第31話 小さな女神教会
オール道具屋を後にして暫く街中を歩いていると、何だか人だかりが見えてきた。なんだろうか、教会っぽい小さな建物の周りに人がまばらにいて、みな拍手やお祝いの言葉を言っている。
「ファンナ、あれは何かな、人が集まっているみたいだけど」
「ああ、あれは転職の儀ですね、私の時もこんな感じでした」
「転職、クラスチェンジって訳か、そうか、教会で転職するのか」
「ジローさんは戦士に転職した時は女神教会で転職の儀をやってもらったんですか」
「えーと、どうなんでしょう」
俺の場合メニューコマンドでちょちょいとやってしまったからな。
そうこうしていると、女神教会に来ていた人達は帰っていった。丁度いい、白の指輪と黒の指輪を女神教会に預かってもらおう。
「ファンナ、ちょっと女神教会に寄って行くけどいいかい」
「ええ、構いませんよ、私も女神様にお祈りを捧げようと思っていましたから」
「それじゃあ、行こうか」
俺達はサラミスの街の小さな女神教会に入った。
先ほどの転職の儀の後片づけをしている様だ。近くにいるシスターに声を掛けてみる。
「すみません、冒険者なのですが」
「まあまあ、いらっしゃい、もう転職の儀は終わりましたよ」
「あ、いえ、そうではなく、預かって欲しい物があるのです」
「まあまあ、そうなの、どんな物かしら」
「これなのですが」
俺はポケットから二つの指輪を出した。
「白の指輪と黒の指輪と言うマジックアイテムなのですが」
「え、ええ~~、まあ大変~、どうしましょう、シスターマリー、マリアンデール、どこですか」
シスターさんが他のシスターさんを呼んでいる、このマジックアイテムはそこまでレアな物だったのかな? ゲーム「ラングサーガ」だとそこまで高価な代物じゃなかった筈だけど。まあ、女神召喚用のアイテムだし、女神教会にとっては大切な物なのかもしれないな。
「ふあ~い、呼びまひたか~、シスターマチルダ」
「物を食べながら喋るんじゃありません、そんな事より司祭様を呼んできて頂戴」
「今休憩中なのですが」
「いいから、呼んでらっしゃい」
「はぁい、ただいま」
街の小さな教会って感じだ、ほのぼのするなぁ。
暫くして、司祭様がやって来た。
「どうもお待たせしました、私に御用がおありとか、何ですかな?」
「はい、実はこの二つの指輪なのですが、預かって頂きたいのです」
俺は二つの指輪を司祭様に見せた。
「こ、これは!?」
さすがに司祭様は驚いているようだ。
「はい、白の指輪と黒の指輪です」
「な、なんと・・・しかし・・・う~む・・・」
「いかがされましたか、司祭様」
「それがですね、無理だと思います、当教会へ預けるというのは・・・」
「っと言うと」
「はい、私共の小さな女神教会では、とても守りきれません、もし賊に入られたら、いとも簡単に盗まれてしまいます」
「そうですか、困りましたね」
「ご覧の通り、この女神教会には私とシスターマチルダ、シスターマリーの三人しかおりませんので」
「どうすればいいと思いますか、司祭様」
「そうですな、・・・王都にある女神神殿ならば預かってくれると思います、あそこには聖騎士も詰めていますからね」
「王都バーミンカムですか、解りました、そちらの方に訪ねてみます、ありがとうございました」
「いえ、お役に立てず申し訳ありません」
「そんな事はありませんとも、ご相談に乗っていただきありがとうございます」
ふーむ、この二つの指輪はここでは預かっては貰えないか、王都まで行く必要がでてきたな。
まあ、折角女神教会に来たんだ、お祈りしていこう。何かご利益があるかもしれないからな。
「それでは、三柱の女神様にお祈りをしてから帰ります」
「ええ、是非ともそうなさって下さい、あなた方に女神様の祝福がありますように」
「ありがとうございます、それじゃあファンナ、行こうか」
「はい、女神像はこっちですよ」
ファンナに連れられて女神像の前に来た、三体あるな、ゲーム「ラングサーガ」と同じかな。
「すみません、シスターマチルダ、この三柱の女神様と言うのはどの様な・・・」
「おや、女神様の事をご存じないのですか? 世界中で信仰されていますのに」
「すみません、相当な田舎から出てきたもので」
「そうですか、ではご説明しましょう」
「よろしくお願いします」
「まず、真ん中にいるのが戦いと成長、そして美を司っている女神アルナ様です、冒険者の皆さんや兵隊さん、騎士の方々によく信仰されています」
「私も冒険者なので女神アルナ様の前でお祈りをしているんですよ、ジローさんもアルナ様の前でお祈りするといいと思います」
「そうですね、そうします」
「そして、向かって左側にいるのが魔法と知識、そして豊穣を司っている女神ジュナ様です、農業を営んでいる人達が多く信仰しているんですよ」
「なるほど」
ここまでは一応「ラングサーガ」と同じだな。
「最後に、向かって右側にいるのが光と闇、そして愛を司っている女神エキナ様です、信者数が一番多いんですよ」
「なるほど、アルナ様にジュナ様、エキナ様ですか」
一緒だ、ゲーム、「ラングサーガ」とまったく同じだ。
・・・やっぱりこの世界は「ラングサーガ」とよく似ている、だけどこれはゲームじゃない、その辺は気を付けないといけない。
「シスターマチルダ、色々と説明して下さりありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ、女神様の事をわかっていただけるのは良い事ですので」
「それでは、女神アルナ様に祈りを捧げます」
「あ、私も」
女神アルナ様の像の前で両手を合わせて日本式お祈りスタイルでお祈りをする。
(日本から来ました田中次郎と言います。この世界でお世話になります。よろしくお願いします)
{クラスアップ出来ますよ}
「え?」
今何か聞こえたような、気のせいかな。
「ジ、ジローさん!?」
「どうしました? ファンナ」
「光ってます! ジローさんの体が光っていますよ!」
「え?」
自分の体を見てみると、確かに物凄く光ってる、なんだこれ。
「うわ、なんだこれ」
一体どうすればいいのかわからん。
おじさん、どうすりゃいい




