第50話 母親というもの
俺達は、マゼランの都の冒険者ギルドの酒場で打ち上げをする事になった。今回の依頼は無事に達成できたので良かったと言った所か、いい酒が飲めそうだ。
サーシャが蜂蜜酒を飲みながら頬杖を付いた。
「結局さぁ、今回の依頼は何だったのかしら」
「なんだいサーシャ、急に深刻な顔しちゃって、何が気に入らないんだい」
「う~ん、なんて言うか、上手い事話が行き過ぎているって言うか」
「あ、それは俺も感じていました、今回の依頼は、エミリエルお嬢様に手柄を立てさせる為にルビーさんに話が来た感じですよね」
ルビーさんは腕を組み、目を瞑った。
「うーん、まあ、蒼水晶の指輪を盗まれたのは本当だったと思うけどねえ、それ以外の事は確かに情報が手に入り易かった様な気がするねえ」
「でしょ~、なんか途中から誰かに後を付けられてた様に感じたし」
そうなのか、俺は気付かなかった。サーシャは野伏としての素質がある訳か。
「これは俺の予測ですけど、ミレーヌ伯爵が裏で動いていたんじゃないですかねえ」
「やっぱりジローさんもそう思ったかい、あたいもなんか上手く行き過ぎている気がするんだよねえ」
ルビーさんも何か引っ掛かっていたみたいだ。そこへファンナがこんな事を言った。
「すみません、ちょっといいですか」
「どうしたんだい、ファンナ」
「今回の依頼ですけど、私、貴族の事は解りませんが、今回の場合親子関係じゃないかと思うんですけど」
親子関係の問題か、この場合ミレーヌ伯爵とエミリエルお嬢様だよな。
「どうしてそう思うんだい?」
「はい、これは私の事なんですけど、昔、近所の悪ガキと一緒にいたずらした事があったんですけど、その日に限ってお母さんにばれて、ものすごく怒られた事があったんですよ」
「つまり」
「たぶんですけど、エミリエルさんがエミリーだって事は母親であるミレーヌ伯爵にはとっくにばれているんじゃないかと思うんです。母親って子供が思っている以上に子供の事を分かっていると思うんですよ」
ファンナの予想を聞いて、ルビーさんが更に先を読んだ。
「なるほどねえ、伯爵のことだから自分の子飼いの私兵の一人ぐらい裏で動かしていたかもねえ」
サーシャも気になっていたであろう事を口に出した。
「そう言えば途中から誰かに付けられていた感じだったのよね、あれって伯爵の寄越した密偵だったのかしら・・・」
「たぶんそうなんじゃないですか」
「それで、エミリエルさんにこれ以上悪さして欲しくない、って言う母親としての躾の為にあえて指輪の問題を娘に任せて、悪さするとこうなるぞ! って言う見本を見せる為に今回の依頼をしてきたと思うんですよ」
「なるほど、娘に盗賊を辞めて貰いたかったと言う事ですね、納得です」
確かに一理あるな、お転婆娘を改心させる為だったと思えば今回の依頼がすんなりいったのも納得だ。
葡萄酒に口を付け、ルビーさんがぽつりと呟いた。
「まったく、貴族ってのも大変だねえ、娘の為にそこまでやるかねえ」
サーシャも蜂蜜酒を飲みながら、自分なりの見解を述べた。
「蒼水晶の指輪を盗まれたのは本当だったとしても、そこから先はミレーヌ伯爵の手の上で踊らされてたってワケよね、まあ、報酬を貰ったからいいんだけどね」
ここで、ルビーさんは話を切り替えて、俺達を労った。
「ま、それはそうと、何はともあれ依頼達成だよ、みんなお疲れ、飲もうじゃないか」
「それもそうね、かんぱ~い」
「「「 かんぱ~い 」」」
こうして、今回の依頼は無事解決した。結局母親には敵わないと言う事だった訳だ。
お酒もうまい。いい酒を飲んで夜も更けていくのだった。
おじさんもおふくろには頭が上がらないよ




