23
※ 残酷な描写があります。
暴力表現などが苦手な方や、不快に感じる恐れのある方は、本話を読み飛ばしてください。
数日後。
ようやく、首都フェラデールに辿り着いた。
足を踏み入れた瞬間、異様な雰囲気に飲まれる。
そこは、無償労働や魔人販売が可愛く思えるくらい、狂っていた。
魔人を道端に括り付け、殴り、犯し、殺している。
そこに尊厳などなく、まるで物のような扱いだった。
拘束されている魔人の殆どが、人間を襲わず戦闘に不向きな種族ばかりだ。
喉元まで込み上げてくる吐き気を何とか飲み込む。
何故こんなことが出来るのだろうか?
強い怒りと悲しさでどうにかなりそうだった。
近くで、一際大きな怒声が聞こえる。
目を向けると、路地裏の隅に人だかりが出来ていた。
「このッ魔人め!!!人間様を襲いやがって!!」
怒声をあげる男は、足を振り上げ何度も倒れ込む身体に酒瓶を叩きつけた。
辺りから、ヒソヒソと沈んだ声が聞こえる。
「ああ、酒屋のベルクか…。可哀想そうに。あいつの娘、吸血鬼にやられたらしいぞ」
「なんて酷い…!これだから下等な魔人はッ」
男は耳を塞ぎたくなるような罵声と共に、暴力をふるっている。
害を与えたのは、その魔人ではないはずなのに。
「ゴミのくせに、こんなところで寝てんじゃねぇよ!」
鬱憤晴らしだろうか。
年若い男達が嗤いながら、魔人を傷つける。
街行く人は見て見ぬ振りをするか、痛ぶられている魔人を見て笑っていた。
「うわっ!見ろよコイツの肌、きもちわるっ!」
「やっぱ人じゃねぇんだな。あ〜あ、コイツら早く滅べばいいのに」
「言えてるっ!ほら、泣いて詫びてみろよ。人間様っ、下等な僕ちゃんが生きててごめんなさい〜ッて」
頭がどうにかなりそうだ。
身体が燃えたぎったように暑い。
これ以上ここにいたら、目的を忘れて暴走してしまいそうだった。
深く息を吐くと、その場から目を離そうとする。
そのとき、人々の隙間から殴られている魔人の姿が鮮明に見てしまった。
褐色の肌に、長く伸びた耳、額には宝石が埋め込まれている。
………私と同じ晶人族だ。
その身体は酷く傷つき、一部欠損している。
ハンマーで殴られた断面からは、額と同じ石が露わになっていた。
掠れた悲鳴をあげる男は、突然顔を上げた。
離れた場所にも関わらず、バチリと目が合う。
縫い付けられたように、足が動かない。
「ダルカン、大丈夫?」
横を並んでいたヤイラがこちらを振り返った。
その顔色は、ひどく青ざめている。
「…………」
「ダルカン?」
「………先に行ってくれ、用事を思いついた。図書館で落ち合おう」
「待ってくれ」
ベリルがこちらに身を寄せ、囁いた。
「この治安だ。お前を一人にはしておけない」
「俺は大丈夫だ。ヒマリの顔色が先ほどから悪い。早く休ませてやれ」
「ダルカン、お前がどれだけ強くても俺は心配なんだ」
「少し離れるだけだ。昼には合流する」
「………許可できない」
「フェルジス」
「分かったよ…。くれぐれも危険なことに首突っ込んじゃダメだからね!ほら、ベリル行くよ」
彼がその首根っこを掴んでズルズルと運んでいく。
心配そうに振り返る仲間に、ヒラリと手を振った。
突然ヤイラの動きがピタリと止まる。
彼は仲間に一言二言伝えると、こちらに戻ってきた。
「やっぱり、僕もダルカンと一緒に行くよ」
「ダメだ。先に行ってくれ」
「嫌。君、無茶するつもりでしょ?」
「………」
「君が何をしても邪魔はしない。だから、僕も連れていって」
「………もし危険が迫ったら、必ず一人で逃げろ。約束できるなら連れて行く」
「分かったよ。ダルカンもね」




