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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
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「名前を聞いてきたのは、契約させるためか」


彼が困ったように眉尻を下げる。


「半分正解で半分不正解かな。たしかに悪魔は名前で魂を縛る。でも、魔人の魂はあまり美味しくないんだ。君に名前を聞いたのは、食べるためじゃない。ただ、純粋に興味が湧いたからだよ」


「興味、か。君は生きた魔人を見るのは久しぶりだと言っていたな。やはり、この国では正体を隠し通せる魔人は珍しいのか」


「そうだね。魔法師の研究は日々進歩している。彼らには魔人を見抜く方法がいくつもあるんだ。君も彼らの前を歩くときは気をつけた方がいい」


「肝に銘じよう」


廃墟都市にいたあの双子も、私が魔人だと見抜いていた。

出来るだけ早くこの地から離れたほうがよさそうだ。


「ダルカンはどこの国から来たの?」


「西のハーネリアからだ」


「ああ、数年前に側妃が即位した…。君の故郷もハーネリア?」


「いや、故郷は別だ。今はもうない」


「そっか…。それは辛いことを聞いてしまったね。君が育った場所なんだ、きっと綺麗なところだったんだろう」


「……ああ」


「ねぇ、ダルカン。君は人間や魔法師を恨んでいる?復讐したいと考えたことはあるのかな」


「何故そんなことを聞く」


「復讐を願う人間は多く見てきたけど、魔人はどうなのか気になって」


「……正直、同胞を殺した人間を恨む気持ちが無いとは言えない。が、人間もさまざまだ。それに、復讐に駆られていては更なる怨恨を産む。それよりも、私は安住の地へ行きたい」


「安住の地、か。彼等の執着を考えると、とても難しい課題だね」


「執着?」


「ああ。彼等は魔人を捕まえることに躍起になっているんだ。この国は、魔人の労働力と奪った財産で成り立っている。だが、あの扱いの酷さは君もみただろう?粗末に扱えばその分だけ数を減らしていく。その果てに待つのは、国力の衰退だ」


「……」


「だからこそ魔法師達は、新たな魔人の確保のために動いているんだ。魔人生産のために工場を建て、各国へ赴き隠れた魔人の地を暴く。どれだけ不可侵な場所だとしても、彼等には関係ないんだ」


「不可能、なのだろうか。彼等に見つからない安住の地を築くのは」


「やってみないと分からない。それでも、あの執着心だけは甘くみないほうがいいよ。彼等は隠されれば隠されるほど暴きたくなる性質なんだ」


「困った性質だな」


彼はクスリと笑うと席を立った。

そのまま横に来ると、足元に膝をつく。

自然な動きで鉄の手を持ち上げ、先程と同じように唇を落とす。


「ダルカン、僕のところにおいでよ。君一人なら、魔法師達から隠してあげる。他の魔人は救えないかもしれない。それでも、全てを失うよりはずっと賢い選択だろう?」


「……私一人で助かっても駄目なんだ。この件についてはもう少し考えてみるよ。助言ありがとう」


「それは残念。気が変わったらいつでも僕に言って。"友人価格"で叶えてあげるから」


彼はふんわりと笑うと、鎧に指を絡ませた。

普段されない扱いに、思わず戸惑ってしまう。


ただ興味があるだけで、ここまでするだろうか?

……やはり、非常食扱いなのかもしれない。


私は彼の甘い態度に惑わされないよう、気を引き締めた。


・・・


温室を出る頃には、すっかり日は落ちていた。

随分と話し込んでしまったようだ。


彼の手に誘われ、行きと同じ暗闇の中を歩いていく。

その距離は先ほどよりも少し短く感じた。


「ダルカン、今日はありがとう。君とデートが出来て良かったよ」


「デート…。いや、こちらこそ感謝する。とても有意義な時間だった」


「くれぐれも魔法師には気を付けてね。それじゃあまた()()


扉が開き強い光が差し込む。

トンと地面に足を着くと、そこはホテル近くの路地裏だった。

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