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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
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26

傷ひとつない白い手が鎧の手を持ち上げる。

そのまま、指先に軽くキスを落とした。


「ダルカン、本当の名前を教えてくれないのなら、僕に君の時間をちょうだい。きっと、後悔はさせないから」

 

至近距離で赤い瞳と目が合う。

蠱惑的なその瞳は、吸い込まれそうなほど妖しく輝いていた。


早く手掛かりを見つけて、この国から離れなければならない。

そう頭では分かっているのに、気づけば首を縦に振っていた。


「分かった。だが、仲間を待たせているんだ。もし時間がかかりそうなら、一言伝えてきてもいいか」


「もちろんだよ。彼のことかな?」


パチリ


彼が一つ指を鳴らすと、ベリルが通路から顔を出した。


「………」


「ああ、ここにいたのかダルカン。手掛かりは何かありそうか……ッて、すまない。取り込み中だったか」


慌てたようにベリルが目を離す。

目の前の男は、私の鉄の手を握ったままだった。


「誤解するな、ベリル。丁度良い文献ならあった。中は今から確認するところなんだが……、少し用事が出来てな。席を外しても良いか」


「あ、ああ。その、彼は知り合いか?」


「初対面だよ。僕はラグネス。君の仲間に一目惚れしたんだ。デートに誘っても良いかな?」


「デート?!えっと、ダルカンは同意しているのか」


ベリルの瞳がぐるぐると回っている。

相当困惑しているようだ。


巻き込んでしまった罪悪感がヒシヒシと胸を打つ。


「同意済みだ」


「そう、か…。その、本人の同意を得ているのなら問題ない。が、大切な仲間なんだ。くれぐれも傷つけないでくれ。ダルカン、ここが今日の宿泊地だ。あまり長居はせず早く帰ってこいよ」


彼はホテルの紙を渡すと、ラグネスから書籍を受けとった。

そのままフラフラと去っていく。


仲間が突然男に目覚めて、衝撃を受けたのかもしれない。


「それじゃあ行こうか。こっちだよ」


彼はそんな様子を気にすることもなく、繋いだ手を引いた。


つま先が向く方向にあるのは、白い壁だけだ。

迫り来る障壁を気にする様子もなく、男は足を進める。


ズプリ


彼の身体が壁の中に沈んでいく。

通路を通る人は誰もこちらに気づいていないようだった。

まるで透明人間にでもなったかのようだ。


一つ息を吐くと、彼を追って壁の中に身体を沈めた。


・・・


暗い空間を進み続ける。


手を引かれているおかげか、夜目が効かなくても躓くことはなかった。


「ねぇ、ダルカン。君はこの国に何をしにきたの?」


「異世界について調べるためにきた」


「そのためだけに、こんな危険な国へ?」


「ああ」


「君の行動原理がよく分からないな」


「そうか。ラグネスは何故この国にいるんだ」


「産まれたのがこの国だったんだ。そのままずっとここで暮らしてる」


「……魔人だと気付かれなかったのか」


「見抜いたのは乳母だけだよ。その彼女も数十年前に病で亡くなっていてね。今はもういない」


少し前を歩いていた身体がピタリと止まった。 


「話している間に着いたみたいだ」


ぼんやりと、目の前に扉が見える。

彼がドアノブを引くと、眩い光が辺りに差し込んだ。

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