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路地裏を進んでいく。
辺りにはキラキラと破片が落ちていた。
晶人族は、その身に石を宿す。
身体が酷く傷つけられたことで、その石が飛び散ったようだ。
男達の視線がこちらに向く。
彼らは自身よりも大きな鎧を目にすると、怯えたように退いた。
「な、なんだよ…。俺たちに何か用か」
「お前達にはない。その男に用があってな。退いてくれるか」
「ま、まぁ別に?ただの時間潰しだし、別にいいけど…」
「感謝する」
「……あんた何者だ。魔人庇いは重罪だぞ」
酒瓶を叩きつけていた男に、ガシリと腕を掴まれる。
その瞳は、ジロジロとこちらを睨みつけていた。
「死体回収だ。息の根もないだろう。石が飛び散ると景観を崩す」
「……ふんっ。さっさと掃除しとけよ。子供の足に当たったらかなわん」
何とか誤魔化せたようだ。
男はその場をスタスタと去っていった。
続けて、野次馬や年若い男達もその場を離れていく。
問題は、ここからどうするかだが……。
「ヤイラ。すまない目を瞑ってくれるか」
「……僕が隠すよ」
彼は懐から持ち前の道具を出すと、あたりに視線避けの幕を張った。
私が何をするか、勘づいているようだった。
頭の中で、一番危険が薄い場所を想像する。
ーーーあの廃墟都市なら、しばらく人間は来ないだろう。
「どうか、生き残ってくれ」
鎧から魔法道具を出し、彼の身体に当てる。
万が一のときに残していた、移動魔法具だ。
男の身体が次第に分解されその姿を消す。
この行為が、これからどう作用するかはわからない。
彼が平和に生き残ってくれるかもしれないし、更なる苦しみを味わうかもしれない。
無責任なことをしているという自覚はあった。
それでも傷つけられた同胞の姿に、自分を制御することができなかった。
周囲を一通り綺麗にして、立ち上がる。
「待たせた」
「ううん。行こっか」
彼は何も聞かなかった。
ただ黙って隣に立ち、私の歩幅に合わせて歩いてくれる。
そのさりげない気遣いに、ささくれ立っていた心が少しずつ解けていった。
魔人が一括りではないように、人間だって皆が同じではない。
その事実が、今の私には何よりも救いだった。
・・・
帝国一の図書館は、もはや貴族の邸宅と見紛うほどの規模を誇っていた。
敷地内は、本が収蔵された本館、図書館に併設された研究施設、そして限られた者しか立ち入ることのできない別館の三つに分かれている。
本館だけでも十分に広く、この中から仲間を探し出すのは至難の業に思えた。
「一応分野ごとには分かれてるみたいだね」
「異世界転移に関する資料は…、四階か」
階段を上ると、そこは小さな村が収まりそうなほど広大な書庫が広がっていた。
多くの書架が立ち並び、天井スレスレまで本が並んでいる。
細い通路を通り、書架の間を一つ一つ覗き込む。
そこに仲間の姿はなかった。
「う〜ん、ここから出たのかな。それとも別の階にいるとか?」
離れたときのヒマリの姿を思い出す。
青い顔からは冷や汗が流れ、その呼吸は浅くなっていた。
もしかしたら、体調を崩したのかもしれない。
「一度尋ねてみよう。もしかしたら、伝言を頼んでいるかもしれない」
「それもそうだね」
下に降りると、カウンターに座る女性が慌ててこちらに向かってきた。
「もしかして、ダルカン様でしょうか?」
「ああ、俺がダルカンだ」
「その、お連れの方の中に体調を崩された方がおりまして…。今図書館の休憩室で休まれているところです。ご案内してもよろしいですか?」
「ありがとう、とても助かる。手間を取らせてしまいすまないな」
「いえ!お気になさらないでください。休憩室はこちらです」
案内に沿って、奥まった場所まで進んでいく。
休憩室は従業員スペースに程近い場所にあった。




