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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
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巨体から赤い目が離れると、その身体はズシリと動かなくなった。


上空に浮かぶ点と落ちていく赤が空中で消える。

周囲を見渡しても、その影すら見えない。


「これで、アイツが動くことはないだろう」


「……ああ、助かった。共闘感謝する」


「気にするな。これも何かの縁だろうさ。それじゃ、俺は帰りますかね」


グッと伸びをすると、尻尾を振り男が地面に沈んでいく。


何か持っていないか、鎧を探った。

恐らく、その姿では人間の街に行くことはないだろう。


それなら、金銭よりも……。


「良ければ、これを受け取ってくれ」


燃えた我が家から持ち出した、ロケットを渡す。

中には、治癒効果のある精霊の息吹が入っている。 

これなら、竜人族である彼にも使いやすいはずだ。


「…それ、大切なもんだろ。仕舞っておけ」


「例は尽くす。遺品なら他にもあるから気にするな」


「そうか。なら、ありがたく。次会うときがあれば返してやるよ」


そういうと彼は頭まで沈んでいった。

周囲にその気配はない。


「返却は不要だというのに」


「何を渡したんだ?」


「ただの便利アイテムだ。それよりも、ベリル達を探そう。姿が見えない」


「そうだな!どこか、怪我をしていないといいが」


珍しくナルクの眉が下がる。

ベリルは嫌がるが、ナルクは弟弟子としてベリルを可愛がっているようにみえた。その分無自覚に振り回しているようだが…。


「早く見つけて治療しよう」


「ああ!」


壊れた街を駆ける。

正門に近づくと、双子が手を振っていた。


「えら〜い!よく倒したねっ」


少年はぴょんっと飛び上がり、鎧に抱きついた。

機嫌良さそうにニコニコと笑っている。


「ぶじ、危険は去りました。怪我はしていないですか?」


もう一人の少年が、下からジッと見つめ上げる。


「俺は問題ない。が、隣にいる仲間が別件で怪我を負っている」


「分かりました。腕を出してください」


キラキラと粒子が光り、ナルクの身体を覆う。

溢れていた血は止まり、切れた肌は元に戻っていた。


「助かるぞ!」


「いえ、お気になさらず」


「仲間の居場所を知っているか?姿が見えなくてな」


「二人なら、アイオーン様の遺物の前だよ」


「今は試練を受けています。しばらくしたら帰ってくるでしょう」


「他にも試練があったのか?」


「はい。普通の性格検査ですので、心配しなくても大丈夫ですよ」


「そうか」


「それじゃあ、お疲れさまパーティーをしよう!ロートス、準備はバッチリ?」


「もちろんですよ、ルートス。門にいるお二人も連れてきてください。久しぶりのお客さま、歓迎いたします」


二人は歩きながら街を元の状態に戻していった。

 

正門の外を出ると、泣き腫らした顔のヒマリと、それを慰めるヤイラが立っていた。


目が合った瞬間、彼女の両目から涙がこぼれ落ちる。


「心配っ、しました!ケガがなくて、本当に、ッよかった……」


「ありがとう、ヒマリ。ベリル達も遺物に辿り着けたようだ。盛大に出迎えてやろう」


「はいっ!!」


涙を流す彼女を慰めながら、双子の家へと向かっていった。


・・・


テーブルには色とりどりのケーキが並んでいる。


ヒマリはそれを見つけると、嬉しそうに駆け寄った。どうやら、涙は引いたようだ。


「ダルカン。ちょっといいですか?」


ロートスと呼ばれていた少年が、グイッと手を引く。


「何だ?」


「こっちに来てください」


その小さな手に引かるまま、少し遠くの民家まで歩いた。彼は防音魔法かけると、こちらを振り向く。


「ダルカン。改めて、防衛装置を壊してくださりありがとうございました」


「俺は何もしていない。やったのは、ベリル達だ」


「いいえ、僕たちは見ていましたよ。貴方が自らおとりになり隙を作る姿を。とっても勇敢でしたね」


彼はふわりと浮くと、鎧越しに優しく頭を撫でた。

思わぬ行動に、つい身体が固まってしまう。


「……何故、こうも優しくしてくれるんだ」


「そうですね。後悔しているから、かもしれません。かつて魔女は、己の種族を助けるために他の魔人を生贄にしました。人に害をなさない種族もいると知っていたのに…。いわゆる、老人の勝手な罪滅ぼしです」


「そうか。だが、俺は嬉しかった。ありがとう、ロートス」


少年が初めてその表情を崩した。

目尻が下がりふんわりと笑う。


「ダルカン。僕は君につらい人生を歩んでほしくないです。まだ、小さな子供に…。あんな酷いことはさせられない」


「……」


「どうか魔人として捕まらないで。……それでも、人と共に歩く君なら、いつか()()()が来てしまうかもしれない。だから、これを君に授けます」


彼の掌に、キラキラとした宝石が散りばめられる。

何十何百何万という数がひしめき合うと、やがて小さな水滴に変わった。


「これを飲み込めば、あなたが願ったときだけ、誰しもがあなたを人間だと認識するでしょう。ただし、僕の力にも限度があります。願えるのは人生でたったの三回だけ。使い所はくれぐれも注意してください」


彼が指を振るうと、雫が口元に押しつけられる。

一瞬迷ったのち、パカリと口を開いた。

少し甘い雫をごくりと呑み込む。


「これで大丈夫です。いいですか、人生でたった三回だけですよ。どうか、ぜったいに捕まらないで……」


彼の手が伸び、鎧越しに頬に添えられる。

その姿に両親の姿が重なった。


熱くなる目元を堪えて、その手に擦り寄る。


「ありがとう、ロートス。君がくれた優しさを、決して忘れはしない」


「ダルカン、僕たちはいつだって君を見守っています。どうか、良い旅を」


彼は、願いを込めるように、優しく頬を撫でた。


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