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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
18/26

18

「ああ。今決まったところだ」


ベリルが軽く頷く。

双子は目を合わせると、手を取り合った。


「それなら、起こしますよ」


「せ〜のっ」


「「侵入者発見!起床の時間だ、ペットサンゴウ!」」


ドドドドッッ


地面が大きく揺れ、地表を割って何かが這い上がってくる。ブロンズ色の巨体が顔を出すと、それはゆっくりと立ち上がった。


全長は、都市を囲む外壁と同じ高さだ。今まで報告が上がらなかったのは、通行人がギリギリ気づかないサイズだったからだろう。


『シンニュウシャ、ハッケン。ハイジョシマス』


赤い目が光ると、一直線に黒いレーザーが伸びる。

少し遅れて、ドンッと重たい音が響いた。

パラパラと瓦礫や砂が落ちてくる。


「……、なるほど。手強そうだな」


『シンニュウシャハッケン。シンニュウシャハッケン』


「街ごと壊すとは思わなかったよ。ベリル、準備はいい?」


「ああ。いつでも大丈夫だ」


「オッケー。それなら、すぐに魔法をかけてあげる。ダルカン、"命大事に"で行動しなよ!」


彼等の身体がふわりと浮くと、急速に青銅に近づいていった。


レーザーが浮遊中に届いたら一溜まりもないだろう。

足元に近づくと、盾で思いっきり青銅を打つ。


赤い魔法石が、こちらを向いた。


その手が組まれると、スローモーションのように腕が降りてくる。


動きは遅いが、地表に当たったときの衝撃波は予想出来ない。


すぐさま身体を翻し、軽い身体で走り去った。


ドォォンッッッ


数分後、落とされた拳が地面に到着する。

拳の周囲35メートル程が、吹き飛ばされていた。

吹き飛んでくる瓦礫を避け、もう一度その巨体に近づく。


その目が届く位置に移動すると、注意を引くように石を投げる。


足の根元が動き、ゆっくりと上がっていく。

追いかけるつもりなのだろう。


ヒマリ達が待機している門とは反対方向に走り出した。


数分おきに、地鳴りは起きた。

彼が地面に足をつけるたびに、周囲は吹き飛び地面が揺れる。


足が長いのか、想定よりも近づくスピードが早い。

どうにかして、奴の動きが止められないものか…。


「ダルカン!今は何が起こってるんだ?」


「っ!無事だったんだなナルク。……いや、無事ではないな」


彼は全身からダラダラと血を流している。


「ハッハッハッ!かすり傷だ!」


「これが片付いたら、すぐに治療しよう。後ろにいるアレの動きを止めたいんだが、何かいい案はあるか?」


「それなら、コイツの力を使えばいい!」


そういうと、ナルクは足で地面を何度か打った。

地下深くから、急速に何かが近づいてくる。


ドンッッッ


大きく砂埃が上がると、先ほど出会った竜人族が目の前に立ち塞がった。


「お前…。本当にいい加減にしろよ。さっきのじゃ足りなかったのか?ア゛ァ?」


その額にはピキピキと筋が浮いている。


「何があったんだ」


「戦いたくて、喧嘩を売った!!」


「おバカ」


思わず"ダルカン"が抜ける。

ナルクは気づいていないのか、高らかに笑っていた。


その間にも青銅の巨体が近づいてくる。

飛んでくる瓦礫を避けながらも、必死に足を動かした。


「うわっ、サイアク!アレには絶対、関わりたくなかったのに」


「俺に捕まったのが運の尽きだな!」


「捕まってないし。喧嘩売られたから買いに来ただけだし」


「仲間が迷惑をかけてすまない…」


「本当にな。次からは首輪、しっかり繋いでおいてくれよ」


「肝に銘じる」


「仲直りだな!俺がお前を呼んだのは、さっきの魔法をアイツにかけて欲しかったからだ!」


「何で俺が…?あと、仲直りじゃねぇし」


「筋違いな頼みだとは重々承知している。だが、どうしてもその力が必要なんだ。どうか力を貸してくれないだろうか」


「………はぁ。まぁ、この地鳴りじゃ昼寝も出ないしな。要は、動きを止めればいいんだろ」


彼は立ち止まると、周囲の砂を動かし始めた。


やがてそれは大きな渦へと変わり、青銅の巨体に纏わり付く。ペットサンゴウは、砂を追い払うように腕を動かした。


散り散りになった砂は、足元や腕に溜まると一気にギュッと固まった。手足を拘束され、その動きが完全に止まる。


「ベリルッッ!今だッッッ!!」


精一杯声を張り上げる。

小さな二つの点が空を駆けるのが見えた。


・・・


目の前に来た赤は、今にもビームを打ちそうでヒヤヒヤする。ここまで近ければ避けようがない。


1メートルほどある石に、力を込めて剣を突き立てた。

腕に振動が伝わり、ビリビリと震える。 


突き立てた剣をグリグリと捩じ込んでいく。

剣の半分程が埋まったところで、ようやく最奥まで辿り着いた。そのまま、癒着している何かを削り取る。


ようやく赤い石がポロリと外れ、地表に落ちていった。


「ベリルッ!あと一個」


「ああ!」


もう片方に移動すると、同じように剣を立てる。

その巨体の奥から、プスプスと嫌な音が聞こえた。


「逃げろッッ」


急速に身体を落とす。

目を閉じ、上からも瞳を覆った。


強い光が瞼の裏を強く照らす。


ドンッッッ


遅れて音が上空で弾けた。

奴がビームを打ったようだ。


目を開けて周囲を確認する。


ーーー周囲にフェルジスの気配がない。


一瞬、何も考えられなかった。

もしかして、アイツ……。


「ベリルッッッッ!!負けるな!!!」


地上から兄弟子の声が聞こえる。

一気に意識が浮上した。


今は呆けている場合ではない。

もう一度上空へ飛ぶと、燃えてしまった剣の代わりに小刀を突き刺した。


俺が飛べているということは、アイツは無事だという証拠だ。


小刀は長さが足りない分、先程よりやり辛い。


諦めてその石に直接触れる。ビームを打った直後だからか、肌が焼けるように熱かった。


「アア゛ァアア゛ッッッッ」


顔に足をつき、必死で腕に力を入れる。

何かが剥がれる音とともに、身体がふわりと浮いた。


そのまま、制御を失ったように急速に落ちていく。

視界の端には、落ちていく赤い石が見えた。

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