20
ベリル達が帰ってきた。
肩を組んで帰ってきた彼等は、ボロボロの状態だった。
服は破け、肌は酷い火傷で爛れている。
どうやら、あのレーザーに掠ってしまったらしい。
双子が治癒魔法を施すと、その痛々しい傷は一瞬で治った。
楽しそうに談笑している彼等を微笑ましく見つめる。
ふと、ベリルに目を向けたとき。
ーーーゾクリと悪寒が走った。
視線が彼の腰元に向かう。
彼は、豪華な装飾で飾られた武器を帯剣していた。本能的に、それが魔人を討つ遺物なのだと気づいた。
「ダルカン?その、どうかしたか」
ジロジロと不躾な視線を送ってしまったらしい。
ベリルに、遠慮がちに声をかけられた。
「いや、すまない。それが例の遺物なのだな」
「ああ、そうだ。皆、俺のわがままを聞いてくれてありがとう。おかげで、また一つ目標に近づくことが出来たよ。この恩は必ず返すと誓おう」
彼は感慨深そうに、柄を撫でる。
長い指が剣に触れる度に、今すぐ逃げ出したくなった。
剣からは、それほど強大な力をヒシヒシと感じる。
「………気にするな、仲間だろう。それに、お前のおかげで装置の暴走を未然に防げたんだ。胸を誇れ」
「俺は沢山戦えて満足だ!」
「僕たちは、外に控えてただけだし気にしないで」
「そうですよ!」
「ありゃ、僕だけか。ベリル、約束は守ってよ?」
「勿論だ、フェルジス。恩は返すと言っただろう」
死闘を乗り越えたからか、2人の間の距離は更に縮まったように見えた。
楽しそうに小突き合う2人を見ながら、乾いた喉を温かい紅茶で湿らした。
・・・
「世話になった。君達がいなかったら、アイオーン様の遺物には出会えていなかったと思う。心から感謝する」
ベリルは、見送りに来た少年達に深く頭を下げた。
「いえ、こちらこそ助かりました。あのままアレの相手をするのは骨が折れたでしょうから」
「君達はこれからどうするんだ?」
「装置を片付けた後、旅に出るつもりだよ。実は僕たち、ここから出たことが一度もないんだ」
「もう僕たちの役割は終わりました。あとは余生を楽しむだけです」
彼等は晴々とした表情でそう言った。
「そうか…。もし旅先で出会ったら、また茶を飲もう」
「もちろんだよ!そうだベリル。一つ伝えたいことがあるんだけどいい?」
「何だ?」
少年はグイグイと彼の手を引き、こっそりと耳打ちをする。
防音魔法がかかっているのだろうか。
そう遠くない距離なのに何を話しているのかさっぱりだった。
しばらくして2人が戻ってくる。
「何を話してたの?」
フェルジスが不思議そうに少年に目を向ける。
「ひみつ〜。というかお前にはぜったい教えない」
一度下がった好感度は、なかなか回復しないようだ。
彼はジトリとフェルジスの顔を睨んだ。
ベリルが仲裁するように、間に立つ。
「お前の助言、肝に銘じるよ」
「うん。あの試練をクリアできた君なら、決して間違えないって信じてる」
待機させていた馬に乗り、出立の準備を整えた。
「さあ、出発だ」
「君達の旅先に幸多からんことを!」
「気をつけていってらっしゃい」
対なる少年に見送られて、馬を走らせる。
小さくなっていく、灰色の都市はやがて砂に埋もれ見えなくなった。




