第53話 会議という名のお茶会
次の日の朝、冒険者ギルドの酒場で俺達とピピはコーヒーを飲んでいた。ピピはさくらんぼみたいな果物に噛り付いている、好きだな、さくらんぼ。
ルビーさんがみんなに話しがあるみたいだ。
「さて、冒険準備の前に会議を開くよ、あたい等の今後の行動を決めないとねえ」
「会議、ですか」
「まあ、コーヒーを飲みながらだけどね」
「それはいいんですけど、ピピの依頼は早い方がいい様な気がしますけど」
俺の意見にサーシャがコーヒーを飲みながら答えた。
「目的地まで全速力で行って、いざモンスター退治って時にへとへとになるのは三流冒険者よ、ジロー」
「そうなんですか、いや、よく考えれば確かにそうですね、現地へ行くまでで体力を使い切るのは良くないですね」
ルビーさんはピピに向き直り、優しく言葉を掛けた。
「ピピには悪いけど今回の依頼はゆっくり行く事にするよ、いいねピピ」
「・・・わかった・・・ようせいのみんなはかくれているとおもう・・・」
「じゃあそれを信じるよ、で、妖精の森なんだけどね、あそこは霧の森に囲まれているのさ、それに色々と面倒でね」
「霧の森ですか、確かに面倒そうですね」
「ああ、いつも霧に覆われているから方向感覚が狂ってくるんだよ」
そこまで聞いて、サーシャが何やら鞄をごそごそと漁りだした。
「そこでこの魔道具の出番ってわけ、これはフォグランプって言って霧の中でも明るく照らしてくれるのよ」
「フォグランプがあれば霧の問題は解決だね」
なるほど、便利なアイテムがある、って訳なんだな。しかし、面倒というのは何かな?
「他に何が面倒なんですか」
「妖精の森はね、この国の南にある隣国、ザンジバル王国にあるのさ」
「つまり、国境を越える訳ですか、なんだか遠そうですね」
サーシャが説明しだした。
「ルートにもよるのよ、ザンジバル王国へ入るルートは二つ、ジム山を越える道とライン川に掛かるライン大橋を渡る道の二通りね」
ここでルビーさんがサーシャに聞いた。
「サーシャはどっちにするんだい」
「当然ライン大橋ルートよ、ジム山は確かに一直線にザンジバル王国へ行けるけど、あそこには山賊の拠点がいくつもあって無法地帯なんだもの、わざわざ危険を冒したくないわ」
話を聞いて、ファンナが質問した。
「話を聞くとライン大橋の一択しかないように感じますけど」
ファンナの質問にルビーさんはテーブルに肘を付いて答えた。
「ところがねえ、ライン大橋にも問題はあるんだよ、サーシャ、説明してやって」
「なんで私、ルビーの方が詳しいじゃない」
「たまにはベテラン冒険者らしく後輩にいいところ見せな」
「何よそれ、え~と、何処から話そうかしら、二人ともザンジバル王国の情勢とかわかる」
「噂話程度なら」
「俺はまったく知りません」
「あそこの情勢はややこしいのよね、私エルフだから人間の国の事なんて興味ないんだけど」
「ザンジバル王国が何か問題なんですか」
「この国、バーミンカム王国とザンジバル王国って昔仲が悪かったのよ」
「今はどうなんですか」
「今は仲がいいみたいよ、それで、え~と、ルビー、パス」
「あんたねえ、まあサーシャだしいいか、でね、ザンジバル王国の王様が病で倒れたんだよ、噂じゃもう長くないんだそうだよ、3年前だったかねえ」
「国王が病に臥せっているわけですね」
「ああ、それで王様には二人のお子さんがいるのさ、フレデリック王子とローゼンシル姫って言うね」
「フレデリック王子とローゼンシル姫ですね」
確認するように指折り数える。
「その二人は仲はそんなに悪くないんだけどね、取り巻きの連中がねえ・・・」
「取り巻きですか」
「物凄ーく仲が悪いのよ、え~と、何だっけルビー」
「サンドリア家とドコス家だよ、フレデリック王子は王位継承権第1位でね、サンドリア家が後ろ立てになっているのさ、で、ローゼンシル姫は王位継承権第2位でね、こっちにはドコス家が付いているんだよ」
「サンドリア家とドコス家ですか」
「2家ともデカい家柄でね、周りの貴族達を巻き込んで二大勢力になっちまったのさ」
ふむ、貴族同士のいざこざがある、と言うわけか。
「貴族どうしの権力争いですか、今の所ライン大橋とは関係なさそうですが」
「話はここからきな臭くなるよ、フレデリック王子が何者かによって暗殺されちまったのさ」
「暗殺ですか、穏やかじゃありませんね」
「しかも都合のいい事に国王が万が一の時の為に書いた手紙が見つかってね、ローゼンシル姫と結婚した旦那が玉座に座るって書いてあったらしいんだよ」
「ええ? 普通はローゼンシル姫が女王になるのでは、王位継承権第2位ですよね」
「そこなんだよ、都合が良過ぎると思わないかい」
「確かに」
「それにローゼンシル姫と恋仲にあるのはラッセルって言う男でね、これがまたドコス家の人間なんだよ」
「ドコス家に権力が集中するってわけなのよ、どお、きな臭いでしょ」
「そうですねえ」
「当然、サンドリア家はフレデリック王子暗殺はドコス家の仕業だーって騒いでいる訳よ」
「ドコス家は知らぬ存ぜぬを通しているけどね、それでサンドリア家とドコス家の確執があって、今は物凄く仲が悪いんだよ、正しく内乱に等しい状態って事さ」
「内乱に等しい状態、ですか。内乱じゃないだけマシな気がしますけど」
「そんな訳で、今ライン大橋の検問は物凄くシビアになっているんだよ」
「ジム山は危険、ライン大橋は検問が厳しい、確かに面倒ですね、ザンジバル王国に行くのも」
「そんな訳で冒険準備の買い物の他にライン大橋を渡る手筈を整えないといけないねえ」
「ライン大橋を渡る手筈ですか、・・・検問を突破すればいいんですよね」
「ジローさん、何かあるのかい」
「ミレーヌ伯爵に頼み込んで通行証を出してもらうってのはどうでしょう」
「う~ん、たった一回依頼を受けただけの間柄じゃあねえ」
「やっぱり駄目でしょうか」
「それに森に入るなら斥侯でもある盗賊を雇わないと危険だよ」
「そうでした、どうしましょうか」
「う~ん」
ライン大橋を渡る為の通行証に盗賊の存在か、・・・まてよ。
「いるじゃないか、一人」
「そうよ、いるわね一人」
「え? 誰ですか」
「「「 エミリーお嬢さんが 」」」
そうだ、エミリエルお嬢様に頼んでみよう、ダメでもともとだ。話だけでも聞いてもらおう。
おじさんあの子ちょっと苦手だけどね




