第23話 地方への招待
「あのね、ミリウス。相談したいことがあるのだけど――」
「?」
いつもと変わらぬある日の朝食。
シルヴィアは彩り豊かなテーブルを前に、ミリウスを見上げると、ある話を切り出した。
「今度、ハズウェル公爵のお屋敷に招待を受けたのだけど……行ってきてもいいかしら?」
「ハズウェル公爵?」
シルヴィアが初めて告げる名前だったからだろう。
彼は食事の手を止めて聞き返す。
「公爵とは以前から手紙のやり取りをしていたの。それでつい先日、ぜひ一度領内の屋敷に招待したいと誘われて……」
公爵はシルヴィアとは親子以上に年の離れた人物だが、お茶に目がなく、他国の文化・工芸にも造詣が深い人物だ。
そんな公爵と手紙のやり取りをするうちに、『ぜひ自慢の茶を馳走したい』『長年の蒐集品を見て欲しい』と、屋敷に招待される流れになったのだ。
「もうすぐお孫さんの誕生日だから、そのパーティーにも出てほしいって」
「ハズウェル公爵……か」
ミリウスは顎に手を当てて考え込む。
「公爵なら問題はないが……。領地までは距離があるだろう? どうするつもりだ?」
「せっかくだからこの機会に、道中ほかの領地も巡りながら挨拶していくつもりよ」
なにせ王国に嫁いでから初めての遠出なのだ。
少しでも多くの貴族と顔を合わせ、今後の交流の接点を持っておきたい。
「そこまで考えているのなら止めはしないが……」
「が?」
「あなたがいなくなると……寂しくなるな」
「!」
「毎日こうして朝食を共にする日々が、当たり前のようになっていたから――」
ミリウスは、まるでその先の一人での朝食を想像するように、悲しげにそっと目を伏せた。
「大丈夫よ! すぐに帰ってくるわ……!」
「そうだと嬉しいが…………」
ミリウスは苦笑する。
そして、ふと思いついたように続きを告げた。
「シルヴィ。もし公爵さえ構わなければ、俺も同行していいだろうか?」
「ミリウスも……?」
仕事はいいの?と、案じるように上目遣いで見上げれば――。
「ああ、しばらく先は来賓の予定もないし、内務中心である程度の都合はつく。 数日程度なら問題ない」
そうしてミリウスは、自分も地方を見て回りたかったのだとそう言った。
「それじゃあ一緒に行きましょう!」
願ってもない幸運に、シルヴィアの心は浮き立つ。
ミリウスと一緒の初めての旅行だ。
「さっそく公爵に手紙を書くわね!」
朝食もそこそこに、シルヴィアは朝食室を駆け出した。




