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黄金に光る扉を開く。
その先には、金銀魔石が幾つも積み上げられていた。
キラキラと光る報酬は、どれも質が良く高値で売れそうなものばかりだ。
「これだから冒険はやめられないね〜」
「沢山持って帰って、資金に変えよう!」
仲間と共に、お宝をアイテムボックスに詰めていく。
気づけば、全員のアイテムボックスがはち切れんばかりにパンパンになっていた。
・・・
ダンジョンを出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
昨夜と同じ野営地に戻り、ヒマリ用のテントを張る。
血や汗の汚れを落としに、数人づつ水場に向かっていく。ダルカンの順番は一番最後だ。
ぼんやりと、目の前でパチパチと弾ける火の粉をみつめる。
「ダルカン、今日は悪かった」
他の者が離れ、二人っきりになるとベリルは唐突に謝罪した。
「なんだ突然」
「今日の魔人との戦いについてだ。お前には無様な姿を見せただろう。あれは、仲間にする態度じゃなかった」
彼は視線を落とし、強く掌を握る。
「お前に何があったかは聞かん。だが、俺達が仲間であることに変わりはない。あまり、気に病むな」
「……恩に着る。なぁ、ダルカン。俺は、あの日、お前を誘って良かったと心底思ってるよ」
火に照らされた顔が、弱々しげに微笑む。
ぐっと喉が詰まるような思いだった。
喜びと同時に、強い罪悪感が胸を締めつける。
動揺を悟られぬよう、必死に抑え込んだ。
「…………そうか」
「ははっ、湿っぽくなってしまったな。そうだ、次はどこに行く」
「一度、麓に下りて換金するのはどうだ?ヒマリが調味料が無いと悲しんでいた」
「悪く無い提案だ。東の方に下りれば少し大きめの街がある。明日はそこに行こう」
「ああ」
しばらくして、水浴びを終えたヒマリが髪を拭きながら帰って来た。そのすぐ後ろには、護衛をしていたヤイラが控えている。
「おかえり、ヒマリ。明日は街に行こう。何が足りないか確認しておいてくれ」
「本当ですかっ、嬉しいです!確認しておきますね」
ニコニコと笑う彼女とは反対に、ヤイラの顔色は死人のようだった。
体調でも悪いのだろうか?
静かに野営地を離れる背中を追いかける。
少し離れた木の幹に、彼は背をもたれていた。
「ヤイラ、気分は悪くないか」
慎重に近づき声をかけると、青ざめた顔と目が合う。
「……平気」
「そうか。これを食べるといい」
彼の掌にコロンとアメを落とす。
町で買った最後の一個だ。
少しは気が紛れるかもしれない。
「ダルカン。僕は、」
彼は苦悩の表情で目線を彷徨わせる。
次の言葉が落ちるまでゆっくりと待った。
「僕、その、さっきの戦いで、ヒマリを見たんだ」
ヤイラが彼女に恋焦がれていることは知っていた。
何故ならダルカン以外のメンバーは、全員ヒマリに気があるからだ。ときに過酷な旅で、温かな気遣いで癒してくれる者に惹かれないわけがない。
夢魔は恋する女性に化けると聞く。
恐らく、彼の目には刺激的なヒマリの姿が映ったのだろう。
「最低でしょ。仲間を、そんな風に見るなんて」
「……。夢魔は捻じ曲げた欲望を宿主に見せる。それは、お前の望みではない」
「でも、嫌な気がしなかったんだ。むしろ、いい夢だとさえ思った。………僕、これからどうしたらいいのかな」
その表情は、迷子になった子猫のようだった。
慎重に手を伸ばし、ポスリと頭に手を置く。
「お前はヒマリと付き合いたいのか」
「まさか!勿論、彼女のことは好きだし、近づくとドキドキするけど。でも、今そうなりたいわけじゃない。僕にとって、仲間の方が大切だから」
「そうか。なら、お前が彼女と恋人になりたいと願う日まで、何もしなくてもいい。夢魔のことは気に病むな。誰しも欲は経験する」
「ダルカンも?」
「ああ」
「なんか意外。君は欲を持たない性質なのかと思ってた」
「そんなことはない」
「夢魔の攻撃も効かなかったじゃん」
「……あれは別だ」
「ふぅん、まぁいっか。それよりも、相談に乗ってくれてありがと。ちょっとスッキリしたよ」
「いや、それなら良かった。俺で良ければいつでも話は聞く。一人で抱え込まないでくれ」
「うん。……じゃあ、ついでに一つだけ言ってもいい?」
「勿論だ」
「君、度々僕を子供扱いするだろ。いや、僕が子供っぽいのが悪いんだけど…。その、一応成人してるから」
「そう、だったのか!?」
思わず張り上げた声に、鎧の中で音が反響する。
耳を塞ぎたくなるような轟音が鼓膜を揺らした。
「すまない。今まで失礼なことをした」
「いや、言わなかった僕も悪いから」
「ちなみに、いくつになったんだ」
「………19」
またもや衝撃が身体を突き抜ける。
「……同い年、だな」
「嘘でしょ!?その巨体で19歳ッ?」
ポカンと二人の間に沈黙が流れる。
フッと息が抜けると、お互い腹を抱えて笑っていた。
「あははっ、一年も一緒にいて気づかないなんて。君、貫禄ありすぎでしょ」
「ふふっ、ヤイラは童顔だな」
「あ!気にしてるのに」
彼が眉を吊り上げる。
「整った顔立ちだからそう見えるのだろう」
「……君、そういうところがあるよね」
上がった眉尻が今度は下がり、ジトリと双眼がこちらを覗いた。
「何か気に障ったか?」
「こっちが恥ずかしくなるような台詞をすぐに言うから。そういうのは、僕じゃなくて好きな女の子にしなよ」
「本心を伝えただけなんだが…」
目の前の男が諦めたように一つため息を吐いた。
「いや、君はそのままで良いよ。僕が慣れるから。そろそろ、みんなの所に戻ろうか」
すっかり顔色が戻った背中を追った。




