215.某闇天使は、やり直したいSS 闇END
とうとう湊くんに会えるんだ。それも屋内プールという絶好のロケーションで。
もう一度言いたい、言って近づいて、私はあなたのあゆになります。
「どうして明海と行かなければならないのか、理由は?」
「護衛を含めてご一緒させて頂くのと、そこに行くまでお一人で向かわせるわけには行かないからです」
「私は子供じゃない。承知の上でそんなことを言う?」
「会長から何を言われたかは察しておりますが、あなたに付き添うのも役目なのです」
「勝手にしていい。でも、私の許可なく湊くんに接触しないで!」
「ええ、もちろんです」
明海は鮫浜の人間として、ずっと私に仕えて来た人間。
だけどそれも終わる。父……会長からの期限を守るためには、私は鮫浜に守られては駄目なのだから。
「あゆさん、母方との話はついたのですか?」
「あなたに関係ない。それは今すぐどうこうすることでもない! とにかく邪魔しないで!」
私一人でも外にだって出かけられるし、バスや車にだって乗ることが出来る……それなのに、どうして明海は車の手配をするというのか。
「ここまででいい。あなたはこのまま引き返して!」
「承知しました」
湊くんがここのプールに来ているという情報だけはすでに聞いていて、そこにはさよりもいるということも聞いた。
さよりを脅威に思ったことが無いし、たとえ湊くんとの関係があの頃より変化が生じていたとしても、私には何の影響もない。
「湊くんが好き。好きです……だから――」
こうして自分から告白をしたのは初めてかもしれない。そしてその告白が受け入れられないことも予想済みだった。
湊くんに酷いことをしたのは事実。そうしなければいけなかったし、だからといって理由を教えるわけでもない。
片付けなければならないことは沢山あるけど、気持ちは伝えておきたい……そう思えた。
「湊はわたくしの彼氏さんなの! い、いまさらあゆが出て来たって無駄なのだわ」
彼氏さん……? こんな言い方をするのは、残念なさよりらしいといえばそうだけど、何かが引っかかる。
さよりと無駄に口喧嘩をしていたら、いつの間にか湊くんはいなくなって代わりに、しずが仲裁して来た。
あぁ、やはり明海、そして浅海が絡んでいたんだ。鮫浜から抜けた浅海が行くといったら、湊くん。
まさか私が湊くんに告白をするのを止めに来たとでもいうのだろうか。
「湊くん、私は鮫浜あゆではなく、普通のあゆになるから。だからその時は――」
彼は戸惑いの表情を浮かべた。鮫浜じゃなくなるなんて、そんなのは非現実的だから。
でも父との期限は確実に迫ってくる。私は覚悟を決めて、あの人に頭を下げて……”鮫浜”から別の名字を名乗らなければ駄目なんだ。
湊くんの鮫浜嫌いは、多分きっと直ってくれないはずだから――




