違和感
瓶に入っているキャンディが寂しい気持ちや胸が痛くなったときに舐めていたら、当然だけど減ってきて残りはあと少ししかない。なぜだか分からないけどキャンディが無くなってしまうことを考えると焦るし悲しくなった。
「ねぇお父さん、私の部屋にある瓶の中身のキャンディは誰かに頂いた物? どこに行けば売っているのか知ってる?」
「ぁ、そのキャンディは貰い物だ。売っているところも知らないからごめんな」
「そうなんだ…じゃあお父さんにくれた人に聞いてみるよ、どの人か教えて」
「ん? その人は今王都にいなくてすごく遠い所にいるから会うのは無理なんだ」
「いつ帰ってくるの? 男性か女性? どんな人?」
「少し落ち着け。帰ってくるのはいつになるのかまだ分からないんだ。その人は男性なんだけどエミルにキャンディをあげてと頼まれたから貰ったよ」
「そう、残念だな…。トムとメイにもキャンディの売っているお店を知っているか聞いてみる」
「あ、あぁ。誰か知っているといいな…」
私はお店に来てくれたメイに会うと衣囊に入っているキャンディを取り出して聞くことにする。メイは色んなお店を知ってるからもしかしたら分かるかも。
「ねぇ、メイ。このキャンディ見たことはある? 売っているお店が知りたいの」
「ん? 綺麗な色をした包み紙だけど王都の店では見たことないわね。何味のキャンディなの?」
「うーん…、お薬みたいな味がするけど口の中が爽やかになる感じかなぁ? とにかく舐めていると甘くなって癖になるのよ」
「何それ…、薬みたいな味なら売れるわけがないから王都には無いわよ。他国のキャンディかしら?」
「お父さんの知り合いの人が私にくれたんだって。毎日舐めていたら無くなってきてなんだか悲しいの。だからまた舐めれるように買いたかったんだけど…」
「その人に聞けばいいのに。売っている店が分かれば私が一緒に買いに行ってあげるよ」
「うん。でもその人は王都にいなくて遠い所にいるんだって。だから聞きたくても聞けないの」
「ん? 遠い所…あ、見つけたらエミルに知らせるね」
「うん。ありがとうメイ」
メイが知らなくて落ち込んだけど次はトムに聞いてみよう。今日トムとは買い物に行くことになっているから買い物中に見つかるかもしれない。
「今日は洋服店に行くよ! この前賃金が入ったから俺がエミルに贈り物をしたかったんだ」
「え? せっかく稼いだお金なのに…。勿体ないし無駄遣いになるから家族や自分のためにお金は使った方がいいよ。そういえばトムはどんな仕事をしてるの?」
「あれ? 言っていなかった? 王都騎士団だよ。王都に来る前には領兵をしていたけど入団試験を受けて合格したから来たんだ」
「騎士団……」
「やっぱり騎士団の仕事は危険だし大変だけど王都の方が賃金が高くて稼げるから田舎から出てきて良かったよ」
「騎士団の試験に合格するなんてトムは強い人なのね」
「国を守るために働いているから騎士団の中には戦いに優れた人がたくさんいるんだ。俺は入ったばかりだから負けないように毎日鍛えて頑張っているよ」
「国を…守る…」
「もう、いいから早く行こうよ。今日はエミルに俺が選んだ似合う服を着せたいんだから」
「えーっ、じゃあ私の行きたい所も後で行ってもいいかな?」
「勿論だよ。その前に洋服店へ一緒に行こう!」
トムは私の手を取り引っ張って洋服店に連れて行った。気乗りしないけど上機嫌なトムを見ると断られないな。
「うわ! 王都は色々な洋服があるね。エミルに似合いそうなのは…、ワンピースもいいけどブラウスとスカートもある。迷うな、色は何色が好き?」
「水色とか若草色が好き。それにワンピースが好き…」
あれ? 私はその色のワンピースは持っていないから着たことがないのに何で好きだと思ったの?
「水色か若草色かぁ。うん、どちらともエミルに似合う色だね。ワンピースで探して選ぶから待ってて」
「う、うん」
ワンピース…水色…若草色? 自分が答えたのに何となく違和感がある。
「エミルお待たせ。このワンピースを着てみてくれるかな?」
試着室に入って渡されたのは可愛い形をした若草色のワンピースで着替え終わったら試着室を出てトムに見せた。
「トム、着替えたよ。可愛いワンピースだね」
「エミル可愛いよ、とても似合っているからこれにしよう! 今日はこの服のまま買い物に行くよ」
そう言ってトムは代金を支払い私にワンピースを贈ってくれた。とっても気に入ったけどまた息苦しくて胸が痛くなったのはなぜだろう?
「トム、ありがとう。でも無駄遣いさせてしまったわ」
「前から俺が選んだ服を着せたいと思っていたから無駄遣いじゃないよ。それでエミルの行きたい所は?」
「えっと、キャンディがたくさん売っているお店に行きたい」
「えっ、キャンディがそんなに好きだったの?」
「うん…。ずっと舐めているキャンディが好きなの。でもお父さんの知り合いがくれたからどこで売っているのか分からないし、その人も王都にいないから聞けないの」
「それなら一緒に探してみよう。キャンディがたくさん売っている店は…」
私とトムはお菓子が売っているお店を回り探したり聞いたりしてみたけど結局見つからない。
たくさん歩き回って疲れたので茶菓子店に入り休憩をすることにした。
「今日は見つからなかったね。そんなに珍しいキャンディなのかな?味が変わっているとか、美味しくて品薄なのか」
「お店の人に包み紙を見せて聞いたら見たことがないと言われたわ。もしかしたら王都では売っていないのかも…」
「そんなに好きなの?」
「えっ、うん。ケーキみたいにすごく美味しいわけではないけど無くなると不安になるの。瓶にたくさん入っていたのにあと少ししか無くてどうしたらいいのか分からないの…」
突然涙がたくさん出てきてしまいトムを困らせてしまうので止めたいのに止められない。何が悲しくて泣いているのかも分からなくなって頭が混乱する。
「エミル…、泣かないで。明日騎士団の人達にも聞いてみようか? 本当はそのキャンディを借りれるといいけど嫌かな?」
「もういいの…、キャンディくらいのことでトムや騎士団の人達に迷惑かけたくない。またお菓子を売っているお店に聞いてみるから大丈夫よ。今日はトムを困らせて本当にごめんなさい」
「うん、大丈夫だよ。また一緒に探しに行こうね」
茶菓子店を出てトムが送ってくれて家に帰ったけど気分が優れない。
「ただいま、お母さん」
「おかえり。あら、その服はどうしたの?」
「トムが私に贈ってくれたの。無駄遣いになるから断ったんだけどお願いされたから貰ったの」
「そう…若草色のワンピースをね」
「トムに何色が好きなのか聞かれたから水色か若草色と言ったらこのワンピースを選んだのよ」
「エミルは水色とか若草色が好きだったの?」
「うん、好き」
「……そう、よく似合っているから良かったわね」
「ありがとう、着替えてくるね」
私は部屋に入って着替えをして若草色のワンピースをタンスに吊り下げておいた。
テーブルの上に置かれた瓶の中に入っているキャンディは当然だけど増えていない。それを見るとやっぱりまたあの症状が出てきて泣きそうになったので堪える。
私は病でもないのに変だわ。キャンディなんて何味でも美味しいはずなのに……。




