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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第7章:動きまくる思惑

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219.残念美少女は母親譲りだった件


 何でこうも学習出来ないものなのか。


 さよりの家に来ることを躊躇していたのは、姫がいるというのも関係していた。


 しかし学校も含めてしばらく姿を見かけなかっただけに、てっきりいないものだと思って、まんまと騙されてしまった。


 しかも悪戯に加えて、俺に()()()()()()をさせる辺りが、あざとすぎる。


「ほらほら、さっさと声を張り上げないと、さよりのことだからノックもなしに入って来ちゃいますよ?」

「どうしてさよりが来ているって分かるんだ?」

「そりゃあそうですよ。一度は廊下に出てますし、そろそろ来そうだなぁってくらいは気付きますって!」

「全く、何でこんなことをさせるんだか……」

「あ、声を張り上げた時、一瞬だけ両腕を”解放”させますけど、乱暴しないでくださいね? してもいいですけど、さよりに見られちゃいますし?」

「はいはい、しないっての!」


 いちいちあざとすぎるが、これも姫の個性と思えばどうということはない。


 こうなればいい加減諦めさせるために、さよりへの”告白”を叫ぶしか……いや、しかし……。


『さより、俺だ! 俺はお前のような残念美少女でも、ずっと付き合っていく自信があるぞ!! だから今すぐ、ドアの前から離れてくれ!』


「えー? 何ですかそれ……告白じゃなくて、宣言と注意って面白くないんですけど?」


 文句を言いながら一応解放してくれたようなので、素早く動かして、両手で姫を押さえつけようと試みた。


「――って、あれっ!?」

「ぶっぶ~! ざ~んねんでした!」

「っと、ととと……」


 姫を押さえつける勢いで、思いきり前のめりに進んだつもりが、目の前には少しだけ隙間の開いたドアがあって、そのままドアを勢いよく開けてしまった。


 そういえばさよりからは何の返事も無かったが、上手くドアから離れてくれただろうか。


「わぁぁーー! さ、さより、そこをどけてくれー!」

「――っ!?」


 離れてくれたと思いきや、言ったことを理解していなかったのか、彼女はすぐそこに立っていた。


 完全に押し倒した形になり、さっきまで感じていた姫のそれではなく、残念で久々な感触が手元にあった。


「あー……うん、一年経ってもそんなに簡単じゃないか。まぁ、何だ……残念ではあるけど、気にしなくても……って――えっ!?」

「高洲さん……何が、残念と?」

「いっ!? い、いさきさん? え、さよりじゃない? さよりは……あ!」


 押し倒した人は何故か母親のいさきさんで、肝心のさよりは両手で口を押さえながら、俺といさきさんを見て固まっていた。


「え、嘘……ママが何で」


 おいおい、何で姫も驚いているんだよ。


「……それで、高洲さん。その手はどうされますの? 残念な顔をして、残念とおっしゃってましたけれど……さよりさんにも同じことを?」

「あ……そ、その……そ、そうではなく……何といいますか」

「何が……残念と?」

「い、いや、あの……」


 さよりだと信じて疑わなかったのに、まさかいさきさんがいるなんて思ってもみなかった。


 しかも禁句を言いまくってしまったし、よりにもよって人様のお母様のオムネさんを……。


『高洲さん……わたくし、ものすごくイライラが止まらないのですけれど、お分かりかしら?』


「ひっ!!」


『だから……その手をとっととどけて、ちったあ空気を読めって言ってんだよ! あぁ!?』


 あれ、これはさより? ではなく、間違いなく母親のいさきさんである。


 さよりの初期の乱暴な言葉遣いは、てっきり何か間違った情報から学習したかと思っていたのに、まさかの母親譲りとか、何て恐ろしい。


「お、お母さま……な、何てこと……」


 まさかの言葉遣いに、階段の所で固まっているさよりもショックを隠せないようだ。


「お、お母さま、格好いい!! そ、それでこそお母様ですのね!」


 そっちか! 


「コホン……はしたない姿をお見せしましたね。とりあえず、高洲さん。一階でお話をしましょう」

「は、はい」

「姫……」

「い、行きます……」

「さよりさん、あなたはお茶をお出ししてくださる?」

「分かりましたわ、お母様!」


 そうか、やはり池谷いけがや家のビッグボスはいさきさんで間違いなかった。


 そりゃあ親父さんも頑張るはずだ。


「高洲さん、さよりさんのことも含めて……姫とのことを全てお話しして頂けますわね?」

「も、もちろんです。包み隠さず、お話をします」

「当然ですわね。それでこそ、さよりが選んだ男の子」


 姫の顔はすっかり生気を失ったように青ざめていて、階段を一段ずつ降りる足取りは重たそうだ。


 かくいう俺も、さよりへのキーワードも含めて、告白のことも洗いざらい話すしか生きるすべは無さそうだ。


 怒らせてはいけない人を怒らせてしまった……。

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