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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第7章:動きまくる思惑

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216.ずる賢い妹に抜かりなし!?


「じゃ、じゃあまたな、さより」

「上がって……行かないの?」

「んーんん」

「わたしの部屋に上がって?」


 屋内プールで肩を抱き寄せ、さよりの家に戻って来るまで、俺は彼女の手をずっと握っていた。


 そうなると、もはや甘々モードに移行したさよりの態度も口調も、こうなるのは当たり前なわけで。


 同じ背格好ではあるが、斜め下からの上目遣いが通常稼働しまくりで、どうしてくれようかという気分に陥りそうである。


「家の人……いさきさんに聞いて来てもらえるか?」

「うん。じゃあ、上がってて?」

「分かった。そうしとくよ」


 鮫浜と遭遇し告白をされたことに関して、俺もさよりも戸惑いを隠せてないのが正直だっただけに、今回は素直にならざるを得ない。


 だとしても池谷の重鎮……さよりの母親であるいさきさんには、上がり込んでしまうことを伝えておく方がいいと判断した。


 さよりの部屋にお邪魔する……その時点で何となくの予感がするだけに、自衛をしておく必要があった。


「お、お邪魔します……」

「何しに来たんです? ()()()

「え、あれ? 姫?」

「姫ですけど、何を驚いているんですか?」

「いや、だって、時期的に……んんん?」


 姫はいさきさんに留学を言い渡され、夏休み前には学校からも姿を見せなくなるくらい、準備を整えていると聞かされていた。


 それがどうして、まだ家にいてくつろいでいるというのか。


「さよりの部屋に来てナニをするつもりがあるんですか?」

「い、一応彼女だから。部屋に遊びにも来るだろ? 何もしなくても」

「ナニもしないんですか~?」

「しない!」

「え~? 彼氏なのに?」


 姫は俺とさよりがそういう関係になるのを、ずっと嫌がり止めて来た。だからこそ嫌われて終わらせたのに、ほとぼりが冷めたら一連のやりすぎ行為も忘れてしまったんじゃないよな? 


「姫が思うようなことをする為に来たわけじゃないぞ」

「でもさよりのあの変わり方って、去年来た時以上ですけど?」

「見てたのか?」

「同じ家にいれば見たくなくても見えますって! ふふ、湊さんって疑いすらも弱いですよね」

「……ん? 俺のことは『湊くん』って呼んでなかった?」

「気のせいじゃないですかぁ? それよりも、留学の手続きはすでに済んでまして……一応、湊さんにキャリーバッグの頑丈さを確かめてもらいたいんですけど、見てもらえます?」


 何だ、やはり手続きは済ませて後は行くだけか。


 キャリーバッグの頑丈度なんてものは販売店員とかで確認しているはずなのに、俺も気が緩んでいたせいか、そのまま言うことを聞いてしまった。


「あ、二階の部屋に置いています」

「姫の部屋じゃないのか。それならいいか……」


 案内された部屋は一階奥の部屋ではなく、二階に上がった先にあった部屋だ。


 二階というと、これから入る予定のさよりの部屋があるが……。


「足下気を付けてくださいね、湊さん」

「いや、俺の部屋も二階だし慣れてるよ」

「……そういう意味じゃないですよ?」

「ん?」

「あ、見えてしまったら遠慮なく覗いてもいいですよ? わたしはちっとも気にしないので!」

「あ、あぁ、そういう意味か……階段だけに集中するから大丈夫だ」


 うっかりしていたら、まんまと見てしまいそうになった。


 俺を誘導するようにして姫が先に階段を上がっているが、風も無いのにひらひらとスカートを揺らしていたのには、さすがに驚いた。


 恥ずかしがることもなければ、恥じらう素振りも見せないなんて、本当に姉妹なのかと疑いたくなる。


「そういえば彼氏のあいつはどうした?」

「彼氏? 何ですそれ?」

「学校の、あいつだよ。名前は確か、アレだ」

「え~? 湊さんが忘れているのに、わたしが分かるはずがないじゃないですか~」


 何たること。野郎の名前をド忘れしてしまうなんて、姫に説教でもしてやろうかとしていたのに、油断しすぎた。


「こっちですよ~湊さん」

「さよりの部屋の隣? 誰の部屋なんだ?」

「お父さんのお部屋です! 安心しました?」

「勝手に入っていいのか?」

「普段ほとんどいませんし、帰って来た時は母の部屋にいるので二階には滅多に上がって来ないんですよ」

「へぇ~」


 池谷家を財閥? クラスに成り上がらせた親父さんも、中々に苦労しているようだ。


「ほー? 何か厳かな部屋っぽいな」

「キャリーバッグは奥の方に置きっぱなしにしてるんですよ。なので、奥にあります」

「それじゃあ下に持って行くの大変だろ?」

「だからお願いしたいんですよ!」


 てっきり何かしらの魂胆があると思っていたが、どうやらただの荷物持ち要員らしい。


「で、どこにあるって?」

「お父さんのお部屋は奥行きがあって、物もあちこちに置いてあったりするので……一緒に来てください」

「ああ、いいよ」

「……さすが湊さんです!」

「てか、夕方に差し掛かっているっていっても、こんなに暗いもんだっけ?」

「照明スイッチも分かりづらい所にありまして、点けて来ますね。すぐ奥の所で待ってて下さい!」

「分かった、大人しく待っとくよ」


 姫の本来は、大人しくて素直でいい子だったと思い出した。


 それだけに何の違和感も感じていなかったのだが――


『――湊さん、キャリーバッグは見ましたか?』


「あぁ、これだよね?」


 部屋の一番奥に、確かに大きめのキャリーバッグが置いてあって、無造作に色んなものが散らかっていたけど、そんなもんだろうと思っていたので、姿を見せない姫の声に返事を返した。


『それじゃあ、準備をしてから湊さんの所に戻りますね……』


「ん? あ、あぁ……準備?」

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