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早朝
ドンドンと扉を叩く音で目が覚める。
重い身体を起こし、薄い木の扉に近づいた。
「だれだ」
「おはよう、ダルカン。ヤイラを連れて下に来てくれ、共有したいことがある」
声の主はベリルだった。
その声は少しだけ上擦っている。
昨日の今日で一体何があったのだろうか…?
「承知した。少し待っていろ」
身体を翻し、ベッドへと近づく。
ヤイラは布団をぎゅっと抱え、夢の中にいた。
「起きろ、ヤイラ」
「んんっ、なに、まだ、はやくない」
「ベリルから召集がかかった」
「わかったよ…」
猫のようにピンと身体を伸ばし、弛緩する。
彼は眠そうな目を擦りながら起き上がった。
・・・
「朝からすまない。フェルジスから良い情報が入ったんだ。皆の考えも聞きたいのだが…」
ホテルの食事処に集まると、ベリルは開口そう告げた。皆の視線がフェルジスへと移る。
彼は朝帰りとは思えないほど、元気そうだ。
「うん。続きは僕から話すよ。街のお姉さんに聞いたんだけど、少し離れた廃墟都市にアイオーンの遺物が隠されているらしいんだ」
「アイオーン?」
「偉大なる魔女アイオーンだよ。ヒマリちゃんはまだ聞いていなかったかな」
フェルジスは、コホンと一つ咳払いをした。
……
偉大なる魔女、アイオーン。
人と魔女を繋いだ偉大なる魔法使いだよ。
魔女は、かつて人間とは異なる"魔人"として迫害を受けていた。
アイツらと違って魔女は人を襲わない。しかし、魔人を一括りにする人間達によって、多くの女性が火にかけられたんだ。
仲間を殺された恨みで、魔女は人と対立し長い戦争が始まる。多くの血が流れ、魔女はその数を減らしていった。
そんなとき、アイオーンは"魔人"ではなく人間に味方する"良き魔女"として立ち上がる。
魔人を倒す特殊な武器を人々に授け、自らも多くの魔人を葬った。
リーヘン帝国の新王ジャネブは、その功績を讃えてアイオーンを"良き隣人"として認めたんだ。
こうして人間と魔女は和解し、何世紀にも渡って彼等の血は混じり合った。
今では魔女は人間と同じ生命体であり、魔力を持つものは魔法使いとして敬愛されている。
………
「彼女は、魔法使いの歴史を作った偉大なる魔女なんだ。そして、彼女が人間に渡した特殊な武器を、アイオーンの遺物と呼んでいるんだよ」
「それさえあれば、どんなに強力な魔人でも倒せる。次の目的地が決まっていないのなら、俺は廃墟都市に行きたい。……皆どうだろうか?」
ジッとベリルの視線がそれぞれに向けられる。
「私は賛成です!そんなに凄い方なら、元の世界に帰る方法も知っているかも…。少しでもヒントが得られそうなら行ってみたいです」
「俺は修行できれば目的地はどこでも良い」
「そうか。ダルカンとヤイラはどうだ」
「特に行きたい場所もないし、ついて行くよ」
複数の視線がこちらに向く。
………拒否できる流れじゃない。
私に残された選択肢は、黙って頷くことだけだった。
魔人が、魔人を倒すための武器を探しに行く。
何とも皮肉な話だ。
「ありがとう、恩にきるよ。それなら、昼には出発しよう。皆支度を整えておいてくれ」
ベリルの顔は安心したように華やいだ。




