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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
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6

ぬいぐるみから、振り落とされる足や腕を避ける。


「周囲に魔物の気配はない。おそらくダンジョンの仕掛だろう」


「ギミックをどう解除するかだね。ヤイラ、何か手がかりはないの?」


フェイジスがヒマリを庇いながら、ぬいぐるみに向かって魔法を撃つ。


「う〜ん。強いていうなら、あのクローゼットが怪しいかも」


その視線の先には、一際大きなピンク色のクローゼットがあった。微かに開いており、隙間からは青色の光が漏れ出ている。


「分かった。皆、援護するぞ」


次々と襲いかかってくるぬいぐるみを盾でいなし、道を作る。視界の端に、ヤイラとベリルが一直線に走っていくのが見えた。


「ダルカン!何体倒すか競走しよう」


「まだ階層は浅い。本番に向けて、体力は残しておけ」


「もちろんだ!フェイジスもどうだ?」


「俺、そういうのはパス。ヒマリちゃん、危ないから俺のそばに居てね♡」


「はいっ!」


振り落とされる腕を盾で受け止め、跳ね返す。


後方には、ヒマリ達が控えている。

フェイジスがいるとはいえ、極力流さないほうが良いだろう。


音を立て自ら囮になりながらも、ぬいぐるみを撃沈させていった。


・・・


複雑に絡んだ配線を見つめる。

どうやら、あのぬいぐるみ達は機械仕掛けで動いているらしい。


配線の位置を確認すると、ペンチでパチリと切り始めた。


「ヤイラ、どうだ?」


後ろでベリルが敵の攻撃から、庇ってくれている。余り負担をかけるわけにはいかない。少しだけ、作業ペースを上げた。


「あとちょっとかかりそう。時間稼ぎお願い」


「任せろ」


ぬいぐるみの巨体が倒れ込むたびに、ズシリと重い揺れが広がる。


間違えて他の配線を切らないようにしないと…。


震える手で、ペンチを握った。


パチリ


最後の配線を切った瞬間


ぬいぐるみ達が機能を失い、次々と倒れ込んできた。


部屋中に重低音が広がる。

床も天井も揺れ、少し埃が落ちてきた。


無事解除できたようだ。

思わずホッと息を吐く。


「ヤイラ!成功したのか!!」


「うん。これでもう大丈夫だよ」


嬉しそうに、ない尻尾を振りながらナルクが近寄ってくる。その腕が伸びると、グッ抱き上げられた。


「えらいぞヤイラ!」


「ちょっと!気安く僕に触らないでよ!」


強い力で羽交締めにされ、頬擦りをされる。

喚いて抵抗しているのに、この筋肉だるまはピクリとも動かなかった。


「嫌がってるだろ」


後ろから身体を掴まれ、ナルクから離される。

そのまま、トンと地面に足がつくと、目の前が鉄の鎧で埋め尽くされた。


どうやら、ダルカンがナルクとの間に立ってくれたらしい。


「うっ、すまない。喜びを表したかったんだ。…‥お前にしてもいいか?」


「…………好きにしろ」


「ダルカンッ!!」


筋肉だるまと全身鎧がガシリと抱き合っている。

凄まじい光景に、思わず顔が引き攣った。


「遊んでないで進めるぞ。ダルカンも付き合わなくていい」


ベリルが冷めた視線を向ける。

相変わらずナルクに対して塩対応だが、そうなる気持ちも分からなくもない。


ようやく二人が離れると、各々部屋の探索を始めた。



そろりと鉄の後ろ姿に近づく。

足音を消して歩いていたのに、彼はすぐにこちらを振り返った。


「どうした、ヤイラ」


「その、さっきはアリガト」


彼の全身は常に鎧で覆われ、その表情を読むことはできない。


「気にするな。ナルクは力加減を間違えるときがある。怪我はしていないか」 


それでも、僕にかけられる声が、他の人より幾分か柔らかいのは分かった。


「掴まれた腕がちょっとだけ痛いけど、後は大丈夫」


「見せてみろ」


自身の1.5倍もある巨体が近づいてくる。

彼は、その見た目からは信じらなれないほど繊細に腕に触れた。


「……少し腫れているな。軟膏を塗ろう」


「別にいいのに」


「塗らない理由もない」


薬を取り出すと、優しく肌に塗り込まれる。

形容し難い不思議な感情が湧いた。


「これで大丈夫だ。すぐに良くなる」


「ありがとう、ダルカン」


目の前の男は、仲間になるまで非情で恐ろしい奴だと思っていた。


常に鎧を纏った彼の血生臭い噂は、跡を絶えない。


だが、実際に話してみると、気が利くし仲間思いのいい奴だ。何かある度にいつも助けてくれるし、こうやって気を遣ってくれる。


噂は当てにならないものだと、しみじみと感じた。


「皆さん、カーペットの下に扉がありました!」


ふと、聖女の嬉しそうな声が聞こえる。


「良くやったヒマリ」


「えへへ」


ベリルが優しく頭を撫でると、彼女は嬉しそうに破顔した。その姿に少しだけズキリと胸が痛む。


「俺たちも行こう」


「……うん」


部屋の中心部、扉があるところまで、のろのろと足を進めた。

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