16 女教師
〇女岩島小中学校。朝。
T「数日後」
こじんまりとした小学校と中学校の校舎が並んで建っている。
運動所には砂場と鉄棒があるだけ。
〇同、職員室。
初老の大庭校長と若い女教師、藤井 実日子。
実日子「校長先生。今日は診療所の村上先生がいらっしゃって、みんなの健康診断をして下さっています」
校長「子供好きで熱心な先生ですね。まったく良い先生が島に来て下さった」
実日子「本当ですね」
〇同、保健室。
白衣の杏奈とあゆみが女生徒達を並ばせている。
下着姿の女生徒達がキャッキャと騒ぎながら体重を計る。
〇同、教室。
一人、机に向かって勉強をしている育人。
扉を開け、実日子が入ってくる。
実日子「頑張っているわね、藤原君」
育人のしている問題集を後ろから覗き込む実日子。
実日子「もう、こんなところしているの!?随分と進んだのね!」
育人「教科書なんか、一度読んだら憶えちまう」
実日子「頭いいのね、藤原君!」
育人「俺…もっともっと、勉強したいんだ」
実日子「偉いわ!先生も応援するわ。藤原君のためならどんどん個人授業してあげる。分からないことがあったら何でも聞いてね」
育人「俺は世の中のことを知りたい。もっともっと島や外の世界のことを勉強するんだ。そうして、いつか世界を俺の物にしてやるんだ!」
実日子「ま、まあ……。男の子はそれぐらいの気概がないとね」
と、机から鉛筆が転がって床に落ちる。
コロコロと床の上を転がる鉛筆。
育人「拾え!」
実日子「駄目よ、藤原君。そう言う時は、お願いします、拾って下さいって言いなさい」
育人「いいから早く拾えよ!」
実日子「まあ!先生に向かってその口の利き方はなんですか!」
育人「うるさい!」
怒りに身体を小刻みに震わせる実日子。
実日子「かわいそうな子だと思って優しくしてたらつけあがって!やっぱりろくな躾もされてこなかったのね!」
育人「それがお前の本心だな」
手を振り上げる実日子。
実日子「お仕置きです!」
育人「人間め!!」
育人、実日子の手首を掴む。
実日子の全身に衝撃が走る。
だらーんと両手を下げ、呆けた状態の実日子。
実日子、ゆっくりと鉛筆を拾い上げ、育人に手渡す。
実日子「ごめんなさい!藤原君!私ったら、なんて酷いことを……」
涙ぐむ実日子。
育人「気にすんな、先生。お前らの本心なんかどうでもいい」
実日子「実日子って呼んで下さい」
育人「わかったよ、実日子」
育人、手の甲を差し出す。
実日子、育人の手を取り、手の甲に口づけをする。
育人「俺のことは育人と呼べ」
実日子「はい、育人。あなたに終生、忠誠を誓います」




