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いくつもの扉を開く。
魔物を倒しては魔石を集め、宝箱を見つけてはヤイラが罠を解除した。
どれだけ深く潜っただろうか。
目の前には、一際大きな扉が佇んでいる。
恐らく、最下層に近い。
重い扉を開くと、眼前に灰色の渦が広がった。
「進むぞ」
ズプリと腕を入れ慎重に身体を沈める。
顔を上げると
ーーーそこには複数の"夢魔"が宙を漂っていた。
彼女達はクスクスと笑い、こちらを見下ろしている。
「何故ここに魔人が!!」
隣からギチリと剣を握る音が聞こえた。
ベリルがすさまじい表情で魔人を睨みつける。
魔物と魔人は根本的に異なる存在だ。
魔物はあくまで"影"に過ぎない。
そこに思考はなく、ただ魔王に指示された通りに動く残影だ。
それに対して魔人は、思考し、己の利益を考えて行動する。
別段、魔物や魔王とも関わりがなく、生命体としては人に近いしいものだった。
そして、魔人の中には人間に害をなす個体も一定数いる。
夢魔はその一つだ。
彼女達は人間の生気を吸って生きながらえる。
仲間のうち数名は、既に彼女達の術中にハマったようで、フラフラとその足元へ歩いていった。
それに手を伸ばし、更にクスクスと女達が笑った。
「ダルカンッ!お前は呑まれてくれるなよ!!」
ベリルが剣を構え直す。
その表情からは、怒りや憎しみしか見つからない。夢魔の術にハマる様子はなかった。
「ああ。行こう」
夢魔の術は、基本的に異なる性別にしか効かない。
正気を保っているのは、己を含めて三人。
ヒマリに戦闘力はないため、実質二人だけだ。
盾で彼女達の魔法や攻撃を防ぎ、その身躯を投げ飛ばす。
魔物とは違い、彼女達は生きている。
本当は傷つけたくなかった。
しかし、彼女達はご馳走様を前に逃げ出したりしないだろう。実際、隙は与えてはいるが、引く気配は全くない。
足元に這いつくばる仲間達の顔色が徐々に青白くなっていく。
……このままでは仲間が殺されてしまう。
グッと目を閉じると、その美しく艶かしい身体を葬った。
隣からは、激しい憎悪の音が聞こえる。
初めて会ったときから、ベリルは魔人を深く憎んでいるようだった。
彼は、酷い言葉で罵っては、その剣を血で赤く染めた。
・・・
多勢に無勢にも関わらず、我々は生き延びた。
それが、ベリルの激しい怒りからか、彼女達が相当食事にありつけていなかったからかは分からない。
ようやく仲間も正気を取り戻したようで、次々と叫び声をあげていた。
夢魔は好みの女、もしくは、愛する人間の姿をとる。
誰を見たのかは不明だが、頭を打ちつける姿を見るに、よほど気まずい相手だったらしい。
夢魔達の身体を一つに纏めると供養を行う。
「……何故そんなことをする」
後ろから、責めるような強い視線を感じた。
「このままでは悪意として残る。亡霊として出て来たら厄介だ」
「………」
「見たくないものは見なくていい。お前は少し休んでいろ」
後ろを振り返ると、その顔色は酷いものだった。
生気を吸われていた仲間よりもベリルの方がよっぽど死人に近しい。
「そうだな…。すまない、少し、離れる」
彼は後ろを向くと、振り返らないまま部屋の隅まで歩いていった。
・・・
彼女達の供養も終わり、手を合わせて目を閉じる。
一呼吸置いた後、仲間を振り返った。
聖女の力によって、皆回復したらしい。
その顔からは生気を取り戻している。
「次に進もう。恐らく最後だ」
ベリルの声と共に、奥に佇む扉に向かった。




