第47話 エミリエルお嬢様行動開始
俺達は今ミレーヌ伯爵の屋敷の外で待っている、エミリエルお嬢様とギャリソンさんは着替えてくるそうだ。
ルビーさんやサーシャ、ファンナが会話している。
「やっぱり伯爵の娘ともなるとよそ行き用の恰好をしなきゃいけないんだろうねえ」
「あら、そのままでも良かったのに、貴族ってのも大変ねえ」
「年頃の娘さんだからじゃないですか」
少し会話しながら待っていると二人が屋敷から出てきた。
「待たせたわね、さあ、行きましょう」
「皆様、お待たせしました」
ギャリソンさんは執事用の服に革の胸当てとレイピアを帯剣している。
それはいいんだけど、エミリエルお嬢様の恰好はどうなんだろう。髪をツインテールにしてショートパンツにニーソックス、へそ出しルックの革の胸当てを身に着けている。どこから見ても盗賊少女って感じだ、とても貴族の娘とは見えない。
「その恰好で行くんですか、エミリエルさん」
「そうよ、ああ、それから、この格好の時は私の事はエミリーと呼んで頂戴」
「エミリー?、何故ですか」
「この街で色々やるときはこの格好でエミリーで通ってるの、ギャリソンもいいわね」
「畏まりました、エミリー様」
この娘、もしかして意外とお転婆なのか。
「もしかして、その恰好でいつも街中をウロウロしていたのですか」
「そうよ、誰も私を貴族の娘とは思わないでしょ」
「そこまでして伯爵の娘だと知られたくない訳ですか」
「そう言う事、一応盗賊で通っているからね、さあ、行きましょ」
「それじゃあ行こうかねぇ」
俺達はミレーヌ伯爵の屋敷を後にして貴族街を出て行く。門番や検問をやっている衛兵達には顔パスで出ることができた。お嬢様はいつもこんな感じで街に繰り出しているのか。
どうやら衛兵にはバレている様だ。みんな付き合いがいいな。
貴族街を出て一般街までやって来た、人の多さは流石都会だ。酒場のたくさんある所まで歩いて来た、昼間だというのに酔っ払いが少ないがいる様だ。その中の一軒の酒場に入る。ここはルビーさんに任せた方がよさそうだ。
「じゃまするよマスター」
「いらっしゃい、何にする」
「ミルクを一杯」
「ミルク? なんだ、飲みに来たんじゃねえのかい」
「まだ仕事中でね、マスター、盗賊ギルドについて知っているヤツに心当たりあるかい」
「盗賊ギルド!? おいおい、勘弁してくれ、うちは真っ当な店だぜ」
「じゃあ知ってそうなヤツは」
「・・・はぁ~、そこの一番奥のテーブルにいる奴が情報屋だ、言っとくが揉め事はお断りだぜ」
「ありがとよ」
ルビーさんはミルクを飲み干すと情報屋がいると言う一番奥のテーブル席に近づいて、銅貨を一枚テーブルの上に置いた。
「情報を買いたいんだけどねえ」
「物による」
「盗賊ギルドの場所、またはギルドメンバー、もしくは知っているヤツ」
「高いぞ」
ルビーさんは銅貨を二枚置いた。
「うーん、思い出せそうにないな」
「がめるねえ」
ルビーさんはさらに二枚銅貨を置いた。
「思い出した、スラム街のサムソンって酒場が盗賊ギルドのメンバーと渡りを付けているそうだ」
「スラム街の酒場サムソンだね、ありがとよ」
ルビーさんに任せて良かった、すんなりと情報が手に入ってしまった。
「ファンナ、こうやって情報屋とやり取りするんだよ」
「凄いです、流石ルビーさん」
ファンナは感心したように、ルビーさんを見ていた。
「マスター、じゃましたね」
「今度は飲みに来てくれよ」
「ああ、仕事が上手く行けばね」
俺達は酒場を出た、ルビーさんが上手く情報屋から情報を聞き出して次の目的がはっきりしてきた。
「さて、お次はスラム街のサムソンって酒場だよ、行くよみんな」
エミリーとギャリソンさんはルビーさんの事を、高く評価しているようだ。
「ふ~ん、なかなかやるじゃない、冒険者ってのも」
「荒事無しで実にスマートでございましたな、エミリー様、これを機に盗賊なぞ辞めて冒険者など如何でございましょう」
「嫌よ、私は盗賊ギルドに入るの、もう決めてるんだから」
「どうしてそこまで盗賊ギルドに拘るのですか」
「おっさんには関係ないでしょ」
確かに関係ないけどさ。気になるよね。普通。
「さあ、行くよ」
出発、という時、サーシャがお腹を擦りながら聞いた。
「ねえルビー、そろそろお昼時じゃない」
「なんだいサーシャ、もう腹が減ったのかい」
「そうじゃなくて、ほら、あれ、ウッドベルの仔羊のソテー」
「おっと、そうだったねえ」
「どうしたんですか、お昼ご飯には少し早いようですが」
「ジローさん、ウッドベルって店は人気があってね、物凄く混むんだよ」
「早くしないと売り切れちゃうのよ」
「そうなのですか、それじゃあウッドベルに行きますか」
急な目的変更にも拘わらず、エミリーとギャリソンさんは余裕のある態度で言った。
「あら、ウッドベルを知っているなんていい趣味してるじゃない」
「奥様もよく好んで行かれますからな」
「もしかして、お高いのでしょうか、私持ち合わせがあまり多くなくて」
「大丈夫だよファンナ、あたいの奢りだよ」
「え、いいんですか」
「ああ、任せな」
「やった、ルビーの奢りだ」
「サーシャ、あんたは稼いでるだろ、自分の分は払いな」
「ケチ」
「それじゃあ行きましょ」
俺達は一般街の中にあるウッドベルという店に向かう事にした。
俺達は今ウッドベルという料理屋に来ている。店の外は割と普通の木造建築なのだが、店の中が凄く清潔感があって木のテーブルや椅子、カウンター席などオシャレな感じのする店だ。貴族のお客も来るそうなので一般席の他に貴族用の席も別の部屋にあるらしい。
「あたい等は一般席でいいよね」
「別に構わないわ、ね、ギャリソン」
「はい、エミリー様、わたしめは後ほど頂きますのでエミリー様の御傍で控えております」
「ギャリソン、それだと私が貴族だと言ってる様な物じゃない、一緒に食べましょ」
「ふむ、・・・よろしいのですか、エミリー様」
「そうして頂戴、その方がいいわ」
「畏まりました」
「じゃあ一般席にするよ」
俺達はそれぞれテーブルの席に着く、と、早速ウエイターが注文を聞きに来た。
「いらっしゃいませ。本日のメニューは仔羊のソテーにコーンスープ、野菜サラダ、アップルパイとなっております、如何致しますか?」
「それじゃあ、それを6人分おくれ」
「かしこまりました、食後のお飲み物は如何致しましょう」
「みんな、紅茶でいいかい」
「いいわよ」
「はい」
「お願いします」
「それでいいわ」
「結構です」
全員紅茶か、コーヒーの方がよかったのだがまあいいか。みんなと同じ物で一体感を感じるし。水を差す事もあるまい。紅茶もうまいだろうし。
「あ~楽しみ~、早く来ないかな~」
「ちょっとサーシャ、もうちょっと優雅に出来ないのかい」
「なによ、いいじゃない別に、気取ったってどうせ食べるんだし」
「そりゃあそうだけどさ、仮にも一応貴族のお嬢様と同じテーブルに着いてんだよ、あたい等冒険者だってテーブルマナーくらい出来ますってとこ見せなくちゃ」
「無理しちゃって、大体ルビー、あんたテーブルマナーなんて知ってるの」
「う、知らないけどさ」
「ほらご覧、いいルビー、こういう時下手に気取らなくていいのよ、ありのままで食事を楽しめばいいのよ」
「まさか、サーシャに言われるとはねえ、・・・それもそうか」
「そうよ、どうせ一般席なんだし、美味しく頂いたもん勝ちよ」
「それもそうだねえ、実はあたいも楽しみだったんだよ」
しばらくして、イイ匂いが漂ってきた。
「あ、早速いい匂いがしてきた」
ファンナも嬉しそうだ。
「ホントですね、私も楽しみです、こういうお店って来た事が無くて」
「エミリー様、流石にエミリー様にはテーブルマナーをして頂きますぞ」
「何よ、いいじゃないこういう時ぐらい」
「いけません、もうすぐ社交界デビューなのですよ、少しでも練習して頂きませんと」
「ギャリソンは堅いわね、わかったわよ」
サーシャが俺に聞いて来た。
「ジローはテーブルマナーとかどうなの?」
「勿論出来ませんよ、ナイフとフォークぐらいは使った事ありますけど」
「そうなんだ、私達ってスプーンでいつも食べてるのよね」
「まあ、食べられれば何でもいいんですけどね」
そうこう会話をしていると美味しそうな匂いをさせながら料理が運ばれて来た。全員の所に料理が置かれて美味しそうだ。
「それじゃあ」
「「「「 いただきます 」」」」
まずはパンを一口、うん、柔らかいパンだ。お次はコーンスープ、うん、うまい。暖かい食事はやっぱりおいしい。野菜サラダも新鮮でシャキシャキしている。
さあ、メインの仔羊のソテーと行きますか。ナイフで切り分けてフォークで肉を刺し口に運ぶ。
「う、うまい、これは美味しいですね」
「だろ、ここの仔羊のソテーは最高なんだよ」
「あ~幸せ~」
「本当に美味しいですね」
「ま、こんなもんよね」
「おいしゅうございますな」
確かにうまい、肉が柔らかいからフォークだけでも肉が切れる。ソースもいい感じの味だ。それにほんのりとお酒が入っているのか、洋酒の風味が少しある。しばらくして、お酒が少し入っている所為なのか、みんなの様子が少し変だ。
「あはは、うまいねえ~」
「私おかわりしちゃおっかな~」
「み、みなさん、どうしちゃったんですか」
「ファンナは平気なのかい」
「ええ、美味しい食事でしたけど、ジローさんは」
「俺も美味かったけど・・・」
「だからねぇ~、わたくしお母様に言ったのよ~、もう子供じゃないわ~って」
「さようでございますか、エミリー様もご苦労が人知れずおありにあったのでございますね」
「そう、そうなのよ~、だからストレス発散の為にこうしてたまに盗賊をやっているのよ~」
「心中お察しいたします、エミリー様」
これは、ちょっとマズイのでは、この後、盗賊ギルドの情報を聞きに行くのだが。
「あ~ルビ~、野菜サラダ残してる~、勿体無いから私が食べるね~」
「ちょいと待ちな~、今どさくさに紛れてあたいの肉持ってっただろ~、返しな~」
「ケチ~」
これはマズイぞ。ルビーさんとサーシャとエミリー様が酔っぱらっているかもしれない。
「あ~、食べた食べた~、ごちそうさまでした~、さあ~、盗賊ギルドにカチコミに行くよ~」
「おお~」
「ちょっと待って下さい、話が変わってます、情報を聞きに行くんですよね」
「あれ~、そうだっけ~」
「ちょっと、お願いしますよみなさん、解りました、少し休息しましょう」
「だ~いじょ~ぶだよ~ジロ~、早く仕事片付けて行こう~」
「ジローさん、本当に大丈夫でしょうか」
「う~ん、情報を聞きに行くぐらいですからね、このままでも大丈夫のようなマズイような」
「お会計~しま~す」
「はい、・・・こちらが料金になります」
「はいよ~、これで足りるかい~」
「はい、十分でございます、皆様、またのお越しをお待ちしております」
「世話になったねえ~、それじゃあ行くよ~みんな~」
結局ルビーさんが全部払ってくれた。良かったのか、これで。
この後は店を出て外の空気を吸い人心地付いてから、情報を聞きに行くんだよな。スラム街のサムソンって酒場だよな、そこで盗賊ギルドのメンバーに渡りを付けて貰って、蒼水晶の指輪のありかを聞き出さないと。
ただ、ルビーさん達が少し酔っているのが心配だ。
おじさんも少し酔っているけどね




