12
部屋割りは、話し合いの結果ダルカンとヤイラが同室となった。
正気を保っていたのがお互いしかいなかったからだ。
流石に、同意を得ないまま仲間同士を部屋に突っ込むのは気が引ける。
部屋に戻ると、ヤイラがふらふらとベッドに近づく。
そのまま、ぽすりと白いシーツに倒れ込んだ。
「気分は悪くないか」
グラスに水を注ぎ、彼に近づく。
「平気。何でアイツらあんなに重いの。ヒマリは別として…」
ゆらゆらと揺れる身体を支えると、グラスを口元に運んだ。
酔った身体で重い仲間を運ぶのは、想像以上に重労働だった。ナルクを背負った肩が若干痛んでいる。
「お前はよく頑張った。俺一人では運びきれなかったから助かったよ」
「もっと鍛えなきゃ…」
ーーームキムキになったヤイラ。
あの可愛らしい顔にナルクのような筋肉が………正直あまり想像したくはない。
「ヤイラは今の姿が一番魅力的だと思う。俺は風呂に入るが、お前はどうする」
「なに、一緒に入るつもり?」
彼はゴロリと寝返りを打つと、揶揄うようにこちらを見つめた。
「…………相当酔ってるな。いや、俺の言葉が足りなかった。俺はこの後風呂に入るつもりだが、先に入るか?」
「あははっ、ちゃんと伝わってるよ。僕は少し寝るから、お先にどうぞ」
彼は楽しげに笑うとそのまま目を閉じた。
どうやら、このまま眠るつもりらしい。
せめてでもと、靴を脱がす。
「ん。これも」
彼は細い指で身体を締め向けるベストを引っ張った。
望み通りに、ボタンを外す。
ベストを脱がせると、ついでに腰を締め付けるベルトもカチャカチャと外した。
彼は抵抗することもなく、されるがままだった。
「何かあったら呼んでくれ」
「うん。ごゆっくり」
長いまつ毛を伏せた男を置いて、風呂場に向かう。
不要だとは思うが、鍵を掛け棒を横たわらせた。
分厚い鎧から抜け出し薄い布を脱ぐと、褐色の肌が現れる。
温かく綺麗な水を浴びれるのは、久しぶりだ。
石鹸を泡立て、全身を洗う。
暖かいお湯が肌を伝い、身体が解けるのを感じた。
身体を洗うついでに、湿った服と防着をゴシゴシと洗剤で擦る。
泡を流す頃には、服はピカピカに輝いていた。
防具は綺麗になったが、鎧自体のムワリとする匂いと暑さは変わらない。
今からこれを着るのは、少し抵抗感があった。
幸いヤイラは部屋で眠っている。フェルジスは遊びに行ったのでホテルには帰ってこないだろう。
……きっと、魔法を使ってもバレないはず。
こっそりと鎧に、洗浄魔法と氷結魔法をかけた。
・・・
部屋に戻ると、彼はスヤスヤと眠っていた。
すぐ隣の白いベッドを見る。
流石にこの鎧で眠れば、宿主に迷惑がかかるだろう。
灯を消すと、ベッドサイドの椅子に背中をもたれた。
「んんっ、……だるかん、おかえり」
どうやら、起こしてしまったらしい。
彼は大きく伸びをすると、こちらに目を向けた。
「ベッドでねないの」
「ああ」
「ごめん、ぼくがいるせいだ」
「それは違う。たとえ一人でも鎧は外さない。何が起こるか分からないからな」
「そっか。鎧がなくても、君か生きていける世界になればいいのに。…………ごめん。酔っ払ってた」
彼はポツリと言葉を落とすと、ふらふらと起き上がり浴室に向かっていった。




