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2人の初恋   作者: 朧霧
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パイゼン領 ②

 翌朝早くミルナレ砦に向かう。第三近衛隊と側近2名が殿下に同行し今回は全員馬で移動する。

中央に位置するマドナラ砦からミルナレ砦までは馬で全速力で行けば途中休憩も含めて2時間ほどである。馬を走らせながら辺りを見回し様子をうかがうと領民は普段通りの生活を送れているようだ。


「殿下、一度休憩を取りましょうか?」


「あぁ、そうしよう」


近くの村に入り馬を休ませてもらい我々も適当な場所を見つけて休憩を取った。


「村長が殿下を自宅にお招きしておりましたがこのような場所でよろしいのでしょうか?」


「構わないよ。挨拶ばかりになると思うし長居はしないからこのままでいい」


「先ほど村人達に少し話を聞きましたが何も生活に変化はないそうです。盗賊などの被害もなく、国境付近で警備が強化されたから平和に暮らせると感謝されました」


「そうか、この辺りでは何も変化がないことは良かった。何としてでもメッシュバルンには国境を越えさせたくないな。フィル、もう少ししたら出発するから全員に伝えてきてくれ」


「承知致しました」


休憩後、再び馬を走らせて予定時間通りにミルナレに到着し周辺を含めて視察をする。ミルナレは小さい砦だが周囲はよく見渡せているし物資も十分に足りているようだ。


「殿下、砦と周辺は問題点はないように思われますがいかがでしょうか?」


「そうだな、物資も十分足りているから定期的に補充すれば良いだろう。レオ、人員不足はどうだったか?」


「はい、緊急事態前は30人程度が馬と徒歩の二部隊に分かれ一日三交代制で国境付近を巡回をしていましたが、現在では40人に増員しています。しかしこの状況が続くのなら巡回するには40人でも不足しているとの要望がありました。人員を増やすと砦が手薄になりますので増員は必要であると思います」


「精鋭部隊とパイゼン兵を合わせても足りないならマドナラにいる騎士団兵の一部で増員するか。

それにミルナレが足りないなら東のインベルも足りないだろうな。戻り次第検討するので増員要請に応じると伝えてくれ。それとミロード、増員をしたら馬の数は十分に足りそうか?」


「どうでしょうか。調べた限りでは今は足りても増員すると足りないと思います。やはり今のうちに増やしておきましょうか?」


「そうだな、早めに準備しておこうか。明日は東のインベルには行くから同じように調べて対策してくれ」


「「はい、承知致しました」」


「フィル、君は何か気がついたことはあるか?」


「はい、私も特に人員以外は問題ないかと思いました。ただ、一つだけ気になったことはありますが申し上げてもよろしいでしょうか?」


「構わない、言ってくれ」


「メッシュバルンが源流でライゼンが下流になる川が遠くに見えます。地図では遠くにあると思いましたが実際には思ったよりも近くて川も下流になるに連れて曲がりくねり我が国寄りです。メッシュバルンの人間が川を下ってくる可能性が高いと考えました。夜間であれば上陸も容易く砦からは見つけづらいと思います」


「あの川ね…。レオ、この砦の精鋭部隊長のハッサン呼んできてくれ」


しばらくするとハッサンが殿下の元へ駆けつけた。


「お呼びでしょうか、殿下」


「確認したいことがある。ミルナレから見えるライゼンの川から上陸して我が国の国境まで人の足で歩くとしたらどれくらいの時間なのか?」


「はい、成人男性が歩いた場合の時間で約30分かと思います。昔ライゼンに住んでいたパイゼン兵がおりましたので確認しております」


「思っていたより近いな。その川に面した国境付近の警備体制はどうなっている?」


「はい、メッシュバルン付近ほど強化はしておりませんが川を下って上陸することは想定済みです。増員を検討した方がよろしいでしょうか?」


「問題は夜間だな。昼間は発見しやすいが夜間だと砦からも目視できないし、巡回していても見逃してしまうな。増員に関してはこれから行う予定だから川に面した夜間の警備体制を見直してくれ」


「はい、警備体制が決まりましたらご報告致します」


こうして砦及び周辺の視察は終わりマドナラに戻り軍議に入ることになった。参加者は昨日と同じ。


「殿下、ミルナレ砦の視察お疲れ様でございました」


「待たせたね、早速だが軍議を始めようか。ミルナレの問題点は人員不足。これは東のインベルでもおそらく同じだろう。現在、第一から第三精鋭部隊は三か所の砦に分かれてパイゼン兵と共に厳重警戒態勢の任務を実施しているが十分な人員が確保されていないことを認知した。この件は至急改善すべきことであるためマドナラにいる王都騎士団から人員補充を指示する。

マドナラが手薄になるような事態は避けたいので問題点があれば王都から騎士団を動員する」


「殿下、ミルナレとインベルの両方同時に増員でよろしいでしょうか?」


「一度に済ませたいところだけどインベルの視察は明日を予定しているのでインベル精鋭部隊長のテールに確認してからの方が良いだろう。

ミルナレに関してはジェームズとカンインに任せる」


「「はい、承知致しました」」


ジェームズとカンインが退室し残りの参加者で軍議を続ける。


「パイゼン卿、メッシュバルンが源流でライゼンに続いている川の名は?」


「はい、ラドン川です」


「そうだ、ラドン川だ。あの川は南にあるミナトリアナ王国まで続くのか?」


「はい、ラドン川の幅は広くありませんが、長い距離があります。我が国から見えるのはラドン川の中流になりミナトリアナに入ったところくらいが下流になります」


「随分と長い川だな。ミルナレから見えるところが下流だと思っていたよ。ミナトリアナまで詳しく載っている地図をあまり見ていなかったから記憶になかったな」


「ラドン川が何か問題になりましたか?」


「ミルナレではすでに把握して対策済みだったがメッシュバルンから川を下って上陸した場合、成人男性だと歩いて約30分で我が国に入ることができると聞き自分の考えを省みているんだよ」


「確かにミルナレから見るラドン川は遠くに見えるようですが実際はさほど遠くありませんね。しかしミルナレのハッサンからは巡回していると聞いておりましたが」


「私も同じ報告を受けたのだが、夜間が手薄になっているようで警戒態勢の見直しを指示してきた。怪しい侵入者はマドナラ付近で目視されたと言っていたが川を下って侵入している可能性は捨てきれない」


「はい、マドナラ以外からはそのような報告はありませんので侵入経路は不明です」


「そうか…。やはり西側や東側から迂回して侵入しマドナラで目撃されているかもな。明日の視察が終わり次第軍議をするから今日の出席者に伝達するように。レオンとミロードよろしく頼む」


「「はい、承知致しました」」


殿下と俺以外は退室しやっと仕事が一段落した。

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