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2人の初恋   作者: 朧霧
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久しぶりの再会

 俺は実家に帰るまでの間にエミルに新しいワンピースを贈ることにする。今日はエミルを久しぶりに自分の手で着飾りたい欲求と嫉妬が沸き上がり洋服店へ連れて行くのだ。

嫉妬したのはエミルに近づくトムに関する話を聞いてから。


「フィルさんのご実家に行くときはどんな服を着て行けばいいかな?」


「ん? いつも同じワンピースで構わないし特別着飾る必要もないよ」


「良かった、貴族のお宅に訪問するなんて初めてだから。あ、そうだ! この前トムに買って貰ったワンピースにする。若草色のワンピースでとても可愛いんだよ」


「若草色? 何でトムがエミルに服を買ったの?」


「何でだろう? トムは騎士団の賃金を貰ったから私に贈り物をしたいと言っていたの。最初は無駄遣いだから断ったけれどトムがどうしてもと言うから」


「若草色を選んだのはトム?」


「違うよ。トムに好きな色を聞かれたから水色と若草色と答えたの」


「水色と若草色…。エミル、僕と恋人になったから他の男から貰った服は着たら駄目だよ。実家に帰る前に僕が新しい服を買ってあげるからね」


エミルは不思議そうな表情で頷き水色のワンピースを着て行くから新しい服は要らないと言ったが俺は嫉妬が止まらない。そういうわけで今日は洋服店に来ているのだが何色にしようか迷ってしまう。


何色でも似合うエミルだが、濃いめの色は避けたいし桃色だと幼すぎる感じがするし…。そうだ、薄い檸檬色にしよう。


「エミル、このワンピース着てみて」


「うわぁ! 綺麗な檸檬色だし着たことがない色だわ。腰の部分に付いているリボンも白で可愛い!」


喜んで笑顔になったエミルは試着室に入りあっという間に着替えてきた。


「あぁ、なんて可愛いんだろう…。エミルの雰囲気にとても似合っているよ」


「ありがとう。初めて着る色だしフィルさんが選んでくれたから私も気に入ったわ」


「今日はこのまま着て逢瀬に行こうよ。でも一緒に実家に帰るときにも着てね」


「うん、そうするわ」


代金の支払いを済ませ洋服店を出ると何度も逢瀬で行ったことのあるエミルが喜んだ茶菓子店に入る。


「あっ、このお店は来たことがある」


「もしかして思い出した?」


「え? フィルさんとも来たの? この前ね、メイとトムと来たんだけど…」


「僕とも一緒に何度か来たことがあるからいつか思い出すかもしれないね」

 

「忘れてしまってごめんなさい。このお店はケーキがとても美味しかったから一緒に食べようよ」


「エミルは小食だから2つ注文して半分ずつ食べようね」


「あ、それ…もしかして私が小食だからその方法をフィルさんが教えてくれたのかな?」


「初めて来たときにエミルは何のケーキにしようかとても迷っていたんだ。全部注文してあげたかったけれど次に来たときの楽しみにするからと言ってその日は2つを半分ずつにしたんだよ」


「これからもフィルさんとまた何度でも来たいからそうする」


嬉しそうにケーキを食べているエミルを見ていると、もう食べてしまいたいほど可愛い……。


それからはエミルと充実した毎日を過ごしている。

ある日、仕事帰りに町を歩いていると声をかけられた。


「「フィル、久しぶり」」


「ザジト! ライロ! 久しぶりだな。メッシュバルン王国から帰ってきたのか?」


「そうだ、お前これから予定あるか?」


「少しだけ用があるがすぐ終わるよ。お前達は?」

  

「お前の奢りで酒を飲みに行こうと思ってな。先に店に行っているから後から来いよ」


それから店の名前を聞き、エミルに会ってから店に行った。


「待たせたか? すまなかった」


「適当に飲んでたから待ってねぇよ。それで用は済んだのか?」

 

「あぁ、大丈夫だ。いつ帰ってきたんだ?」


「3日前だ。いつ帰ってきてもニルセンブリナは平和でいいな」


「メッシュバルンにはもう行かないのか?」


「あの国の情勢はいい方向に変わってきているから俺達がしている仕事の人数は多く要らなくなった。とりあえず俺とライロは一段落したから帰国しているがまだ今後の仕事は決まっていない」


「そうか…、何しろ急展開だったからな。お前達がどうしているのか気になっていたよ」


「お前がいなくなってからもずっと変わらず貴族に雇われながら同じ仕事をしてた。お前はライゼンから上手く帰れたようだな」


「ライゼンは兄が留学していて滞在しているのは遠縁の伯爵家なのだがその人に力を貸してもらって無事に帰れたよ。でもザジトとライロに出会わなかったらあの時は帰れなかっただろうな。改めて感謝するよ、ありがとう」


「いいってことよ。お前だって俺達と仕事して国の役に立っていただろ?」


「まぁ、そうだな。でも俺は不向きだから二度としたくはないが…」


「そうか? 適任すぎて笑えたがな。そういえばあの家だけどメッシュバルン国内では落ちぶれてきてるぞ。前国王に擦り寄って娘を王太子と婚約させようとして媚を売っていたのも貴族間で周知されていたから爪弾きだ。正確には宰相に媚を売ってたがな」


「あの伯爵が国の中枢組織にいても悪影響だろ。領地経営は執事達のおかげでまともにできていたけどあれも伯爵の手腕ではないな」


「それに噂だが現国王はイルマルーンの第二王女と婚約するらしくて今はその話題で持ちきりさ」


「亡命中に恋人にでもなったのか?」


「亡命中ではなく留学中から密かに交際していたらしいぜ。イルマルーンの王太子が1歳年下の公爵家の娘と婚約しているのは知っているよな? その公爵家の娘と同じ歳で仲が良いのが第二王女だ。4人は歳は違うが同じ学園に通っていて経緯は知らないが上手く隠していたんだろうな」


「でも伯爵家の娘はその話を知らなかったぞ」


「現国王は伯爵家の娘を拒否しないことで本当の相手を隠しながら即位を狙っていたんだろうな。実際に見抜けなかったのは宰相だが前国王は伯爵家の娘との婚約を説得されて承諾したというわけではないか?」


「やはり伯爵家は間抜けだな、結局、私欲に溺れたわけだ」


「あぁ、現国王は頭が切れる奴で前国王は周りが見えず頭の中は戦うことのみの操り人形だ。

伯爵家の娘も父親が落ちぶれているしあんな性格だから婚約もできなくて焦っているらしくフィルのことも必死に探し回っていたようだぜ。それに今まで散財していたから金に困っているらしい」


「俺にその気がなくて帰国したのは言わなくても分かるだろ?」


「帰ったと思わずにまた連れ去られたとでも思って探していたんじゃないか? あの娘はフィルに骨抜きにされたからなぁ」


「仕事だよ、仕事。あんな嫌悪感を抱く女は二度とご免だ」


「ははは! でも今じゃ婚約者がいて癒されているんだろ?」


「誰に聞いたか知らないがよく知ってるな…。それに今ではなくて前から婚約してた」


「俺達はあの仕事を専門にしているから調べるのは簡単さ。それで、どんな女だ?」


「どんな……。可愛いくて純粋で心地よくて守ってあげたい。まだあるけど聞くか?」


「分かった、分かった、もう言わなくていい。しかしお前の好みは豊満で艶っぽい女が好きかと思っていたけど真逆だな」


「昔は…、そうだったかもしれないが今は彼女を一途に思っている」 


「お前、意外と人前で惚気るよな。なんだか俺も伴侶が欲しくなってきた」


「お前達は結婚していないんだろ?」


「あの国で結婚なんてしないし専ら娼館通いだ。元々仕事柄、面倒だし独身でいた方が都合がいい。食っていくためには一生結婚なんて無縁だと思うよ」


「まだ同じ仕事を続けるのか。2人共、他国に行くときにはちゃんと知らせてくれよ」


「あぁ、また酒奢れよ。それとザジトとライロは偽名だ。本名はザックとラミユ、お前は俺達の友人だから特別だ」


「ありがとう、ザック、ラミユ」


ザックとラミユが一時帰国しているということはメッシュバルンも順調に少しずつ前に進んでいるのだろうな……。


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