第48話 情報収集
俺達は一般街を歩いている、目指しているのはスラム街なのだが、少し問題がある。
問題と言うか心配事なのだが、ルビーさんとサーシャ、それにエミリーさんが少し酔っているという事だ。実を言うと俺も少し酔っている、さっきまでウッドベルという店で食べた仔羊のソテーにワインが入っていた様なのだ。
このままスラム街のサムソンって酒場に行っても大丈夫なんだろうか。少し心配だ。うまいこと情報を聞き出せるのかなあ。こんな酔った状態で。
スラム街には何の問題もなく着いたが、問題はここからだ。スラム街という事は治安があまりよろしくないだろう。言っちゃあなんだがルビーさんもサーシャも結構イイ女だからなあ、見た目がイイとゆうか色っぽいと言うか何と言うか。
「ヒュ~、イイケツしてんなねーちゃん、俺達といい事しないか~い」
「「 邪魔だよ! おどき! 」」
「そんなつれない事言うなよ、な~いいだろ~」
ほらね、早速絡まれた。どうしようかな、一応パーティーだからここは俺が何とかしないといけないのかな。やだなー。こわいなー。ナイフとか隠し持ってたらどうしよう。
「おいおい、無視すんなよ、俺らと遊ぼうぜ~」
「・・・燃え盛る炎よ、・・・ファイアー・・・」
「え? 何? 聞こえな~い」
「・・・ストー」
「わーー!! ルビーさんダメーー!! ここは街中ですよ!」
「チッ」
「舌打ちする意味がわかりません、酔ってます?、酔ってますよねルビーさん」
ルビーさんは攻撃魔法を叩き込もうとしていた、あぶないところだった。
「サーシャ、あんた最近弓の腕が落ちたんじゃないのかい」
「なにお~、じゃあこいつらでためしてやる~・・・えいっ!」
今度はサーシャが攻撃的になっている、大丈夫かな。
「うおっ! あぶねーな! 何しやがる!」
「次は外さないよ~・・・それっ!」
「だからあぶねーて言ってんだろ! わかった、わかったよもうっ・・・行こうぜお前ら」
「ま、待てよ~置いてくなよ~」
やれやれ、何とかなったか。あー怖かった。俺はこういうの苦手なんだよな。
「ねえ、おっさん」
「何ですか、エミリーさん」
「こういう時はおっさんの出番なんじゃないの」
「す、すいません。ビビりな物で・・・」
「・・・情けな・・・これだから冒険者って言うのは・・・やっぱりあの人は強いのね・・・」
「あの人?」
「な、何でもないわよ、ほら、行くわよ」
「は、はい」
何とか暴漢たちを退けて俺達はスラム街を進む。やっぱり都会はこえーな。
スラム街の酒場が集まっている繁華街までやって来た。この辺りじゃないかな。お、あったあった、サムソンだ。酒場と言うよりボロい一軒家って感じだ。一応看板みたいなのがあるから間違いない、ここだ。入り口に見張りみたいなのがいる。一応声をかけてみよう。
「すいません、この店はサムソンで間違いないでしょうか」
「・・・ああ、サムソンだ・・・見た所冒険者って感じだな、揉め事は無しだぜ、いいな」
ルビーさんは不敵な笑みを浮かべた。
「それは相手しだいだねえ、いくよみんな」
今回もルビーさんに任せてもいいかな。酔いも少し醒めてきたみたいだし。
店の中に入ると外のボロさとは変わって意外と小綺麗にしている。カウンター席に一人、奥のテーブル席に四人、盗賊っぽいいかにもな客がいる。店のマスターに声を掛ける。
「おやっさん、ちょっといいかい」
「ん? なんだ」
「伯爵様に喧嘩を売ってこの街でやっていけると思っている間抜けを探しているんだけど」
「・・・ご注文は・・・」
「・・・エールはあるかい・・・」
「・・・安いのしかないぜ・・・」
「それでいい」
「ちょっと待ってな・・・」
マスターは奥の部屋に向かって行った。どうやら通じた様だ。
ルビーさんは口笛を吹いた。
「流石ジローさん、やるねえ」
「え? え? 今のどういう事ですか?」
「いいかいファンナ、ジローさんはさっきこう言ったのさ、伯爵から蒼水晶の指輪を盗んだヤツがこの街でこれ以上仕事ができる訳無いだろ、最近この街を出て行こうとしている盗賊はいないか? って聞いたのさ」
「え? そうなんですか」
「そして店のマスターはこう返した、安いのしかない、つまり下っ端しか知らないって言ったんだよ」
「そ、そんなやり取りが今のであったんですね、私ついていけないです」
「慣れだよ、慣れ、ファンナもじきに分かる様になるさ」
しばらくして奥の部屋からマスターともう一人、盗賊風の女が出てきた。
「・・・待たせたな、こいつが話を聞く」
「私はスカーレット、ご覧の通り盗賊さ、一応頭をやっていたんだけど・・・話を聞くかい」
スカーレットと名乗った女性はこれまたえらいべっぴんさんだ、露出度の高い服を上手に着こなしている。セミロングの髪型で胸もデカイ。つい目が胸とか足にいってしまう。
ここはルビーさんが対応した。
「ああ、聞こうじゃないか、あたいに話してごらんよ、悪いようにはならない様に一応努力するよ」
「実はね、私の部下が勝手にしでかした事なんだよ」
「と、言うと」
「私は今までお勤めをしててね、ついこの間出てきたばかりなんだよ」
「それで」
「つまり私が牢屋に入ってる間に私の部下が蒼水晶の指輪を借りたらしいんだ」
「あんたの部下に言やあいいじゃないか、今すぐ返してこいって」
「もう無理なんだよ、私と部下、いや、もう部下でも何でもないけどね」
「縁を切ったのかい」
「ああ、伯爵に喧嘩を売るつもりはないからね」
俺も少し聞いてみた。
「ちょっといいですか、スカーレットさん、あなたが今まで使っていたアジトを教えてほしいのですが」
「ん? ああ、倉庫街にある貸し倉庫だよ、5番倉庫だ」
なるほど、そこに蒼水晶の指輪を盗んだ賊が隠れている可能性があるな。
「5番倉庫ですね、どうもありがとうございます、皆さん、行きましょう、5番倉庫です」
「あいよ」
サムソンの店を出て行こうとしたその時、スカーレットさんに呼び止められた。
「ちょいとお待ちよ」
「何ですか?」
いつの間にかスカーレットさんは俺に体をピタリと密着させてきた。
「私、色町にある愛の巣って店ではたらいているからさ、良かったら来てよ」
「いくよ! ジローさん!」
「はい、ただいま」
「うふふ、なんだい、尻に敷かれているのかい、私なら優しくするよ」
「いくわよ! ジロー!」
「はい、ただいま」
「うふふ、来てくれたらホントにサービスするよ」
「いきますよ! ジローさん!」
「はい、ただいま」
「あはは、冗談抜きにサービスするよ」
「何してるのおっさん! 置いてくわよ!」
「はい、ただいま」
「・・・ジロー様、参りましょう・・・」
「・・・はい、ギャリソンさん・・・」
名残惜しいがここは我慢してサムソンの店を出た。ああ、ぬくもりが・・・
俺は紳士だから紳士のお店に行ってもいいんじゃなかろうか。
「ジローさん、あたい達は仕事でこの街に来てるんだからね」
「はい・・・」
釘を刺されてしまった。
次の目的地は倉庫街の5番倉庫だ、そこでスカーレットさんの元部下がどこにも行けずにいるはずだ。
蒼水晶の指輪もきっとそこにあるに違いない、すんなり事が運ぶとは思わないけど。
おじさん紳士だから色町には行かないよ・・・・・・ホントだってば・・・




