第49話 蒼水晶の指輪
俺達はマゼランの都の端っこにある倉庫街へとやって来た。
ここに来るまで歩いて来たので結構歩いた、少し歩き疲れたかもしれない。倉庫街は入り組んでいてまるでダンジョンを歩いている様だ。5番倉庫を探すのも一苦労だ、貸し倉庫はこの辺りの筈なのだが。
「ジロー」
「何ですか、サーシャ」
サーシャの酔いも醒めてきた様だ。
「誰かの気配がする」
「倉庫で働いている方達なのでは」
「う~ん、そうなのかな~、嫌な気配ではないから別にいいんだけどね」
「一応警戒しときましょうか」
俺は皆に警戒を促した。
「そうだねえ、ここは入り組んでいるからねえ」
「ファンナ、エミリーさんを護衛して下さい」
「わかりました」
「エミリーさん、くれぐれも前に出ないで下さい」
「わかってるわよ」
「ギャリソンさんもエミリーさんの護衛を」
「畏まりました」
「ルビーさんとサーシャは後衛、サーシャ、しんがりを頼む」
「あいよ」
「おっけい」
よし、この隊列で進んで行こう。俺が前衛だけど一人しかいないから慎重に進まなくては。しばらく歩いて5番倉庫を探す、この辺りの筈なのだが。あ、あった、5番倉庫だ、意外と大きい倉庫だな、情報によるとスカーレットさんの部下がこの倉庫に居る筈なんだけど・・・一応警戒しながら倉庫に入ろう。
5番倉庫の扉を開けて倉庫の中を確認する、・・・何もない・・・
隅の方に木箱が2個あるだけだ、人が隠れるにはちょうどいい大きさだな。
「すみません! どなたかいらっしゃいませんか!」
一応声を掛けてみた、・・・返事はない、そりゃそうか、隠れているんだもんな。
「俺達は伯爵の依頼を受けてやって来た冒険者ですけど!」
「返事はないみたいだねえ、いくよサーシャ」
「はいよ」
「どうするんですか、ルビーさん」
「ファイアーストームを使うのさ」
「だ、ダメですよルビーさん、ここは貸し倉庫、持ち主に怒られますよ」
「まどろっこしいねえ」
「俺が中に入ります、サーシャ、警戒よろしく」
「オッケー」
倉庫の中に俺一人で入って行く、緊張してきた、警戒は怠らない。
ゆっくりと歩いて中を進んで行く、すると突然上の方から物音がした。
「あまい!」
俺は咄嗟に鉄の盾を上に掲げて構える。
カキンッ
シールドが何かを防いだ、足元を見るとダガーが落ちていた。
ダガーを投擲してきやがった、話し合う余地無しか。
「サーシャ! 足を狙って!」
「・・・そこ! 狙ったわよ!」
サーシャの放った矢が、賊に当たる。相変わらずいい腕だ。
「うぐっ!?」
倉庫の天井にある梁から何者かが落ちてきた。見た所盗賊風の男だ。
俺はバックパックからロープを出して男の手足を縛る、これで身動きできまい。
「さてと、これで話ぐらいは出来そうですね」
「いてて、ちくしょう、ドジっちまったぜ」
「話、出来ますか」
「ああ、もう逃げも隠れもしねえよ、あ~あ、牢屋が待ってるなぁ」
「と、言う事は、あなたが蒼水晶の指輪を盗んだんですね」
「ああ、そうだよ、まったく」
ルビーさんが腰に手をあてて、盗賊に質問した。
「何でそんな事をしたんだい、伯爵の物を盗んでこの街でやっていける訳ないだろう」
「行き掛けの駄賃ってやつだよお嬢さん、俺はこの街で色々やりすぎてな、盗賊ギルドを除名されたのさ」
サーシャも一言賊に言った。
「除名されたのなら足を洗えばよかったじゃん」
「エルフの嬢ちゃん、俺はこれでもちったあ名の知れた盗賊でな、自分のチームを作ろうと思ったんだよ」
ファンナも賊に一言言った。
「それで蒼水晶の指輪を盗めば宣伝になると思った訳ですか、短絡的過ぎますよ」
「ああ、まさかそこまで価値があるとは思わなかったんだよ、お嬢ちゃん」
「蒼水晶の指輪は持っているのですか」
「ああ、俺のポケットの中だよ」
盗賊の男のポケットの中を探す、・・・あった! 蒼水晶の指輪だ。俺は指輪を取り出して、自分のポケットに仕舞う。
「これで依頼は完了ですね」
「こいつはどーするの」
「役人に突き出すしかないでしょうね」
盗賊の男を肩に担いで倉庫を出て行く。こいつを衛兵に突き出そう。
そのまま一般街へ向けて歩いているとエミリーが盗賊の男に話かけた。お嬢様は勇気があるなあ、一体何事を話すのだろう?
「ねえ、あなた、盗賊ギルドのメンバーだったのよね」
「ん? ああ、そうだが」
「そのメンバーの中にランディウスって言う殿方はいるかしら」
「はあ? ランディウスねえ、・・・知らねえなあ」
「そう・・・ならいいわ」
何を聞いているんだ、まあいいや。
俺達は一般街までやって来た、そこで衛兵に事の顛末を話して盗賊の男を引き渡した。後は蒼水晶の指輪をミレーヌ伯爵に返して依頼完了だ。
「どうする、この時間だと伯爵は領主館じゃない」
「そうだねえ、このまま領主館にいこうかねぇ」
と、いう事で俺達は貴族街の中にある領主館へ行く事になった。蒼水晶の指輪も取り戻したし、後はミレーヌ伯爵に返すだけだ。歩いて領主館の前まで来た、衛兵に声を掛ける。
「すいません、ミレーヌ伯爵に会いたいのですが」
「身分証は?」
「これです」
俺はギルドカードを見せた。
「ふむ、Fランクか・・・まあいいだろう。伯爵様は2階の奥の部屋だ、粗相の無い様にしてくれよ」
「はい、わかりました」
俺達は領主館の中に入る、大きい建物だ、色んな部屋があるけど俺達の目的はミレーヌ伯爵のいる一番奥の部屋だ。2階に上がり一番奥の部屋の前まで来た、扉をノックして返事を待つ。
「どうぞ、お入りなさい」
「失礼致します」
中に入るとミレーヌ伯爵ともう一人フードを目深に被った男がいた。
ミレーヌ伯爵は相変わらず美人だ、フードの男は今まで会話をしていたのか、すぐに退出する。
「それでは伯爵様、私はこれで」
「ええ、ご苦労様」
フードの男は執務室を出て行った。俺達と入れ替わる様に通り過ぎる時、一瞬だけ顔が見えた。なかなかのイケメンだった、歩き方もどことなく油断しない感じだった。おっと、本題に入らないと。
「ミレーヌ伯爵様、蒼水晶の指輪を見つけました」
「あら、早いわね、もう見つけてくれたの」
「はい、こちらになります、ご確認ください」
「・・・確かに蒼水晶の指輪ですわ、間違いなく本物ですね」
「それは良かった」
「まさか一日で見つけてくれるとは思ってもいませんでした、これは報酬に色を付けないといけませんね」
「それは有難いです、しかしお嬢様あっての仕事でした、我々はお手伝いをしたに過ぎません」
「まあ、そうなの、それにしてもエミリエル、何ですかその恰好は」
「変装ですわ、お母様」
「ギャリソン、エミリエルは無茶な事はしていないでしょうね」
「はい、奥様。この方達がエミリエルお嬢様をしっかりと護衛しておりましたから」
「そう、ならば良いのですが、それではこの依頼は完了という事ですね」
「ふう~、ようやく終わったのね」
「サーシャ、品がないよ」
「なによ、いいじゃない」
「うふふ、それでは報酬として金貨20枚程でいかがかしら」
「「「 金貨!? 」」」
流石伯爵様、本物の大貴族だ、まさか200万Gも貰えるとは思ってもみなかった。
「それでは報酬です、受け取りなさい」
「はい、ありがとうございます伯爵様」
俺達は報酬を受け取った。これが金貨20枚。手が震える。
「それでは我々はこれで失礼いたします」
「はい、ご苦労様でした、エミリエル、話があります、あなたは残りなさい」
「はい、・・・お母様」
エミリー達とはここでお別れか、まあ、伯爵様が娘に話しがあると仰っていたし、俺達とはここまでだな。
「お嬢様、ギャリソンさん、お世話になりました」
「気を付けて帰りなさいよね」
「皆様、お嬢様の護衛の任、お疲れ様でした」
挨拶も済ませ、俺達は執務室を退出した。そのまま領主館を出て一般街まで歩いて行く。
冒険者ギルドの酒場に戻ってきた。報酬をみんなで山分けだ。
「いや~、今回は割と楽な依頼だったねえ、はい、みんな、一人金貨5枚だよ」
「やった!報酬だ、何買おうかな~」
「わ、私、金貨は初めて見ました、凄くドキドキしてます」
「50万ゴルドですか。凄いですね。俺も手が震えてますよ」
こんな大金、大切に使わないとな。俺達はこの街の冒険者ギルドの酒場で打ち上げをすることにした。それにしても今回の依頼はどうなんだろうか。まあ仕事は仕事なんだが。どうにも・・・な。
おじさん考え過ぎかな




