32 女護ヶ島
〇女岩島港。フェリー乗り場。昼。
フェリーが停泊し、大勢の白装束の女性信者がキャリーを引きながら桟橋を渡る。
その先頭には育人と千晶、絵里香。
出迎える杏奈医師、育人に抱きつく。
杏奈「おかえりなさい!育人!こんなにたくさんのガーディアンを連れて戻ってきたのね!」
育人「ああ。とりあえず、みんなをコミュニティーセンターに案内してくれ」
杏奈「この娘が千晶様?」
千晶、静かにお辞儀をする。
杏奈「さすがに教祖様ね。なんかオーラーが違うわ」
〇村長宅。
応接間に座る千晶。
額を畳に擦り付け、深々とお辞儀をする房江と美咲。
房江「ようこそお越しくださいました、千晶様。この島の村長代理をしています橘 房江と申します」
美咲「娘の美咲です。なんでもお申し付け下さい」
育人「千晶はしばらくこの家で厄介になる。よろしくな」
千晶「教団本部をこの島に移設するおつもりですか、育人?」
育人「ああ!でっかい教団本部を建設してやるからな」
千晶「でもこんなへき地では、信者を勧誘できません」
育人「各地に支部を作って信者を増やすさ。俺の血の力を使えば、女性ならば簡単に信者にできる」
美咲「ねぇ、育人?」
育人「何だ?」
美咲「あんた、ずっと女装してるつもりなの?」
育人「慈愛の母は女性信者だけの教団にするんだ。近い将来、この女岩島は女だけの島、女護ヶ島となるだろう。その時、俺だけ男の姿をしてたら目立つだろ」
美咲「そっか。男は信用できないもンね」
育人「ゆくゆくは、この島だけじゃなく、この国を女だけの国にしてやる」
千晶「そんなこと不可能です!」
育人「そうかな?」
千晶「もしも女だけの国が出来たとしても、子供が産まれないといずれ国は滅びてしまいますわ」
育人「それが望みさ……」
育人が不敵な笑みを浮かべる。
千晶「えっ!?」
育人「冗談だ!アマゾネスって知ってるか?」
千晶「女性だけの戦闘民族のことですか?」
育人「もともとはギリシア神話に登場する女性だけで生活をする部族だ。戦闘で得た捕虜や略奪してきた男たちを種馬として利用し用が済むと棄殺した。そして生まれた子供も男だったら殺した。こうして女だけの国を維持していったそうだ」
千晶「そんなのただの伝説だわ」
育人「そうか?今の時代、人工授精で男なんかいなくても子供は作れるぞ」
千晶「本気ですか?」
育人「ハハハハ!冗談だよ!」
笑い飛ばす育人。しかし、目は笑っていない。




