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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
3章:彼氏彼女じゃないわけで

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299.ダーク・ギルティ 5


「可哀想な湊くん……でも安心していいよ? もうキミは私が育ててあげるからね。だから抵抗はやめてくれる?」

「……ぐっ――くぅぅ……」


 どうしてこんなことになってしまったのだろうか。


 つくづく学習能力に欠けているというべきか、親父さんに諭されて大人しくなってくれたと、勝手に勘違いしたのが間違いだった。


 遡ること数時間前……東上学園でのデートで、あゆに迫られたものの、親父さんの登場であゆは大人しくなってくれた。


 その足で学園を後にし、俺はあゆが密かに作っていたという俺との共同生活の場所、つまり彼女の資金で作られたマンションに来ていた。


 外観はその辺りのマンションと変わらないほど普通の作りで、セキュリティに関しても下手なことをすれば、すぐに警備がかけつけると聞いただけに、すっかりと油断をしてしまった。


 俺を強制的に転校させたあゆが、俺の為にマンションを作らせていたという事実にも驚いたが……


 ここに来たのも初めてだというから油断をしたわけで。


「へぇ~部屋の中は普通なんだな」

「つまらない? 私らしくない?」

「そんなことはないけど、安心する。あゆも初めて来たっていうなら、安心だな」

「……うん、初めてだよ? 湊くんを連れてここに来たのはね……」

「へっ?」


 言い方の問題なんだろうけど、俺を連れて来たのが初めてであって、すでにここに来ていたと理解した時には遅かった。


「うわっ!? な、何をす――」

「大丈夫。そのまま倒れ込んでも弾むくらいの羽毛を用意させたから……」

「そういうことじゃなく……」


 新しそうな部屋の扉を開けられ、部屋の中を覗き込もうとした時、すでにあゆは俺の背後に回っていて、力強い突き飛ばしによって部屋の中に押し込まれていた。


 そこから先は記憶がない。


 弾む羽毛の弾力がありすぎて、床に叩きつけられたらしく、聞こえて来たのは、あゆの優しい声だけだ。


「可哀想に……これからは痛い思いも、辛い思いも全て私が背負ってあげるね」


 しばらくして、ベッドに眠らされているかと思っていた俺の体の感触は、そうじゃなかった。


 すぐ近くに彼女の姿は無かったが、俺の全身は鎖によってつながれ、閉じ込められていた。


 おいおいおい、マジか。


 何が彼女をそこまでにしてしまったというのか。


「私の湊くん、目覚めた?」

「な、何でこんな……」

「駄目だよ? 色々体を動かしたら、変な姿勢でソレは固定されちゃうの。だから大人しく寝ててね?」

「こんな状態だとどこで寝ていたって、同じじゃないか!」

「あぁ、可哀想な湊くん。こんなに可愛い弟は離したくないなぁ……」


 お、弟とか、いつ以来の呼ばれ方なんだ。


 育てると言っていたが、そういうことか。


「湊くんには、これから先……私のことだけを感じて生きていけばいいの。その為の鎖なの。洋服の着替えも食事も、全部私が面倒を見てあげるね。うふふっ」

「あ、浅海が悲しむぞ! こんなことっ!!」

「浅海? 誰のこと?」

「だっ……、誰ってあゆの婚約者だろ? 俺はあゆと付き合えても、最後に一緒になれる奴じゃないんだぞ? 年上の君ならこれくらい分かるはず」

「年上年上年上年上……君には再教育が必要かな。少なくとも、年なんて気にしなかったはずなのに、どうしてかな?」


 ハッキリとしなかった俺が悪いのか?


 さよりにしてもあゆにしても、半端なままにしているが、あゆはどうして俺なんかを……


「あゆのことは嫌いじゃない。けど、こんなことで俺を教育とかするつもりなら、俺は君を完全に嫌いになる。それでいいなら、このままやれよ!」


 こんなことで通用しない相手なのは分かっているが、ハッキリ言うのも彼女の為だ。


「嫌いになる? あり得ないよ? 関係ないよ……? 好きと言ってくれたのは湊くんだけ。そんな湊くんが、私を嫌うわけない」


 あぁ~……ダメだったか。


 あの時は植物のようなモノに捕まってしまったが、今回は真面目にヤバイ。


 まさか鉄製の鎖を使用して来るとは、さすがに油断もいい所だ。


 つくづく学習しろと自分に言い聞かせたい。


 南中から自由の時間を与えられたのに、まさかあゆによって自由を奪われてしまうとは思わなかった。


「今夜は何食べたい? 湊くんが食べたいものを作ってあげるね! これも可愛い君の為なの」

「……ラーメン」

「いいよ。作ってあげる」


 この部屋にはキッチンを設計していなかったらしく、あゆは部屋を出て行く。


 こういう時にどこに助けを求められるというのか。


 あぁ、参ったな……さよりの名を叫んでも来そうに無いし、一体誰を呼べるというのか……。

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