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偽りだらけの冒険記  作者: Ka
15/27

15

廃墟都市、ブライフェン。

かつては、魔女と人間を結ぶ交流都市として、多くの住人が暮らしていた。


二世紀前。

国土を広げ過ぎたリーヘン帝国は、各国の反感を買い激しい攻勢を受ける。その領土は次々と失われ、ブライフェンも帝国から切り離されてしまう。


都市にいた人々は次第にブライフェンを去っていき、気づけば誰も住まない廃墟都市へと変わっていった。 

・・・・


借りた馬を走らせ、目的地へと向かう。


荒野を走り、あと少しでたどり着くというとき。

突然、ベリルが動きを止めた。


「待て、何か来る」


下から急速に大きな気配が近づいてくる。


ドンッッッ


土煙と共に、人型が地面から飛び出す。

それは立ち塞がるように目の前に現れた。

手足を覆う艶々とした鱗に、ギラリと光る牙ーーー竜人族だ。


「よぅ、にいちゃん達。今からお出かけか?」


目の前の男は長い髪を揺らしカラリと笑う。


竜人族が姿を現すのは、珍しい。

彼等は鱗を狙う人間に飽き飽きし、遠くの地へ逃げ去ったと聞いた。


「ッ魔人…」


ベリルは射殺さんばかりに目の前の男を睨みつけ、剣を握った。


彼が襲いかからないようにその前を塞ぐ。

目の前の男は恐らく土竜だ。砂地に覆われたこの場所では、彼に地の利がある。


「何の用だ」


「おお怖。挨拶しただけだって言うのに」


「良いから答えろ」


「急かすなって。お前らあの街に行くつもりだろ?悪いことは言わねぇ、やめた方がいい」


長く尖った爪が、クイっと後ろを指す。

砂埃の先に、ぼんやりと浮かぶ都市が見えた。


「魔人の言うことなんか信用できない。そこを退け。退けなければ殺すまでだ」


後ろからベリルの声が飛んでくる。

グッと詰まる胸に気づかないふりをした。


「おいおい、俺は親切で教えてるんだぜ?人間ってこれだから嫌なんだよな……」


「この先に一体何がある」


「と〜っても怖くて強いもの。俺はちゃんと忠告したからな?」


ズプリ


竜人族の身体が砂に沈んでいく。

首まで浸かる瞬間、琥珀色の瞳がこちらに向けられ弧を描く。


その意図を掴む前に、彼の気配は無くなっていた。


「………どうするの?」


ヒマリが心配気に眉を顰める男を見つめる。


「行こう。この先に何かあるのは確実だ」


目の前の馬が駆け出し、灰色の都市へと向かう。

一直線に進むその背中を追いかけた。


・・・


馬から降りると、誰もいない都市を見渡す。


建物は大きく壊れ、瓦礫が行手を阻む。

西方から白い砂が吹き込み、初雪のように白く積もっていた。


かつて栄えた都市は、見る影もない。


「アイオーンの遺物がこんなところに…」


「どうやって探索する」


「う〜ん、手当たり次第、はこの広さだと参っちゃうよね。手掛かりがないか調べてみるよ」


フェルジスの足元が黄金に光る。

光は斜方線状に伸びると、やがて都市部を飲み込んだ。


彼は閉じていた瞳をゆっくりと開く。


「地下に大きな気配がある。何かが深く眠っているようだ」


「敵か!」


「落ち着けナルク。アイオーンの遺物は見つかりそうか?」


「その気配が邪魔をして探せそうにないね。竜人族の言葉は間違いじゃないみたいだ。遺物をかき消せる程の力って相当だよ」


「そんな恐ろしいものが、この地下に…」


彼女が怯えたように、一歩退いた。


「眠っているのなら、起こさないよう探索するしかないな。ヒマリとヤイラは外壁で待機だ。俺達が戻って来なければ、敵がいることをギルドに伝えてくれ」


「そんなっ、私も行きます!」


「ダメだ。連れて行くには危険すぎる。ヤイラ、ヒマリを頼んだ」


「分かった」


「嫌です!私だって役に立てます。っお願い私を連れていって」


「…行こう、ヒマリ」


泣き叫ぶ彼女を抑えて、ヤイラが門へと近づいていく。ベリルはそれに背を向けると、一歩づつ中心部へと足を進めた。


・・・


「地道な探索になるとはね…。もう疲れちゃったよ。ヒマリちゃんもいないし」


「フェルジス、集中しろ。いつ手掛かりが見つかるか分からん。ダルカン、そっちはどうだ」


「瓦礫しか見つからないな。……待て。ナルクはどこに行った」


「そういえば見かけてないね」


「全くアイツは…」


ピシリとベリルの額に筋が浮く。


聞けば、二人は同じ師の元で学んだ兄弟弟子らしい。

ナルクの迷子癖は昔からのようで、姿が消える度に面倒ごとを連れてきたと彼は話した。


「まぁ、子供じゃないんだし。いずれ帰ってくるよ」


「厄介ごとを連れて来なければいいが」


話す二人の背後に、ポカリと影が浮かぶ。


「後ろだ!!」


「ッ!!」


ガンッッ


槍と剣、剣と盾が重なり、重い音が響く。


上から二つの影が降ってきた。

揃いの顔に揃いの服。彼等は一度飛び退くと、対照的な表情を浮かべた。

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