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5メートルを超える鉄の扉には、鍵がかかっていた。
無理矢理開けようものなら、ダンジョンから追い出される可能性が高い。
身体を退け、後ろを振り返った。
「ヤイラ、いけるか」
「ちょっと見てみるよ」
彼は錠前に立つと、持ち前の道具を出してカチャカチャと動かし始める。錠の位置が高いのか、少し背伸びをしていた。
小動物のようなその姿に、キュンと胸が高鳴った。
ここで"持ち上げようか?"なんて聞いたら、彼のプライドを傷つけてしまうだろうか?
一人で葛藤していると、声をかける前にガチャリと鍵が開く。
「うん。これでもう大丈夫だよ」
「……ありがとう、ヤイラ。助かった」
「どうってことないさ」
彼と位置を変え、扉の前に立つ。
「開けるぞ」
重く古い鉄の扉を、力を込めて開いた。
隙間から光が差し込み、目を瞬かせる。
扉を開けるとそこは、草原のど真ん中だった。
「屋外か」
「戦いやすそうだ!」
「走るなナルク!聞いてないな……。悪い、ダルカン。回収頼んだ」
「ああ」
駆け出した男の首根っこを掴む。
周りに敵の反応がないとはいえ、いつ何が起こるか分からない。警戒して損はないだろう。
「これだけ広いと探索も大変そうだね」
「二手に分かれよう。俺がフェイジス、ヒマリを連れて行く」
フェイジスは、女性と一緒ではないと力を出さない。そして、ナルクとベリルは余り良好な関係とはいえなかった。
「承知した」
ナルク、ヤイラと共に、反対方向に足を進める。
時折、犬のように走り出すナルクを捕まえては、周囲に目を凝らした。
・・・
どれだけ歩いただろうか。
喉の渇きを感じたとき、ようやくふわふわと浮かぶ扉を見つけた。
「ナルク。頼んだ」
耳に指を詰め、ヤイラと共に彼から離れる。
彼は大きく息を吸うと、周囲に響き渡るように腹から声を出した。
「見つけたぞッッッッ!!!!」
ビリビリとした音圧が鎧を揺らす。
耳を塞いでもキンと脳を突く声に、思わず感心してしまった。
「流石だな。それは、お前にしかない力だ」
「そうか!なら良かったぞ!」
「あたまが、まだ、くらくら、するよ」
ヤイラがぐるぐると目を回している。
揺れる身体を、少し悩んだ後そっと支えた。
「ありがと…」
「ッ大丈夫かヤイラ!」
「耳元で叫ばないで。……うん。もう大丈夫」
少し落ち着いたのか、触れていた身体が離れる。
顔色は悪いが身体の震えは止まっていた。
ナルクの声伝達は、便利だがデメリットもあるようだ。
しばらくして、ベリル達がやって来た。しっかりと声は届いていたらしい。
「やっほ〜、お待たせしちゃった?」
「いや。無事聞こえたようで良かった」
「ヤイラくん、顔色が悪いですよ!?」
彼女が心配そうに駆け寄る。
その蒼白い顔色を確認すると、静かに顔を寄せた。
チュッ
おでこにかかる髪を上げ、白い額にキスを落とす。
ヤイラの華奢な身体がピクリと動いた。
「別に、これくらい良いのに…」
聖女の唇には女神の祝福が宿っている。
キスをした相手の力を強め、状態異常を緩和させる能力があるのだ。
祝福のおかげか、ヤイラの青白かった肌は赤く染まっていった。どうやら、体調は戻ったようだ。
「いえ!これくらいしか出来ないので。辛くなったらいつでも言ってくださいね」
彼女がニコリと笑うと、ベリルが一つ咳払いをした。
「ヤイラも回復したところだし、次の扉に向かおう」
浮かぶドアノブを掴むと、グッと手前に引いた。




