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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
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野営地に戻ると、それぞれが思い思いに過ごしていた。どうやら、水浴びの順番が回ってきていたよだ。


「俺は水浴びをしてくる」


「行ってらっしゃい。念のために聞くけど護衛はいる?」


「不要だ」


「だよね。ごゆっくり」


彼らを置いて少し離れた川辺に向かう。

周囲を見渡し、人の気配がないか慎重に確認した。


血に濡れた鎧を脱ぎ、素肌を川に沈める。  


夜の水は、シンと冷たい。

肩まで浸かると、白い息を吐いた。


汚れた身体を擦り、ベタついた長い髪を手櫛で解く。


一人の時間は嫌いじゃない。

蒸し暑い鎧を脱げるのは、人がいないときだけだ。


水面に浮かぶ、褐色の肌を見つめる。

写し出されたそれは、長く尖った耳を持ち、額には丸い石が埋め込まれていた。


この姿を見たら、彼らはどう反応するだろうか。


魔人を憎む者は多い。

人間を襲うのは一部の種族だとはいえ、人に区別はつかないのだろう。

故郷も、魔人を恨む人間達によって焼き払われた。


きっと、正体を明かせば殺される。

ベリルの強い憎しみを感じる度に、そう思わない日はなかった。


身体を清めると鎧の汚れを落とし、また蒸し暑い鉄の中に身体を封じ込めた。


・・・


森を突き抜け、麓まで下りる。


通行証代わりのギルドカードを提示すると、あっさりと町に入ることができた。


活気溢れるそこは、様々な人が行き交い、肉の焼ける良い匂いがする。


「すごい!今日はここに泊まれるんですね」


「ああ。ギルドで換金してホテルを取ろう」


「賛成。いくらアイテムボックスが有能とは言え、ギチギチになってて心配だったんだよね〜」


「表示によると、ギルドは街の中央部にあるらしい」

 

門のすぐ横には、簡易ながらもメインスポットを示した地図が置かれていた。


「ここのギルドはどんな奴がいるんだろうか。楽しみだなっ!」


「頼むから問題ごとは起こさないでよ」


走ろうとするナルクの襟を掴むと、ヤイラと並んで皆の後ろを追う。

ナルクは方向音痴なため、目を離すわけにはいかない。二人体制でその行動を見守った。


同世代と分かったこともあり、ヤイラとの距離は以前にも増して縮まっていた。

寝るときは側に寄って来て、何かあると困ったようにこちらを見つめる。


警戒心の強い猫に、懐かれたような気分だ。


「ねぇ、ダルカン。良かったら僕と同じ部屋を取らない?どうせ、個室じゃないだろ」


彼からの提案に、顎に手を当てて考える。


必ず、ベリルとナルクは離さなければならない。

部屋の数にもよるが、誰とでもやっていけるヤイラと同室になるのは正直メリットが薄かった。


チラリと隣を見下ろす。


「……イヤなの?」


少し不満気で、どこか悲しそうな顔で彼が見つめてくる。


この姿を見て、拒否出来るわけがない。


「少し考え事をしていた。俺で良ければ同じ部屋を使おう」


「やった!……コホン。君はうるさくないし、余計なことも言わないから助かるよ。それだけだからね」


頬を微かに染め、典型的なツンデレが目の前で披露される。自分とは縁がないと思っていたそれに、思わず感動してしまった。


「俺もお前と同室だと嬉しいよ」


「………ふぅん、そう」


それから口を閉ざした彼と共に、街を歩く。

無言も彼となら気まずくなかった。


・・・


ギルドに着くと、人相の悪い男共が酒を煽っている。

彼らはこちらを向くと、下卑た視線でヒマリを見つめる。


黒髪黒目の少女が珍しいのだろう。


今こそ鎧の使い所だ。

その視線を遮るように、彼女の横に立つ。


顔を向けると、彼等は一斉に下を向いた。


ヒソヒソと周りから声が聞こえる。


拾った言葉から察するに、この町でも悪い噂が流れているようだった。


「何、アイツらの態度」


ピシリとヤイラの額に筋が浮く。


「俺は気にしない。時折り便利に使えるしな。それよりも、さっさと換金してしまおう」


受付嬢のところまで足を運ぶと、アイテムボックスを開け、戦利品を広げる。

何人かスタッフが出てくると、いくらになるのか計算を始めた。


その間も、ジロジロと不躾な視線に晒される。


「ダルカン、ヒマリと一緒にホテルを取ってきてくれないか」


気を遣ってくれたのだろう。ベリルは、ガチャリとお金が入った袋を渡すと、離席を促した。


「承知した。行こう、ヒマリ」


「はっ、はい!」


彼女を連れて、ギルドを後にする。


全身鎧の巨体がいると話しかけづらいのだろう。

珍しげに聖女を見つめる視線はあったが、声をかけられることはなかった。


しばらくして、目的地に辿り着く。

 

複数のホテルが立ち並ぶ西エリアは、街並みも美しく整っていた。

少し先に、ホテルの紹介板が置かれている。


「どこのホテルが良いでしょうか?」


「そうだな…。なるべく防犯面がしっかりしているところがいいだろう。恐らくこの三候補に絞られる。どこか気に入ったところはあるか?」


「あっ!ここのホテル、バスタブがあるんですか!?」


彼女が候補の一つに食いついた。


「ここにするか?」


「い、いいんでしょうか。私の一存で…」


「問題ない。むしろその方が助かる」


「それなら、ここだと嬉しいですっ」


「よし、空室があるか確認しに行こう」


彼女と共にホテルまで歩く。

幸い人は並んではいなかった。


「すまない、まだ空室はあるだろうか」


「本日ですね。五階は三部屋、二階は二部屋空いております」


「良かったです!まだ空いていて」


「そうだな。五部屋なら数人は個室で過ごせる。一人部屋を四つ、二人部屋を一つで押さえることは可能か?」


「勿論です。五部屋で予約させていただきます。お名前をお伺いしてもよろしいですか」


「ダルカンだ」


「ありがとうございます、ダルカン様。また後程、お待ちしております」


「ありがとう。頼んだ」


ホテルを出ると、看板の前に佇むベリル達の姿が見えた。

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