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2人の初恋   作者: 朧霧
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2度目の告白

 翌日、俺はエミルに誤解されたままでいることが嫌で居ても立っても居られなくなり、仕事が終わると久しぶりに以前通っていた店を訪ねる。


「いらっしゃい。よお! フィル久しぶりだな」

 

「あぁ、元気だったか?」


「ここ数年、お前達が店に来なくなったから寂しかったよ。最近はアンジェが戻ってきて頻繁に来てるよ」


「仕事が忙しくてな、すまなかった。そのアンジェは来てるか?」


「来てるぜ、あそこで楽しく飲んでるよ」


店主が指差した方を見るとアンジェが数人で笑って騒ぎながら酒を飲んでいる。そもそもの原因はアンジェが町中で軽はずみな行動をしたから誤解されたのに楽しそうな雰囲気を見ると無性に腹が立ってきた。


「おい! アンジェ。お前が誤解するようなことをしたから困っているんだ。今から一緒に行って説明しろ」


「ちょ、ちょっと待ってよ。突然怒ってるけどどうした? 何もした覚えないけど?」


アンジェと酒を飲んでいた奴らは俺に対して抗議してきたが無視して腕を引きエミルの家に連れて行く。


「こんばんは、ナジェルさん。昨日の誤解を解きたいのでエミルを連れてきてもらえませんか?」


ナジェルさんは目を丸くして困惑しながらもエミルを連れてきてくれたので玄関の外に出て話し始めた。


「エミル、この人はアンジェ。昨日町で見た人でしょう?」


「うん、そう…」


「この人は僕の昔の友人で昨日は久しぶりに偶然再会しただけなんだ……だよな、アンジェ?」


「ん? 何この状況? よく分からないんだけど」


「あのな、お前が勝手に腕を絡ませてきたから恋人と勘違いされて困っているんだよ。だから昨日のことをちゃんと話せ」


「へぇー、女の好みが変わった? そういえばフィルが婚…うぐっ」


俺は慌ててアンジェの口を手で塞ぎ婚約の話はするなと耳打ちすると首を上下に動かして頷いた。


「はぁぁ、苦しいじゃない。一体何なのよ! とにかくその話はしなきゃいいのね?」


「そうだ。どうでもいいから早く昨日のことを説明しろよ!」


「うるさいわねぇ、分かったわよ。えっと、エミルちゃんだっけ?」


「はい、初めまして」


「私ね、フィルの昔の友人。3年前に恋人を追いかけて外国に行っていたんだけど最近王都に帰ってきたの。昨日は久しぶりフィルを見かけたから嬉しくなってついね…。ああいうのは誰にでもしちゃう態度だから気にしないで」


「昨日見かけたときアンジェさんが恋人だと思ったから私がフィルさんと仲良くしたら悪いことだと思いました」


「えっ? 恋人ではないよ? この男はあたしが何度言い寄っても相手にしてくれないから今では冗談みたいになってるし」


「おい、アンジェ。余計なことを言うな」


「はいはい。だからね、エミルちゃんはフィルと仲良くしていいのよ」


「アンジェさんは傷つきませんか? 私がフィルさんと仲良くしても…」


「いいのよ、恋人じゃなくて友人だから。エミルちゃんだって男の友達くらいいるでしょ? それと同じ。フィルがとっても仲良くしたいみたいだからよろしくね」


「ありがとうございます。あ、アンジェさんも私と仲良くしてくれますか?」


「いいわね、今度お姉さんの私が色々と教えてあげるわ」


「アンジェ、エミルには何も教えるな」


「何でよ、エミルちゃんと仲良くなったから私の勝手じゃない。まぁ、これで用は済んだみたいだしまた店に戻るわ。エミルちゃん、またね!」


「アンジェさん、お気をつけて」


「アンジェ、ありがとう」


アンジェは笑いながら手をひらひらと振り帰って行った。


「エミル、これでもう悲しい思いはなくなった?」


「昨日はごめんなさい。どうしたらいいのか分からないから混乱して布団から出られなかった」


「うん、大丈夫だよ。エミルに嫌われたくないから必死に考えた」


「嫌いになんてならないけど恋人がいるなら他の女性と仲良くしたら駄目でしょう? だからフィルさんと仲良くしたら駄目だと思って悲しくなったの」


「僕には恋人はいないから心配しないでいいよ。やっといつものエミルが見れた。抱きしめてもいい?」


「えっ? ……うん、いいよ」


はぁぁ……、久しぶりエミルを抱きしめると心地よい匂いを嗅ぎ柔らかい身体に触れる。明日にでも結婚したいがやっとここまで近づくことができた。その後、ナジェルさんとマリアさんに誤解が解けたと報告をしてから帰った。

しかし冷静に考えてみるともしかしてエミルはアンジェのことで俺に嫉妬したのだろうか? 本人が知らず知らずのうちに嫉妬していたと思うと気分が高揚して頬が緩む。今日は悩みもなくゆっくり眠れそうだ。



誤解が解けてからはいつものエミルに戻り今日はやっと思い出があるミグロナ滝を見に出かける。

エミルを迎えに行くと以前俺が贈った水色のワンピースを着ていて嬉しくなり気分が良い。


「エミル、おはよう。水色のワンピースがとっても似合っているよ」


「フィルさん、おはようございます。このワンピースね、お母さんがいつのまにか用意してくれたんだけど可愛くてとっても嬉しいの!」


「うん、エミルが可愛いくて困ってしまうよ」


「ありがとう、でも少し恥ずかしくなっちゃった」


以前に滝に行った通りに馬車乗り場に連れて行き乗り込み出発する。


「どこに行くかは楽しみにしていて」


「私、馬車に乗るのが初めて! 見て、こんなに速く景色がどんどん流れていくの」


「馬車も速いけど馬はもっと速いよ。今度は馬で出かけよう」


「私、一人で馬は乗れないからフィルさんと一緒に乗れる?」


「勿論、僕がエミルと一緒に乗るから大丈夫」


それから馬車が目的地に着き散策をしながらミグロナ滝を目指す。


「大きな音がしてくるし滝に近づいてきたら雨が降っているみたいに冷たいわ」


「雨ではなくて滝の水飛沫だよ。エミルは滝を見るのが初めて?」


「うん、絵本でしか見たことがなかったから感動したわ。この滝は大きい滝なの?」


「高さも幅も普通だけど観光地になっているから散策路も整っているんだ。いつかエミルにはもっと高さのある幅広い滝を見せてあげる」


「楽しみだな。遠出したことがないから一番大きな滝だと思ったんだけどまだあるんだね。私はこの滝が見れたから満足ですよ」


「エミル、手を繋いであげるからこっちにおいで」


エミルの手を引き以前口付けした場所まで連れて行くことにした。思い返すと随分前だけどあの時の感動は今でも鮮明に覚えている。


「僕はエミルとこの場所に来ることができてとっても嬉しいんだ」


「ここはフィルさんと恋人との思い出の場所なんでしょう?」


「そうだよ、大切な恋人との思い出の場所だからエミルを連れてきた」


「えっ? 私とフィルさんの…。それなら恋人は?」


「僕の恋人はエミル。半年以上前だけど僕は君に一目惚れして恋に落ち、それから告白して愛を育んでから婚約した。でもその直後に任務で遠い所へ行き帰れなかった。僕はエミルが忘れてしまうのも覚悟していたし、最初からまた恋をしようと思っていたから帰ってきたときには必死だったよ。今でも僕は君が傍にいないと息もできないほど苦しいし毎日エミルのことで溢れている。愛してる、これからもずっと僕の傍にいてくれる?」


「私…前のことは覚えていないけど恋人同士だったなら嬉しい! 最近ね、好きな人がいたような気がしてたけどいくら考えても誰だか分からなくて苦しかった。そんなときにフィルさんが帰ってきて出会ったわ。会えると嬉しいし心が惹かれていくようでどうしたらいいのか分からなかった」


「僕達はパイゼン領に行く前に約束したんだ。エミルが覚えていないときには最初からやり直すから僕にもう一度恋をしてとね。苦しくなったのは頭のどこかで覚えていたのが原因だよ。エミル、僕のことが好き?」


「うん、大好き!」


「トムと同じ好きかな? それとも恋かな?」


「トムは違う…。トムのことは両親やメイと同じだけどフィルさんはそうじゃない! だって傍にいると胸が躍って心がときめくの」


「僕はエミルを愛してる。毎日愛を伝えたいし触れて抱きしめたい。また僕の恋人になってくれる?」


「私もフィルさんの恋人になりたい! 覚えていないけど私でいいの?」


「エミルがいいしエミルでないと嫌だ。過去のことは無理に思い出さなくてもいいから恋人から始めよう」


「ありがとう、よろしくお願いします」


「あぁ、良かった。すごく嬉しいしやっと安心できた。抱きしめてもいいかな?」


「うん!」


エミルを抱きしめると思いが溢れてきて止められなかった。少し身体を離してそのまま両手で頬を包み自分の唇をエミルの唇に軽く押し当て口付けをすると抵抗しなかった。今まで我慢していた分を取り戻すように上下の唇を移動しながら満足するまで口付けをする。


「フィルさん……苦しい」


「あ、ごめんね。口で息をするように鼻ですると苦しくないよ」


「うん。初めてだからやり方が分からないよ」


「ずっと我慢していたから気持ち良くて夢中になりすぎてごめんね。座ろうか」


息が整わないエミルを石の上に座らせて後ろから抱き抱えた。


「少しは楽になったかな?」


「大丈夫。我慢していたと言ってたけと前もたくさんしていたの?」


「そうだよ、エミルとたくさん口付けをしていた。僕が毎日したいってエミルに言ったら結婚したら毎日してくれると言ってた」


「えっ、そんなに…」


「愛してるから気持ち良くて止められなくなるんだ。我慢していた分、これからもたくさんしていい?」


「いいよ、フィルさんなら」


「ねぇ、エミル。今度実家に帰るんだけど一緒に来てくれないかな?」


「私が行ってもいいの? お父さんに聞いたけどフィルさんは貴族だよね?」


「僕の両親はエミルに会っているし婚約も承諾してくれるほど気に入っているよ」


「でもそのときのことを覚えていないからご両親は不愉快になると思う」


「エミルの記憶のことも知っているから心配しなくていい。だから一緒に行こう。両親もエミルと会うのを楽しみに待っているんだ」


「うん! それなら一緒に行く」


俺とエミルは前回と同じように滝から帰る。ナジェルさん達には元に戻ることができたと報告をした後、今日の記念にキャンディをいつもよりたくさん渡して俺は自宅へ帰った。


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