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早朝
ベリル達と待ち合わせ、各自の捜索区域を決める。
流石は世界一魔法使いが住む国だ。
図書館の数も多ければ、立ち並ぶ本屋の数も多い。
三人で手分けして、異世界に関する文献を探していった。
中心部から少しだけ外れた図書館で、異世界の文献を探す。
『多次元的空間論』『世界の狭間について』『異世界転移した私が帰るまで』『異世界帰還術』………。
図書館には、魔法局が出した学術本もあれば、歴代聖女によるエッセイ本まで取り揃えていた。
本を取ってはパラパラとページを捲る。
どの本も眉唾な情報や再現性の乏しい内容ばかりで、有益な情報は見つからない。
「………?」
ふと、どこからか視線を感じる。
顔を上げると、少し離れた書架から一人の男がこちらを見ていた。
それは、訝しげに何かを探っているような表情で…。
ゾクリと背筋が凍る。
その男は紺色の長いローブを纏っていた。恐らくこの国の魔法使いだろう。
彼の険しい顔つきを見るに、好意的な反応ではないことは明らかだった。
・・・
書架に本を戻すと、すぐさま出口へと向かう。
背後からこちらを追う男の気配を感じた。
息を吐き、歩くペースを早める。
男が走り出し、こちらに急速に向かってくる。
ーーーー完全に気づかれたようだ。
大通りに出て正体を叫ばれたら一溜まりもない。
くるりと翻し、正面から向き合う。
その手が私の肩を掴んだ瞬間、
「やあ、ダルカン。昨日ぶりだね」
男との間にラグナスが立っていた。
張り詰めた空気の中。
彼は穏やかな笑みを崩すことなく、掴んだ手をゆっくりと解いた。
「図書館で声を荒げてはダメだろう?ほら、ハウスだ」
ギチリ
目の前の男は、まるで人形のようにぎこちなく出口まで歩いていく。
その目には、既に私は映っていなかった。
「ラグナス、助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。ダルカンは今日も本探しかな?」
「そうだ。だが当てが外れたみたいだな。目ぼしいものはなかった」
「それは残念だね。どんな本を探しているの?」
「異世界へ行く方法についてだ」
「ああ、昨日借りていた本か。あれは魔法局の規制上、断片的な部分しか載っていないんだ」
「読んだことがあるのか」
「暇を持て余しているからね。図書館の本はあらかた読んだよ。君の知りたい内容なら、他の図書館にあるだろう」
「どこに行けばいい」
彼は少しの間、思案するように口元に手を当てた。
「うん、恐らく大丈夫だ。ダルカン、今から伝える約束を守れる?」
「どんな内容だ」
「決して声を上げず、僕から離れないこと。約束できそう?」
「承知した」
「それなら連れて行ってあげる。ほら、こっちにおいで」
鉄の手を白く美しい手が包み込む。そのまま二人は石壁をすり抜け、暗闇の中を進んでいった。




