第54話 エミリーふたたび
俺達とピピは貴族街にあるミレーヌ伯爵の屋敷へと向かっていた。
エミリエルお嬢様に一緒に冒険してもらう為なんだけど、あの子一応伯爵令嬢なんだよな。あまり危険な事はさせたくはないけど、ピピの依頼も何とかしてやりたいし。エミリエルお嬢様は話を聞いてくれるかな。
屋敷に到着して門番の人に呼び止められた。
「そこのお前たち、止まれ。身分証を見せてもらおうか」
「あ、はい」
俺は身分証を見せる、冒険者ギルドのギルドカードだ。Fランクだけど。
「ふむ、冒険者か。・・・用向きは何だ」
「実はエミリエルお嬢様にお会いしたいのですが」
「何、エミリエル様に?、約束はしているのか」
「いえ、約束はしていません」
「それならダメだ、エミリエル様はお忙しい方だからな」
やはり、ダメだったか。まあ、身分が違いすぎるからな。片や一冒険者、相手は伯爵令嬢、そう簡単にはいかないか。
「そうですか、どうしましょうルビーさん」
「伝言ぐらいは頼めないのかい」
「伝言か・・・それぐらいならば聞いてやる」
「なら、エミリエルお嬢様に伝えておくれ、エミリーって知り合いに冒険者ギルドまで来ておくれって、用件はザンジバル王国までの同行依頼だよ」
「・・・わかった、エミリエル様に伝えておく、さあ、用が済んだら戻れ、こっちも忙しい」
「あいよ、みんな行くよ」
やはりエミリエルお嬢様には会えなかったか。まあ普通に考えて伯爵令嬢にそう簡単に会えるわけないよな。
俺達は貴族街を後にして、商店街までやって来た。冒険準備の為に色々買わないと。まずは回復薬を30個程買って、万が一の為に毒消しの解毒薬を5個、パンや干し肉、水の入った皮袋の水筒等の食料二週間分。まずはこんな所か、それぞれの道具袋に入れる。あとはあれだな万が一の時の為にあれが必要だ。
「すいません皆さん、魔道具屋に行きたいのですが」
「魔道具屋? ジローさん、何を買うんだい」
「巻物ですよ」
「スクロール? 誰でも簡単に魔法が使えるっていうあれかい」
「ええ、それでは行ってきます」
「あたい等は冒険者ギルドへ戻っているよ」
「はい、それじゃあまた後で」
俺は一人で魔道具屋へ入る。雰囲気があるお店だ。訳の分からない物がいっぱいある。
「いらっしゃい、何かお探しで」
魔女みたいなお婆さんが店番をしていた、優しそうなお婆さんだ。
「すいません、魔法のスクロールを探しているのですが」
「スクロールと言っても色々あるよ、使用目的は何ですか?」
「帰還呪文が封じられたリターンの巻物を探しているのですが、ありますか」
「リターンのスクロールかい、ああ、あるよ・・・え~と、何処にしまったかいねえ」
魔道具屋のお婆さんは、店の中をあちこち捜し回り、目的の物を探し、商品棚を漁っている。
「お幾らぐらいするものなんですか?」
「そうだねえ・・・物によるけど大体金貨1枚ぐらいするよ、・・・あったあった、これだよ」
「金貨1枚ですか、やはりそれぐらいするものなんですね」
「はいよ、これがリターンの巻物だよ、値段は・・・そうだねえ・・・金貨1枚でいいよ」
魔法のスクロールは羊皮紙でできた巻物で、蝋印で封印されたマジックアイテムだ。よーし、目的の物が見つかったようだ。
「わかりました、買います、はい、これで」
俺は金貨1枚を渡して魔法のスクロールを買った。バックパックに入れてこれで準備よし。
「ありがとうございました、また何かありましたら来ます」
「はいよ、ありがとうね、気を付けて行っておいで」
魔道具屋を出て冒険者ギルドへ向けて歩き出した。良かった、欲しい物が買えて。
「・・・おわった?」
「うお!?・・・ピピ、いつの間に、もしかしてずっと一緒にいたのかい」
「・・・うん」
「そうか、気付かなかった、俺と一緒にいても面白くないだろ、ルビーさん達と行けばよかったのに」
「・・・ジロー・・・いっしょに・・・いく」
「そうかい、まあピピの自由だからね」
「・・・うん」
俺とピピは冒険者ギルドへ向かった、もうそろそろお昼ご飯の時だ。冒険者ギルドへ戻るとみんなテーブルに着いて待っていてくれていた。
「お帰りジローさん、買い物は終わったかい」
「はい、いい物が買えましたよ」
「あ~お腹ペコペコ、早くお昼にしよ」
サーシャはお腹を擦り、食事を促した。
「そうだねえ、すいませ~んAランチ4つとフルーツの盛り合わせをおくれ~」
「は~い、ただいま~」
俺達はお昼を食べた、ここのギルドの酒場の飯もうまいな、肉が多めに入っている。まさしく冒険者向けの食事って感じだ、ピピは相変わらずさくらんぼみたいな果物に噛り付いていた。
そうして食後まったりと過ごしていると、元気な女の子の声が聞こえてきた。
「来てあげたわよ!」
エミリーだ、来てくれたみたいだ。息を弾ませながらこちらへと歩いて来る。もしかして急いできたのか、そんなにエミリーとして活動する事が気に入っているのか。
「私に用があるって聞いて来たけど、何」
「まさか本当に来るとは思ってなかったよ、え~と、何から話そうかねえ」
折角来てくれたんだ、ちゃんと説明しないとな。
「冒険者としての依頼でザンジバル王国まで行く事になったんですが、同行してもらおうと思いまして」
「いいわよ」
「え、そんな簡単に決めていいんですか」
「ただし、こっちにも条件があるわ」
「条件?」
「ランディウスと言う殿方を探して欲しいの」
「はあ、ランディウスさんですか」
人捜しの条件か、何やら大変そうだな。一日で終わる仕事だといいのだが。
エミリーにルビーさんが捜し人の事を聞いた。
「そいつはこの街にいるのかい?」
「ええ、いるわ。絶対に」
「そうかい、じゃあ捜そうじゃないか、そのランディウスって人を」
「それならこっちも協力してあげる」
おや、どうやら協力を取り付けられそうだぞ。
「何処にいるか見当は付いているんですか?」
「解らないから頼んでいるんじゃない」
「そうですか」
どうやらエミリーお嬢さんを冒険に連れて行くにはランディウスという人を探さないといけないみたいだ。この街に居る様だけど、さて、上手く見つけられるかな。皆で手分けして探すしかないようだぞ。
おじさんは人探しは得意じゃないけどね




