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2人の初恋   作者: 朧霧
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パイゼン領 ③

 俺は殿下と一息つくことにしてお茶を入れる。


「フィル、明日は東のインベル砦だ。地図で見る限りでは遠くに山脈があるが我が国側は広い平地になっているはずだ。川もあるがラドン川のように近くにはないし怪しい侵入者はすぐに目視できそうだな」


「はい、仰る通りです。地図上ではそのように感じますが実際に見て見ないことには分かりませんね」


「マドナラ砦は警戒を最も厳しく行っているがどこから奴らは入ってくるのだろうか…。やはり東か西か」


「マドナラの警戒を突破するのは困難ですから自分が同じ立場ならやはり正面突破はしません」 


「まぁ、明日視察に行くから抜け穴がないか確認してみるか。そういえば、昨日エミルさんに手紙をだしたのか? 検閲官がまだ現地入りしたばかりなのにと言っていたぞ」


「昨日手紙を出してもエミルの記憶がなくなるのを考えると王宮からメンデス家に早く届かなければ14日以内に間に合わないです」


「14日か…。このままだと帰れそうにもないな」


「長期間になると思いましたので帰れないのは覚悟していますし、エミルが僕のことを忘れてしまっても最初からやり直します」


「今までフィルは女性と交際しても本気になったことがなかったから別人のようだ。私が知らないだけで本気になったことはあったのか?」


「いいえ、エミルが初めてですから正直戸惑うこともありますね。今までは別れても何も感じなかのに絶対別れたくないと不安になったりします」


「フィルからそのようなことを聞くとは思わなかったよ。私もそのような経験をしてみたかった」


「殿下、出会いはいつ訪れるか分かりません。まだ殿下には婚約者がいらっしゃらないですから」


「婚約者かぁ…。周りもうるさいから憂鬱だね」


翌朝も早くから昨日と同じ同行者で東のインベル砦へ行った。インベルも砦の大きさはミルナレとほぼ同じである。インベルの問題点はやはり人員不足であったが違う問題点もあった。


それは調理しなくてもいい食料は他の砦より減りがとても早く、調理しなければならない食料は腐らせてしまうほど余っている。

インベル精鋭部隊長のテールに話を聞けば配属された兵士がたまたま調理が下手な者、あるいは面倒で調理をしたくない者が集まってしまった結果だという。


「テール、人員不足に関しては昨日増員することが決まっているからインベルにも同じ対応をする。それに料理人を雇うのも検討するが時間が必要だ。したがって調理できる者に関しては他の砦と兵士を交代すること。長期間でなければこのままでも構わないが兵士の健康問題にもなりかねない。今日の軍議で問題を挙げるのでそれまでにレオとミロードは調理できる兵の必要人数を確認して。フィル達は私と帯同してこのまま外に視察に行くことにする」


「「「はい、承知致しました」」」


「殿下、では早速周辺の視察に参りましょう」


「そうだな、よろしく頼む」


こうして殿下に第三近衛隊が同行して周辺視察に出かけた。


「フィル、先ほどインベルからも確認したけれども山脈は随分と遠いな。やはり我が国側は平地が広がっているが人が住んでいる気配がない」


「はい、何も手付かずのようですし目視できる範囲では民家もほぼありませんでした。山脈近くに行けば民家もあるのでしょうか?」

 

「どうだろう。国の交流をしていないから密偵からの情報でしか様子が分からないし、密偵もメッシュバルンの王都にいるからそこまでは把握していないのかもしれないな」


「こちらから見える平地のところはメッシュバルンの王都からはかなり距離が離れていますよね」


「そうだな、あの領土の発展を考えていないのか、土壌が悪くて何もできないのか。予算が全て軍にいき手付かずで放置しているのか分からないな」


「それでもメッシュバルンより北の国は上手く統治されていますから侵略による解決は許せませんね。方法はいくらでもあるのに現国王の考えでしょうか?」


「現国王は明らかに軍事路線だ。ただ、王太子が1人いて数年前までは表に出ていたのに近年では全く出てこない。この件に関しても密偵に調べさせているんだが難航していて幽閉されているのか病に伏せているのかまだ正確に分からない」


「では王太子が軍事路線でなければ周辺諸国とも交流できるのでしょうか?」


「私はそう願いたいね。前に国民の一部が反乱している話をしたと思うけれども、そのついでに現国王に反発している貴族や王太子を支持している貴族がいないかを密偵が調査している」


「現国王が失脚して王太子が即位したとしてもかなり時間がかかるでしょう」


「メッシュバルンがどうなるのか分からないので長期厳重警戒になるから視察も最重要になる。それに良くも悪くも急展開するかもしれないから備えておかないといけない」

  

そう、メッシュバルンがどういう出方をしてくるのか予測できないから帰ることは到底無理だと改めて自覚し不安を感じた。  


インベル周辺の視察も無事に終わりマドナラへ戻り軍議に入り対策を講じる。

やはり食事面までは考慮していなかったようで長期厳重警戒態勢になると予想されることから兵士の入れ替えをすることになった。 


パイゼン辺境伯からはできる限り料理人を集めるが国境付近の砦ということもあり、すぐには人を探せないらしいので入れ替えはせざるを得ない。

殿下はこの件に関してパイゼン辺境伯、ジェームズ、カンインに任せることにした。 


軍議も終了し解散しようとしていたときに突然、怪しい侵入者を目視したと報告が入る。

緊急事態に殿下の許可を得てカンインとジェームズと共に部屋を退室し現場に駆けつける。


マドナラから西方面、黒ずくめのフードを頭から被った男性らしき人物が7、8人が森の中で目視され追跡中であると聞いた。


森は広くなく見通しは悪くはない方だが闇に包まれている時間帯のため追跡が難航しているので駆け付けた俺達も分かれて捜索に加わることにした。


暗闇の視界にもだいぶ慣れてきて慎重に追跡すると人影を見つけたので分かれて後を追うと2人発見する。


「止まれ! 何者だ。武器を捨てて顔を見せろ」


男達は素直に従い武器を捨て顔を見せた。


「お前たちはメッシュバルンの者か?」


男達が頷いた瞬間、暗闇から矢が多数飛んできた。

男達は慌てて捨てた武器を拾い攻撃してきたので応戦するが暗闇から出てきた男達は10人を超えていた。

不利な状況になった俺は追跡していた兵士に指示を出す。


「この場は対応する、誰か急いで知らせてこい」


1人の兵士が駆け出すのを確認して俺と残りの兵士で応戦したが暗闇からまた矢が飛んできたことに気づけなかった結果、肩の下に矢が刺さり危機に陥る。


矢を受けたぐらいなのになぜか意識が朦朧としてきたまでは覚えていたがすぐに意識を失った。














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