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ep.53 クラウド・ウンチング

今回は本当にしょうもない作品になりました。文学賞の応募もおわり、気の抜けているところもあります。

たまにはふざけた作品でも書いてみました。

『クラウド・ウンチング』


 五反田久美子は716防衛軍の唯一の女性隊員だ。そんな久美子は周りのメンバーから「ゴクミ」と呼ばれ慕われている。もちろん、ちょっと年齢のいっている人ならわかるが、「後藤久美子」が「ゴクミ」と言われていたので、「五反田久美子」で「ゴクミ」である。そんなゴクミの普段の仕事場は宇宙防衛軍の戦闘機のコックピットだ。コックピットにはさまざまな計器が付いていて、それについて熟知しておかなければならない。ゴクミも戦闘機に乗るために、飛行士の免状を取らないといけないため、高校を出た後は、操縦士の免状を取れる、航空大学校に通った。そして航空機の免状を取った後、ようやく戦闘機のパイロットの免状を取ったのだ。

 ゴクミは日本人女性初の防衛軍戦闘機パイロットで、試験を受ける段階から各マスコミで報道され、一躍時の人となった。

 まずNHKの『プロフェッショナル』が彼女についての特集番組を組み、その後、TBSの『情熱大陸』が取材を申し込んできた。雑誌では航空専門誌や、『月刊パイロット』という雑誌にも掲載され、インタビュー記事が3面にもわたって、しかも連載された。

 6月2日にはブルーインパルスが航空ショーを行うが、その搭乗にゴクミが選ばれた。

 ゴクミが女性初のブルーインパルス搭乗、ドルフィンライダーだということで相当マスコミも動いた。

 NHKはその様子を総合、BS、8Kで映すことになった。

 僕は生で見ようと思ったが、どうやらいつ飛ぶかは秘密になっていて、一応、大阪の空を飛ぶということだけはわかっていた。

 だから、僕は朝からスマホを持って、ずっと空を見上げて待っていた。

 13時をすぎた頃、南の空から北の空に向かって都合6機のブルーインパルスが連なって飛んでいった。その中にゴクミの搭乗したブルーインパルスがあったのだろう。

 さて、ゴクミは偉大なるミッションを終えた後、間服あいふくのカーディガンから、夏服の白い制服に衣替えをした。

 真新しい真白ましろの制服は、ゴクミの美しい顔をしたからレフ板のように反射して、より一層美しく見えた。

 ゴクミの顔出しが許されると、世界中の男性が「なんだ、この美しい女性は」とSNSで持ちきりになり、検索ワードがトップに輝いた。ゴクミも、本家の後藤久美子を抜いて、ゴクミの名前はもはや五反田久美子の代名詞となった。

 

 嬉しいニュースが舞い込んできた。それは僕がニュース原稿を下読みしていた時のことである。緊急ニュース。「ゴクミこと五反田久美子が716 防衛軍、大将に」というニュースだった。

 当然、テロップがすでに出たし、その日、ニュースで特集するはずだった大谷の全ホームランの記録というコーナーはすっ飛ばされた。それぐらいに今、ゴクミというワードはマスコミにとって、いやSNSにとってもキラーワードなのだ。

 新聞のラテ欄(昔はラジオ・テレビ欄でラテ欄と言ったが、今では「テレビ欄」の方がいいかもしれない)にはゴクミと入れるだけで視聴率がアップする。それが試しに、ゴクミ関連の番組数を調べたADがいた。

「すごいですよ、NHK、民放合わせて今日だけで13本ですよ」と沼田ADはそう驚いた。

 ニュース本番が始まった。

「えー、みなさん、こんばんは。ニュースQです。ご存知の方がほとんどだと思いますが、716防衛軍の戦闘機操縦士の五反田久美子さん、通称ゴクミが大将に任命されました」

 僕は声を大にしてそう叫んだ。

 このニュースはBBCでも放映され、アメリカのABC、CNNでも同時に放送された。

「ジョセイハツノ、ウチュウボウエイグンノ、タイショウニ、バッテキサレマシタ」

 カタコトの日本語で伝えられたが、あっという間に世界各国の言葉に翻訳され、全世界へと知れ渡った。

 アメリカの雑誌の世界の顔100にも選ばれた。また、女性のリーダー30にも選ばれた。

 ゴクミの前職についてかなり面白い話も紹介された。

 ゴクミは宇宙防衛軍に就く前は、訪問看護師をしていたらしい。

 各家庭を訪問し、バイタル(体温、酸素濃度、血圧、脈拍などの数値)を測ったり、利用者の悩みに寄り添ったりだ。

 訪問看護師の仕事に誇りを持っていたゴクミだけに、その職責しょくせきまっとうしたかったし、何より楽しかった。

 ところが、今年に入って、木星でのUNKO2026計画によって、木星でウンコが出なかったことに対して非常に責任を感じており、訪問看護師も素敵な仕事だが、それよりも宇宙防衛軍の仕事をしたいと熱望し、716防衛軍に入ったのだ。

 看護師の資格はここでも発揮した。何しろ、看護師という仕事は激務である。宇宙防衛軍の仕事はそれを遥かにしのぐ忙しさで、これに耐えうるには、看護師という前職が役に立っている。

 しかも、今回は女性初の大将ということでその激務とやらは想像にかたくない。

 そもそも大将に選ばれるということはかなりの全幅ぜんぷくの信頼を得ているということであり、並大抵の努力では到達できない仕事である。

 716防衛軍、には都合4名の乗組員クルーがいる。五反田久美子大将、池下隊長、水下、堀川の4名である。

 池下は隊長として、その上に大将という役職が与えられた。

 池下隊長はまた変なことを言い出した。

「そうだ! 木星で俺たちのウンコは出なかったが、ウンコを燃料にしたロケットはとばせないだろうか」

 これに対し水下隊員は、

「でも、飛ばすとしたら莫大なウンコの量が必要だ」

と、もっともらしいことを言う。

 堀川が続けて、

「そうですよ、ウンコを誰がするんですか?」

と、半ば呆れて言った。

 五反田久美子は、

「もう私はウンコは嫌よ。女性にそんな恥ずかしいことをさせて、セクハラもいいところだわ。池ちゃん、訴えるで」

と、激怒した。

「そうか。そうなると『クラウド・ウンチング』で頑張ろうか」

 池下隊長がそういうと、残りの3人が、

「クラウド・ウンチング?」

と、頭にクエスチョンマークを作った。

「つまり、クラウド・ファンディングではお金を集めるけど、クラウド・ウンチングは、ウンコを集めるんだ」

 池下隊長は真剣な目をした。

「俺は、長年、ウンコを研究してきた。ウンコには宇宙に飛ばすためのガスが希少きしょうながら入っている。そのウンコをたくさん集めれば、宇宙に飛ばすことだって夢じゃない」

 池下隊長は早速パソコンを開き、ネットワークに接続し、クラウド・ウンチングのサイトを構築した。

「よし、プログラムはこれでよし。後はSNSで募集して集めるだけだ」

 意気揚々(いきようよう)とはずんだ声を出す。

「これで宇宙へ行けるぞ」

 池下隊長は本気だった。


 次の日から、全国各地からウンコが瓶に入って届けられた。

 池下隊長は、

「まず、大腸菌の検査をしよう」

と言って、瓶を一つ一つ開け、試験薬をかけて、調査をした。

(あんな、水少納言、これは小説っていうかフィクションやから、そんな細かい、試験薬とかそんなんはいらんねん)


 もとい。

 さて、ウンコをたくさん集めて、燃料とした隊員4名は、宇宙に行くに際して、記者会見を開くことになった。

 僕は家のテレビでその4名の記者会見を楽しみに待っていた。日本時間の午後2時からだ。

 1時55分ごろからテレビの前にスタンバッて、会見を待った。

「今日は時間をとってありがとうございます」

 最初に口を割ったのはゴクミだった。

「続いて、池下隊長より今回のミッションについてお話をいたします」

 マイクを受け取った池下は若干緊張していた。

「木星でのウンコの失敗を挽回するため、今回は本気です」

「質問は本日は受け付けません」

 司会の女性がそういうと、4名は会見場を後にした。


 さて、本当にウンコでロケットが飛ぶんでしょうか。(了)

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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