ただ生まれ変わっただけだなんて、そんなことなかった
「探したんですよ。えーと、あー……ヴィン様」
「すまない。私はこのような場所に来たことがないので、二人が来るまで隠れていたんだ」
先ほど名前を呼ぶなと言われてしまったので、バレなさそうな呼び方で呼ぶことにした。
ヴィンセント王子も素直に受け入れてくれたようで、特に何も言ってこなかった。
最近、王城で教育を受けるようになったと言っても、離宮に教師がやって来るだけ。
そのため、王子は相変わらず引きこもりを継続中だったらしい。
こんなに人が多い場所へ来たことは一度もなく、一人で木陰に隠れて震えていたとのことだった。
「小動物みたいでかわいい……」
「ライザ嬢、私は本当に怖かったのですよ……」
どうやら、うっかり心の声が漏れていたようだ。
私がそう呟いた言葉に、王子は頬をぷくっと膨らませ、拗ねている。
「あら、うっかり!」
私はとぼけたようにニヤッと笑ってそう言った。
すると、目の前に並んだ美味しそうな料理が目に入った。
どうやら待ちきれなかったらしいアレクが、私と王子の手をそれぞれ取る。
「二人ともー! 早くごはん食べに行きましょー!」
そう言って、ずんずんと歩き出した。
王子は心底安心したのか、クスクスと笑う。
「ああ、待たせてすまない。たくさん食べよう」
王子がおびえなくなったようで、なによりだ。
私たちが料理を食べていると、
「もし、そちらのお方と少しお話をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
そんな声をかけてくる女の子がいた。
その子は綺麗なブロンドの髪をくるくると巻いていて、私たちと同じくらいの年齢だろうに、どこか気品のある佇まいをしている。
あれ……。
私、この子を知っている……?
「あの……聞こえておりますか?」
女の子にもう一度声をかけられる。
けれど、私は完全に自分だけの世界に入り込んでしまっていた。
そう。
この女の子。
レジーナ・アルテシオンこそ、この世界のヒロインなのだということを思い出してしまった。
そして、そこにいるヴィンセント・バレンタイン王子が、あの『おバカ王子』であることも。
そう。
ここは――
前世で私が読んでいた物語の世界なのだ。
「姉さま?」
「ライザ嬢?」
アレクと王子に心配そうに顔を覗き込まれ、私はようやく意識を取り戻した。
少し離れたところでは、レジーナも私を不思議そうに見つめている。
「し、失礼いたしました。アルテシオン様。我々も、ちょうどお話が終わったところですので、これで失礼いたしますわ」
「え、あ・・」
少し口調がおかしくなってしまったような気もする。
けれど、どうにかレジーナにそう告げると、私はアレクを引っ張ってその場を立ち去った。
王子は不安そうな目をこちらに向けていたが、今回は無視することにした。
王子には申し訳ないが、今の私は前世の記憶を思い出してしまって、それどころではないのだ。
この世界の物語の中心は、ユリウス・バレンタイン王子と、レジーナ・アルテシオン公爵令嬢だ。
レジーナ・アルテシオン公爵令嬢は、元々ヴィンセント王子の婚約者だった。
幼い頃に二人は婚約する。
しかし、レジーナ嬢はあまりにも完璧で、何でもできてしまう一方、ヴィンセント王子は引きこもりも相まってか、勉強も剣術も不得意だった。
婚約を機に、ヴィンセント王子は周囲から注目を浴びることになる。
そして、レジーナ嬢と何かにつけて比べられるようになってしまった。
そんな状況の中で、ヴィンセント王子の性格は少しずつ歪んでいく。
学園に入る頃には素行も悪く、我儘ばかり言う、いわゆる『おバカ王子』になってしまった。
そんな王子に近づいてくるのが、最近商人から貴族になったばかりの男爵令嬢だった。
はじめて書いた小説ですので、ものすごく誤字とわけわからない部分も多いとは思いますが、ご了承ください・・・




