対面
フィルさんと昼食を取ってから分かったことだけど変な症状の原因は誰かに恋をしていたのかもしれないと思った。不思議なことにフィルさんと一緒にいると変な症状が一度も無く、逆に胸の鼓動が速くなる気がするの。それに恋をしている相手はトムではないわ。だってトムと会う前から症状はあったから。私は一体誰に恋をしていたのかしら…。
今日は私の欲しがっていたキャンディをまた探しに行こうと言ってくれたトムと午後から出かけるわ。優しい人で好きなんだけど恋はしていないと思う。
「エミル、迎えに来たよ。今日もキャンディを探しに行こう」
「あのね、トム。それがキャンディをくれた人が王都に帰ってきて毎日くれるからもう探さなくていいの。今までたくさん迷惑かけてごめんね」
「そうなんだ、帰って来たのか。騎士団の人達にキャンディがありそうなお店を聞いて来たんだけどもう必要ないね」
「うん、ありがとう。トムが一緒に探してくれて嬉しかった」
「エミル、こんにちは。はい、キャンディどうぞ」
「あ、フィルさん。今ね、このキャンディの話をしてたの。こちらが前に話した幼馴染みのトムです」
「あぁ、幼馴染みのトム君ね。初めまして、フィルバートです」
「エミル、この人がキャンディをくれた人?」
「そうだよ、フィルさんは最近王都に帰ってきたの」
「初めまして、トムです。エミルとは幼馴染みで一緒にキャンディを探していました」
「僕は仕事があって王都に帰ってくることができなかったから悲しい思いをさせてしまってね。いない間エミルが世話になったみたいですまなかった」
「いえ、僕がエミルにしてあげたかったことですから気にしないでください」
「そうそう、フィルさんは騎士団なんだって。トムと同じ仕事だったの」
「えっ…騎士団員なんですか?」
「正確には第三近衛隊に所属している。トムは入団してまだ日が浅いから知らないかな?」
「はい、入団してまだ2ヶ月ほどです。あの、第三近衛隊で遠くに行っていたというのは…」
「そう、パイゼン領へ行っていたんだ。エミルに会いたくても帰ってくることができなかった」
「そうですか…すみません、僕はこれで失礼します。エミル、また今度一緒出かけよう」
「う、うん、またね?」
トムは足早に去って行った。なんとなくエミルと俺のことを勘づいてくれただろうか?
「トムったら慌ててたけど急にどうしたのかしら?」
「エミル、これからは気軽に男性と出かけたりしたら駄目だよ」
「でもフィルさんとも出かけたりしてるしトムは男性というか幼馴染みだから」
「エミルはそうでもトムは告白したから違うだろう? 僕は他の男性と二人きりで出かけたりして欲しくないんだ」
「う、うん…分かった。フィルさんとはいいの?」
「僕だけいいよ。そうだ、この前の約束なんだけど5日後に休みが取れたから一緒に出かけよう」
「5日後ね、お父さんに言っておくわ。お父さんはフィルさんとならどこに行ってもいいよって言ってくれるの」
「ナジェルさんと僕は仲良しだから。毎日会いに来るけど5日後の朝はエミルの家に迎えに行く」
「私の家の場所も知っているの?」
「勿論知っているよ。だから心配しないでいいから待っていてね」
「うん! 待っているね」
5日後は馬車に乗りミグロナ滝に行こう。ミグロナ滝はエミルと初めて口付けをした場所で2度目の告白をして早く恋人になりたい。
翌朝、俺はトムに用があり騎士団の訓練場へ行くことにした。
「おはようございます、フィルバートさん」
「おはよう、忙しいところ悪いけどトムはどこにいるかな?」
「トムですか?入団したばかりの奴でいいのかな…」
「そう、入団したばかりのトムだ」
団員はトムが仕事をしている場所へ案内してくれたので探すとトムは馬の鞍を点検し装着している。
「皆おはよう、お疲れ様。申し訳ないけどトムと少し話があるから借りれるかな?」
「おはようございます、フィルバートさん。トムですか? 構わないですよ」
「おはようございます、フィルバートさん。それで僕に話しとは…」
トムを人気のない場所へ連れて行った。
「昨日は言えなかったが今日はきちんと事実を伝えようと思って来たんだ。君はエミルの記憶の件は知っているのかな?」
「はい、友人のメイから聞いてます」
「それなら話が早いな。実は3ヶ月前、私とエミルはお互いの両親の承諾をもらって正式に婚約していたんだ」
「えっ、婚約ですか? 交際していた人がいたと聞いていただけでメイは婚約していたとは言っていませんでした」
「私はメイさんとは話をしたことがないから分からないけど嘘だと思うならナジェルさんに聞くといい。3ヶ月前、急にメッシュバルンが怪しい動きをし始めたので婚約が決まったばかりだがパイゼン領へ行くことになってしまったんだ」
「はい、昨日フィルバートさんの事情はよく分かりました」
「こんなに長期間帰ってくることができないと思っていなかったが結果的にエミルは俺の全てを忘れてしまったんだ。帰ってきてからやり直すことにしたのだが私のいない間に君がエミルの近くにいたわけだ」
「でも僕は田舎へ引越しをしてもエミルのことが昔から好きでした。王都に来て再会してやっと告白できたのに諦められないです」
「そうか、気持ちはわかるが私もエミルを諦めることはない。最終的にはどちらかを選択することになるだろうが本人の意思に任せてほしい」
「強引に近づいたりはしませんが俺を好きになってもらう努力はします。フィルバートさんとのことを覚えていないわけですから僕と立場は同じです」
「分かった…エミルは私を選ぶから構わないよ。ただし強引に事を進めるようなことはしないでくれ」
「はい、分かりました」
トムとの話は終わり、俺は自分の任務に戻った。
「殿下、おはようございます」
「おはよう、フィル。今日はいつもより来るのが遅かったな」
「はい、騎士団の訓練場に寄って参りました」
「あぁ、例の幼馴染みか。婚約の話はしたのか?」
「はい、話はしましたがエミルが私のことを覚えていないなら立場は同じだと言われてしまいました」
「それで落胆したのか…」
「仰る通りです。婚約しているのは私であるのに近づくなとは言えませんでした」
「でも選ぶのはエミルさんだよね? フィルが選ばれたらいいのだからあまり深く考えるなよ」
「はい、ありがとうございます。私は任務に戻ります」
そうだな、エミルが俺を選べば簡単に解決する。トムに対して近づくなとはっきりと言えなかったことに落胆し、毎日エミルに会っているのに今すぐにでも無性に会いたい。それから俺の腕の中に囲い自分だけのエミルと実感したい……。




