218.さよりさん、妄想するSS⑧ 妄想END
「お母様、ただいま戻りました」
「さよりさん、何か言いたいことがある顔をしていますね」
「は、はい……あの、わたくしの彼氏さんがお家にお邪魔を、その……」
「そこにお座りなさい」
あぁ、やはりお母様には言っておくに限るのね。こればかりは湊の言うことに間違いがないわ。
お母様とのお話が終われば、いよいよ湊とのひとときが訪れる……去年以来になるなんて思わなかったけれど。
「さよりさん、彼は?」
「げ、玄関にいるはずですわ」
「そうですか……恐らく――」
「え? 何ですの? 湊が何か……」
「いいえ。今はさよりさんの話が優先です。それで、彼との偽りはいつまで?」
「偽り……そ、そんなことはっ!」
「栢森からそう聞いていますけれど?」
そういうことなんだ。単なる交際ではなく、栢森が公開している交際、偽りの関係に過ぎないのね。
だったら、なおさら負けられないわ。それもあのルリではなく、栢森嵐花に。
「あ、あの、その……」
「――いいでしょう。あなたが貫き通してのことなのですから、終わりまで何も口出しはしないことにします。あなたが見せた本気は、少なくとも中学の時には見られなかったことですから」
「中学……」
「何であれ、彼はあなたの過去を許した男の子なのです。でしたら、誰が相手でも退くことなく貫きなさいね?」
「もっ、もちろんですわ! わたくしは池谷の長女ですもの! お母様、お父様の期待にしっかり応えて見せます!」
お母様は完全にわたしの味方。後は、栢森……ううん、あゆになるのかもしれない。
どうしてあゆはあんなことを湊に……。
「……さて、さよりさん。参りましょうか」
「え? ど、どちらに?」
「二階です」
「二階? え、じゃあ……湊は先にわたくしのお部屋に?」
「いいえ、さよりさん。姫がまだ……」
「姫? え、どうしてまだいますの?」
「あの人のお部屋のお片付けをさせていたのだけれど、玄関に彼がいないのであれば――」
姫は湊のことなんて、もうどうでもいいなんて言っていたのに、まだわたしの邪魔をするというの?
「あぁ、やはり……姫が彼を連れて行ったわね」
「そ、そんな」
大広間をお母様と出てすぐに、玄関をのぞくとそこには湊の姿は無くて、靴だけが置いてあった。
何であの子は、わたしの好きな湊に手を出すというの。
「さよりさんは、階段を上がった所でお待ちなさい」
「え、でも」
「わたくしが姫と彼がいるであろう、あの人のお部屋に参ります。ですので、さよりさん」
「はい」
「彼がわたくしに触れても、嫉妬を向けないで頂戴ね?」
「な、なん……ど、どういう意味ですの?」
何だか悪戯っぽく笑っているお母様には、それ以上言えなかった。
姫は一体、湊に何をしているというの!?
お読みいただきありがとうございます!
さよりさんの妄想は終わり、次からは……




