろしくね」
「ああ、任せてくれ」
13歳になった僕は身長もグングン伸びており、最近声変わりが始まった。
男らしさに拘る僕としては大歓迎である。
こうして大陸北方の国で僕たちは、寒さを物ともせずに各々が大成長を遂げたのだった。




