10
ギルドでの換金も無事終わったらしい。
彼等はぎっしりと詰まった金袋を持っていた。
これだけあれば、当面は苦労せずに過ごせそうだ。
「待たせたな」
「いや、俺達も今来たところだよ」
「ホテル予約できました!なんと湯船付きなんですよ」
ヒマリはベリルに駆け寄ると、嬉しそうに報告する。
「そうか。それは楽しみだ」
彼は一際柔らかな表情を少女に向け、その丸い頭を撫でた。彼女はニコニコとその手に擦りつく。
初めて会ったときから、二人はどこか特別な絆で結ばれているように見えた。
「ホテルも取れたことだし食事に行こう。俺は酒場に行くが、皆はどうする?」
「いいですね!私も行きます」
「賛成だ!久しぶりに呑み明かそうじゃないか」
ナルクとヒマリは嬉しそうに何を飲むか話している。
その姿を少し複雑そうにベリルが見ていた。
「俺はパス。少し街を見てくるよ」
彼の視線の先には、美しい女性が立っている。
どうやら、行く道で引っ掛けてきたらしい。
「フェイジス、あまり羽目を外しすぎるなよ」
「はいは〜い」
ひらひらと手を振ると、一直線に彼女の元へ歩いていった。
「お前達はどうする」
ベリルの視線が問いかけるようにこちらに向く。
特に仲間と離れる理由もなかった。
「俺も参加しよう」
「なら、僕も」
「決まりだな。ギルドマスターによると、南側に美味い酒場があるらしい」
彼の案内に従って、少し離れた酒場まで歩いていった。
・・・
空腹を満たし、お酒もまわってきた頃合い。
時計の針は左上を指していた。
あれから、4時間ほど経っている。
「ダルカンッ!いい加減その鎧外したらどうだぁ」
ナルクは完全に酔い潰れている。
酒瓶を片手に突然オロオロと泣き始めた。
「呑みすぎだナルク。水を飲め」
コツンと目の前にコップを置く。
彼はそれを一気に飲み干すと、同量のエールを煽った。
……水を挟んだ意味がない。
「私も気になってたんです!初めてお会いしたときから、お顔を見たことがないから…」
ちろりとヒマリに見つめられる。
彼女は、私に対して少し遠慮がちだった。
元の世界では、鎧を着る人間は身近にはいなかったらしい。鉄鎧が常に側にいるのは彼女にとって圧があるのかもしれない。
二人同時に向けられた視線に思わずたじろいだ。
どれだけ希望を叶えたくても、明日の命のことを考えると脱ぐわけにはいかない。
「別にいいんじゃない。鎧があろうとなかろうとダルカンはダルカンでしょ」
ヤイラはムスリとした表情でそう言った。
思わぬ助け舟に目を瞬かせる。
「その通りだ。お前が見せたくないのなら、見せなくていい。"俺達が仲間であることに変わりはない"だろ?」
横から更なる援護が入る。ベリルは昨日伝えた言葉を、そのまま返してくれたようだ。
……二人には後で何かお礼をしよう。
おかげで、断りやすい流れになった。
「ああ。お前達が嫌いだから脱がないわけじゃない。脱げない理由が別にあるんだ。期待に添えずすまない」
「そうか…。なら仕方ないな」
「残念です…。強要してしまってごめんなさい」
彼等は揃ってショボンと肩を落とす。
他者に興味を持ち踏み込むが、断れば引いてくれる。
二人とも、大人で優しい人間だった。
「いや、興味を持ってくれたようで嬉しいよ。ありがとう」
先程と同じ穏やかな空気が流れる。
何とか場は丸く収まったようだ。




