ep.57 僕らは716探偵団
原稿用紙6枚ですが、ペラ一にするには勿体無いと思って、こちらに掲載します。。
『僕らは716(なないろ)探偵団』
716探検隊の時の隊長は池下だった。ところが池下は隊長の座を水下に譲ると言った。
そこで今回、716探偵団を結成するにあたり、団長を水下が請け負うことになった。
水下団長はまずはなんと言っても基礎訓練が必要だということで、腕立て、腹筋、背筋、スクワット、この四つを3セットずつ行うと言い出した。
水下は筋トレで慣れているが、池下や五反田久美子にとっては苦役の何モノでもなかった。
「はい、1、2、3、はい、2、2、3」
水下の勢い良い威勢が続く。それに合わせて、池下と五反田が、腕立て、腹筋、背筋、スクワットをする。最初にねを挙げたのは池下だった。
「俺、こんなんできんわ。なんで探偵に筋トレが必要なん?」
池下の尤もらしい意見だった。
しかし、水下は言う。
「筋トレのできないやつに事件など解決できるはずがない。筋肉は裏切らない」
これも尤もであろう。
では、矛盾を思い出してほしい。絶対に突き抜ける矛と、絶対に突き破れない盾。さて、お互いが戦ったらどうなるか。その答えがないから「矛盾」という。だったら、池下のいうように意味がない、というのと、水下のいう裏切らない、は同時には叶えられないものなのか。
そんな議論をしている間に、探偵団に依頼が舞い込んだ。
小学校の四年生からの素朴な疑問だった。
「ウンコというのとウンチという二種類の呼び方がありますが、どっちがどっちですか?」
にんともかんとも可愛らしい謎ではないか。
これに池下が反応した。
「ウンコには糞と糞も存在する」
まさしくその通りだ。これを真面目に原稿用紙十枚を使って考えていくのがこの探偵団の結成由来だ。
「それは簡単だわ」
五反田がいう。
「固いのがウンコ、柔らかいのがウンチ、動物のそれが糞(くそ、ふん)だわ」
池下が頷く。
「なるほど。固いのがウンコ、か。確かに、コという方が硬そうな気がする。で、チというのはどこか柔らかそうなイメージだ」
池下はそう述べた。
水下団長は黙って二人の話を聞いていた。
「ところで、ウンコとウンチの分岐点を決めておいた方がいいだろう」
水下団長が団員にいう。
「そうですね、それは大切ですね、団長」
五反田は上目遣いに水下を見上げると、
「確かに。それは決めた方がいい。でもどうやるん?」
最後に口を開いた池下が聞く。
「簡単だ、ティッシュで掴めるか、掴めないかで決まる。もし、固いウンコなら、簡単につまめるし、柔らかいウンチなら、掴めないはずだ。ていうか、俺、ちゃんと固いと柔らかいでウンコとウンチの呼び分けできてるし」
アハハ、と三人は大爆笑した。
「ちなみに、爆笑って大勢が一斉に笑うことらしいで」
池下が豆知識をひけらかす。
「じゃあ、今から街へ出て、犬のウンコとウンチをとりに行って、どちらか分別してみよう」
水下団長が言うと、
「あれ? 犬のウンコはまとめて糞じゃなかったっけ?」
五反田団員はいう。
「いや、犬にもウンコとウンチがあるはずで、まとめて糞というのだろう」
水下団長は強く主張した。
「それにしても、私らってレベル低ない?
程度が低いっていうか。だって、前の宇宙船716号でも木星でウンコをする、って話題だったし」
五反田は激しく抗議した。
「いや、それは違うと思うで。人間にとって一番大切なのはウンコ、ウンチやで。食べるやろ? 胃を通過して、小腸、大腸から肛門を通ってウンコ、ウンチになる」
池下は続ける。
「そんなん俺ら看護師やったら常識やん。その常識を疑うことが俺ら探偵の仕事やん」
池下の気迫に、水下団長と五反田は気圧されそうになる。
「じゃあ、今から街へ出て、犬のウンコ、ウンチを探そうか」
水下団長はいうが、池下と五反田は反対した。
「じゃあ、もういいわ。俺が本当に言いたかったのは、ゴミ処理問題やねん」
水下団長が語気を強める。
「水に例えると、上水道を通って、水を使って、下水道に流れる。この一連の流れが、ウンコ、ウンチ問題にも繋がる。核問題もそうや。使い終わった核のゴミをどこに処理するか。そういった地球規模の話や。Think Globally, Act Locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)っていう言葉があるやん、それが俺がほんまに言いたいことやねん」
ありがとうございました




