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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
3/28

3

各自支度を整えると、道なき森を進んでいく。


「この辺りだ。フェイジス、どうだ?」


野営地から少し離れた場所で、ベリルの足が止まった。


木々が生い茂る森の中、ぽかりと空いた空間に、日の光が差し込んでいる。


「そうだねぇ。たしかに魔力を感じるよ。解呪するから、少し離れてて」


彼から遠ざかり、キラキラ瞬く結晶を見つめる。

いつみても、彼が使う魔法は美しかった。


バチンッ


大きな音共に、目の前の空間がぐにゃりと歪む。

そこには人がギリギリ通れそうなほどの空洞が現れた。


「…うん、ベリルの読み通りだね。この先は、新しいダンジョンに繋がっているよ」


ベリルは一つ頷くと、葵色の透き通った瞳がこちらを振り返る。


「皆、装備は十分か?」


「ああ!」

「問題ない」

「僕も大丈夫」


「ヒマリ、お前はどうする。ダンジョンは危険だ。ここで待っていてもいい」


「私も行きますっ!少しでも、みんなの役に立ちたいから…」


ベリルの問いかけに、彼女は怯えを隠すように掌を握りしめる。


元の世界は戦う必要などない、平和な世界だったらしい。無理矢理召喚されたにも関わらず、前を向こうとする少女に胸が締め付けられた。


「分かった。だが、無理はするなよ」


「はい!」


「ダルカン、頼んだ」


「ああ。任せてくれ」


先頭に立ち、神経を尖らせる。

戦闘が得意ではない仲間に、決して敵を近づけない。


決意と共に歪んだ空間の中に身体を沈めた。


・・・


進んだ先には、洞窟が広がっていた。

壁に掛けられた松明の光が、かろうじて暗い空間を照らしている。


目を凝らし、周囲に危険がないか探る。


少し先に、数体魔物の反応があった。

それは、天井から吊り下がり、ギラギラと獲物を待ち構えている。


「上空に7体、等級は3。慎重にいけば手こずる相手ではない」


「早速だな。総員、突撃!」


ベリルの声と共に動き出す。

先頭に躍り出ると、襲いかかる魔物を盾で薙ぎ払った。


ガンッと鈍い音が洞窟にこだまする。


なるべく、ここで抑えなければ。


ヒマリは戦う手段を持たない。

彼女でも扱える剣を渡してはいるが、魔物に立ち向かうには不安が残る腕前だ。


流れ込んでくる魔物を払っては、重い盾とその体躯で次々と霧と魔石に変えていった。


仕留め損ねた二体が、上空を飛び越えていく。


「すまない、取りこぼした」


「はいは〜い」


フェイジスが火の魔法を放ち、魔物の羽に直撃する。

けたたましい叫び声と共に巨体が落ちてくる。


ドンッ


土埃が舞い、視界が途切れた。


それをもろともせず、ナルクが大剣を振り落とす。

魔物の身体が二つに割れ、濃い霧と共にコロンと魔石が落ちた。


視線を動かすと、もう一体が高く天井からこちらを狙っている。


「ダルカン!」


「ああ」


掛け声と共に、ベリルがこちらに向かってくる。

腰を落とし手を組むと、その足を乗せ、一気に上空へと投げ飛ばした。


高く上がったその身体は空中で翻し、魔物に狙いを定めて剣を突き立てる。


「ギャォンッッ」


ベリルは剣を突き刺したまま、凄まじい速度で魔物共々落ちてきた。


その巨体が地面に叩きつけられた瞬間、ふわりと霧へと変化する。


周囲に敵の反応はない。

無事、殲滅できたようだ。


結構な高さから落ちたにも関わらず、ベリルはケロリと立ち上がる。


「良い滑り出しだな。魔石を集めよう」


それぞれが落ちた魔石を拾う。


魔物が落とすそれは、美しいだけでなく高い魔力を保持している。


床に落ちた魔石は、3等級ではあるが質は悪くない。最大の7等級には劣るが、高値で売れるだろう。


「皆さん怪我はないですか?」


彼女が心配気に、チラチラと皆の様子を確認する。


「みんなピンピンしてるよ〜!ヒマリちゃんが応援してくれたら、もっと頑張れるかも♡」


「が、頑張ってくださいっ!」


「フェイジス、ヒマリに絡むな。ほら、次に進もう」


「少し先に扉が見える。恐らくダンジョンの入り口だろう」


「久しぶりの運動だっ!腕が鳴るなヤイラ!!」


「うぅ、声が大きいよ。ほら、置いていかれる前に僕らも進もう」


薄暗い道を一直線に並び進んでいく。

時折、飛んでくる矢や鉄球をいなしながら、扉の前まで足を進めた。

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