33 布教
〇女岩島診療所。夜。
窓の外を見ている杏奈。
外は嵐。
机に座って日誌をつける杏奈(39)。
杏奈(育人が千晶達を女岩島に連れて来て五年の年月が経った)
〇島の山頂に立つ煌びやかな建物。
杏奈(育人は島の山頂に慈愛の母の教団本部を建てた。どぎつい粉飾で目がチカチカする建物だ)
〇教団本部。建物内事務所。
PCを置いた机が並ぶ普通のオフィスのような事務所。
数十人の白装束の女性たちがPCで作業をしている。
杏奈(教団と言っても名前だけで、実際は宗教活動なんか何もしていない。慈愛の母は育人が資金を集めるために利用しているだけの宗教法人だ)
〇コンサート会場。
着物姿の演歌歌手が舞台で歌っている。
客席には満員の中年女性客。
暗い会場の隅に置かれた加湿器のスイッチを押す白装束の女性信者。
杏奈(育人は有り余る資金を使って、各地で演歌歌手やアイドルの無料コンサートを開催して女性客を集めた。そして、その会場に育人の血液を散布し、ガーディアンに変えていった。ガーディアン達はコンサートが終わると、スマホを使って慈愛の母のネット信者として登録していった)
ステージ上に立つ白装束の女性信者が説明をしている。
客席でスマホを操作している客たち。
杏奈(信者になった女性たちは毎月、慈愛の母に多額の寄付をしてくれる。そのかわりに慈愛の母は教義を綴ったメールマガジンを送る)
〇慈愛の母本部。説法会場。
大広間に百人近くの信者が座っている。
壇上に座った千晶(19)が説法を唱えている。
千晶の傍らには育人(19)が立っている。
杏奈(慈愛の母の教義は習合的で、神道の要素が多く、最終戦争を信じる千年王国主義的な面を持つ。教祖の千晶様は真剣に教義を信じて教えを広めようとしている。だが、育人はまったくそんなもの信じてはいない)
あくびをする育人。
横眼でそんな育人を見て、眉をしかめる千晶。
〇慈愛の母本部。教祖の部屋。
普通の応接室。
机に座って書類に捺印をしている千晶。
応接ソファに座って、電話をしている育人。
杏奈(既にネットで入信した信者は400万人に達している。信者と言っても表立った宗教活動も勧誘もしていないので、誰にも彼女らが慈愛の母の信者とはバレていない。しかし、既に信者は政界、財界、芸能界に多数存在していた)
〇再び女岩島診療所。深夜。
日誌を書く手を止める杏奈。
振り向いて、背後に立つ育人に話しかける杏奈。
杏奈「育人。あなたは昔私に言ったわね。俺は世界を滅茶苦茶にぶっ壊したい!!と。その気持ちはまだ変わらないのね?」




