第27話 鳩
「くそっ、無事か!」
騎士クリフは、野盗どもから開放された侍女ベラの傷を確認すると、素早く小隊に指示を飛ばした。
「近衛隊! 外にいる奴は馬車を追え! 屋内に入った奴は、そこの倒れてる奴らを縛っとけ!! そいつらは――死にそうでも絶対に殺すなよ」
貴族邸、それも皇女隣席の現場を襲撃した犯人だ。
死なない程度に傷は抑えたが、なんしても生かして、この先厳しい尋問をする必要がある。
クリフがベラの軽傷を確認し立ち上がると、部下の一人から声が上がった。
「馬が……軍馬たちが厩舎から放たれています!」
「なっ!?」
自分たち騎士がこの場にいることも、追っ手がすぐにかかるだろうことも見越していたというのか。
(そもそもあいつら、一体どこから屋敷内に侵入して――)
クリフは思考しながら、愛馬を呼ぶため指笛を吹く。
それは屋敷の周辺で次々に上がり、騎士たちのうち一人の馬が戻って来た。
「皇女殿下を頼む!」
「はっ」
部下の一人が暗闇の中、馬を駆り疾走する。
今からなら、運が良ければ皇女を連れ去った馬車に追いつけるだろう。
「………………」
クリフは屋敷の周囲に散って警戒していた部下が集うのを待って、現状を冷静に確認する。
(屋外から警備網を突破した事実はない。内部の間者に裏口から招き入れられたか……?)
しかしそれも、今夜は警戒に当たっていたはずだ。
そうこうしているうちに、馬が戻り始める。
「鳩を持ってこい」
クリフの指示を予め予想していたように、部下の一人が一対の鳥籠を出す。
その内側に収められた二羽の鳩の足輪に、その場で走り書きした紙片を詰め込んで、クリフは空に放った。
月光の明かりだけで夜間も空を滑るように飛ぶ鳩は、それぞれ同じ方向を目指して、互いに競うように王都へと向かって行く。
「王都へ救援を頼んだ。一人はここに残り状況を説明しろ。あとの残りは――――俺に続け」
そうしてようやく戻って来た愛馬の手綱を取ると、騎士クリフは自身の主を救出すべく馬を駆った。




