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各自支度を整えると、道なき森を進んでいく。
「この辺りだ。フェイジス、どうだ?」
野営地から少し離れた場所で、ベリルの足が止まった。
木々が生い茂る森の中、ぽかりと空いた空間に、日の光が差し込んでいる。
「そうだねぇ。たしかに魔力を感じるよ。解呪するから、少し離れてて」
彼から遠ざかり、キラキラ瞬く結晶を見つめる。
いつみても、彼が使う魔法は美しかった。
バチンッ
大きな音共に、目の前の空間がぐにゃりと歪む。
そこには人がギリギリ通れそうなほどの空洞が現れた。
「…うん、ベリルの読み通りだね。この先は、新しいダンジョンに繋がっているよ」
ベリルは一つ頷くと、葵色の透き通った瞳がこちらを振り返る。
「皆、装備は十分か?」
「ああ!」
「問題ない」
「僕も大丈夫」
「ヒマリ、お前はどうする。ダンジョンは危険だ。ここで待っていてもいい」
「私も行きますっ!少しでも、みんなの役に立ちたいから…」
ベリルの問いかけに、彼女は怯えを隠すように掌を握りしめる。
元の世界は戦う必要などない、平和な世界だったらしい。無理矢理召喚されたにも関わらず、前を向こうとする少女に胸が締め付けられた。
「分かった。だが、無理はするなよ」
「はい!」
「ダルカン、頼んだ」
「ああ。任せてくれ」
先頭に立ち、神経を尖らせる。
戦闘が得意ではない仲間に、決して敵を近づけない。
決意と共に歪んだ空間の中に身体を沈めた。
・・・
進んだ先には、洞窟が広がっていた。
壁に掛けられた松明の光が、かろうじて暗い空間を照らしている。
目を凝らし、周囲に危険がないか探る。
少し先に、数体魔物の反応があった。
それは、天井から吊り下がり、ギラギラと獲物を待ち構えている。
「上空に7体、等級は3。慎重にいけば手こずる相手ではない」
「早速だな。総員、突撃!」
ベリルの声と共に動き出す。
先頭に躍り出ると、襲いかかる魔物を盾で薙ぎ払った。
ガンッと鈍い音が洞窟にこだまする。
なるべく、ここで抑えなければ。
ヒマリは戦う手段を持たない。
彼女でも扱える剣を渡してはいるが、魔物に立ち向かうには不安が残る腕前だ。
流れ込んでくる魔物を払っては、重い盾とその体躯で次々と霧と魔石に変えていった。
仕留め損ねた二体が、上空を飛び越えていく。
「すまない、取りこぼした」
「はいは〜い」
フェイジスが火の魔法を放ち、魔物の羽に直撃する。
けたたましい叫び声と共に巨体が落ちてくる。
ドンッ
土埃が舞い、視界が途切れた。
それをもろともせず、ナルクが大剣を振り落とす。
魔物の身体が二つに割れ、濃い霧と共にコロンと魔石が落ちた。
視線を動かすと、もう一体が高く天井からこちらを狙っている。
「ダルカン!」
「ああ」
掛け声と共に、ベリルがこちらに向かってくる。
腰を落とし手を組むと、その足を乗せ、一気に上空へと投げ飛ばした。
高く上がったその身体は空中で翻し、魔物に狙いを定めて剣を突き立てる。
「ギャォンッッ」
ベリルは剣を突き刺したまま、凄まじい速度で魔物共々落ちてきた。
その巨体が地面に叩きつけられた瞬間、ふわりと霧へと変化する。
周囲に敵の反応はない。
無事、殲滅できたようだ。
結構な高さから落ちたにも関わらず、ベリルはケロリと立ち上がる。
「良い滑り出しだな。魔石を集めよう」
それぞれが落ちた魔石を拾う。
魔物が落とすそれは、美しいだけでなく高い魔力を保持している。
床に落ちた魔石は、3等級ではあるが質は悪くない。最大の7等級には劣るが、高値で売れるだろう。
「皆さん怪我はないですか?」
彼女が心配気に、チラチラと皆の様子を確認する。
「みんなピンピンしてるよ〜!ヒマリちゃんが応援してくれたら、もっと頑張れるかも♡」
「が、頑張ってくださいっ!」
「フェイジス、ヒマリに絡むな。ほら、次に進もう」
「少し先に扉が見える。恐らくダンジョンの入り口だろう」
「久しぶりの運動だっ!腕が鳴るなヤイラ!!」
「うぅ、声が大きいよ。ほら、置いていかれる前に僕らも進もう」
薄暗い道を一直線に並び進んでいく。
時折、飛んでくる矢や鉄球をいなしながら、扉の前まで足を進めた。




