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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
5/26

5

開いた先に空間はなく、鉄の壁が眼前に広がる。


そのとき……、


ズプリと足が沈む。

底なし沼に嵌ったかのように、身体が飲み込まれていった。


どうやら、扉から入るのではなく、()()()システムらしい。


「全員、着地体制!」


ベリルの声が遠く下の方から聞こえる。


頭頂部まで泥に沈むと、フワリと身体か投げ出された。


暗く大きな穴に吸い込まれていく。


落ちていく身体を翻し、周囲を確認した。

すぐ近くで、仲間が落ちていく姿が見える。


フェイジスには魔法がある。

彼なら、ヒマリも合わせて助けるだろう。

ベリル、ナルクは頑丈だ。

恐らく心配する必要はない。


となると、


ヤイラの位置を確認する。


彼はそう遠くない場所にいた。

空を蹴り、彼の元へと手を伸ばす。


細い腕を掴むと、その身体を自身の胸元へ引き寄せた。


「ダルカンッ!」


「口を閉じろ。舌を噛む」


パッと両手で口を塞ぐ姿に、ギュンと胸が締め付けられる。それに気づかないふりをして、近づいてくる地面を確認した。


ぶつかる寸前、盾を地面に突き刺し衝撃を緩和する。


ドンッ


重低音と共に身体が地に落ちる。

スクリと立ち上がると、腕の中の男が傷ついていないか確認した。


「無事か」


「ありがとう。僕は大丈夫」


見たところ外傷はないようだ。


横抱きにしていた彼に、ポンポンと胸元の鎧を叩かれる。その意図に従い、大人しく地面に下ろした。


周りをぐるりと見渡すも、怪我をした仲間はいないようだった。


思わず安堵のため息を吐く。


「次に進もう」


ベリルは何事もなかったように立ち上がる。

彼は元貴族とは思えないくらい頑丈で強かな男だった。


「奥に小さな扉があるな」


少し離れた先に、ヒマリが屈んでギリギリ通れるくらいの扉がポツンと佇んでいる。

子供部屋のようで、クレヨンの落書きが至る所に書かれてあった。


目の前まで来ると、扉は更に小さく感じた。


「ダルカン、入れるか?」


「努力はする」


横にも縦にも大きい鎧を何とか抑えながら、小さな扉を潜る。が尻元がつっかえて、それ以上動かなくなった。


「………」


「鎧脱ぐの手伝うぞ!」


「いや、押してくれ」


「分かった。俺が押そう」


ベリルの手が鎧越しに触れる。そのままグッと後から押された。自らも腕に力を入れ、前へと這う。


ギギギッ


鎧が音を立てて、微かに動いていく。


「扉が壊れちゃいそう…」


心配そうな、ヒマリの声が後ろから聞こえてきた。


「油を刺そう。ベリル、僕と代わって」


後ろの気配が、ヤイラに変わる。

彼は自身の道具を取り出すと、油を刺しグッと身体を押した。


ズルズルと身体が滑り、ドスリと前へ落ちる。

何とか通れたようだ。


「すまない。手間をかけさせた」


「いや、無事通れて良かったよ」


小さな扉を、次々と仲間が潜り抜ける。

途中、ナルクも挟まったが同じ要領で抜け出せた。


部屋は大きなぬいぐるみや、つみき、クレヨンの落書きで溢れている。


「わあっ、可愛い」


彼女が、トコトコとその身体よりも大きいクマのぬいぐるみに近づいていく。


「ヒマリ、あまり離れるな」


「はい!」


ベリルの声に、少女が元気よく振り返った瞬間、


クマのぬいぐるみがグラリと動く。


「ッヒマリ」


彼女の腕を掴み引き寄せると、地面を蹴ってその場を飛び退く。


ドシリッッ


先ほどまで立っていた地面には、クマの腕が突き刺さっていた。


ボタンの目が光り、その巨体がゆらりと立ちあがる。


「怪我はないか?」


「ごめんなさい、私…」


「気にするな」


クマだけではない、部屋中に置かれていた大きなぬいぐるみが次々に立ちあがる。


それらは、動いたものを手当たり次第攻撃し始めた。

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