↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉の鐘【リメイク版】(A1-3)  作者: 闕恆遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/12

第1章:3.3 商圏の潰走

闕恆遠はハンドルを握り続けながら、耳に装着した片耳のBluetoothイヤホンを通じ、「実家の固定電話へ発信」という音声コマンドをスマートフォンへ繰り返し吹き込み続けていた。


車窓の外の街並みが、時速四十キロのスピードで後方へと流れていく。


西屯路三段は中科ショッピングプラザを越えると、四車線の道路が緩やかな上り勾配へと差し掛かり、両脇の店舗も大型チェーンの飲食店から、まばらな自動車整備工場や金物屋、トタン屋根の民家へと移り変わっていった。


沿道の混乱ぶりこそ先ほどの商業エリアよりわずかに落ち着きを見せていたものの、対向車線である市街地方面へと下っていく側道では、明らかに交通量が爆発的に跳ね上がっていた。


この丘陵地に居を構える多くの住民たちもまた、ただならぬ異変を敏感に察知したのだろう。ヘッドライトを昼間から点灯させた何台もの乗用車が、取り憑かれたような速度で市街地を目指して駆け下りていく。濡れそぼったアスファルトの上ですれ違う車列は、冷え切った白い飛沫を激しく巻き上げていた。


車がわずかな緩い勾配を越えた、まさにその刹那――


ガリッ!


後部座席にいた玥映嵐のスマートフォンの受話口から、極めて明瞭な金属の接触ノイズが不意に飛び込んできた!


それは冷え切った機械の話し中トーンでもなければ、無慈悲に回線が切れた無音の虚空でもない。確かに回線が結ばれたことを証明する、微弱な電磁波のフロアノイズだった!


プルルルルル――


受話器のスピーカーから、息を呑むほど澄んだ、長く待ち望んでいたあの呼び出し音が響き渡った!


玥映嵐の瞳孔が限界まで見開かれた。彼女はほとんど反射的にスピーカーホンのボタンを叩き込むと、前屈みになって身を乗り出し、前後の座席の真ん中へスマホを高く掲げた!


「繋がった!」


玥映嵐は金切り声を上げた。その声には信じられないという歓喜と、抑えきれない震えが混じり合っていた。


「パパの携帯、繋がったよ!」


車内の空気が、この一秒で完全に凍りついた。


全員の視線が、青白く発光する一台のディスプレイへと釘付けになった。




プルルルルル――


二度目の呼び出し音が鳴り響く。


それからわずか一秒の後、スピーカーの奥から「ガチャッ」と荒々しい受話音が響き、回線が完全に繋がった!


『映嵐(インラン)かッ!?』


中年男性の怒号のような声が、スマートフォンのスピーカーから弾け飛んだ!


その声は重苦しく、極限の焦燥に満ち、かつて聞いたこともないほどしゃがれて裏返っていた。


だがそれ以上に全員の肝を冷やし、魂を凍りつかせたのは、電話の向こうから押し寄せてきた凄まじい背景音だった――


それは静かなリビングの気配でもなければ、正月に興じる麻雀の歓笑でも決してなかった。


それは天を切り裂くように鳴り響く、極限まで耳障りで凄惨な防空警報の長い唸りだった!


ウゥゥゥゥ――ン、ウゥゥゥゥ――ン――!


普段なら萬安演習の訓練時にしか耳にすることのないあの重苦しい空襲警報が、電話の向こうで狂ったようなリズムで鳴り響き続けていた。その背景には、鼓膜を聾するヘリコプターのプロペラ音、そして路上を逃げ惑う無数の人々の絶叫と号泣が激しく入り混じっていた。


「パパ!」


「パパ、今どこにいるの!?」


玥映嵐はスマホに向かって狂ったように叫んだ。その瞳から大粒の涙が一気に溢れ出す。


「私たち、みんな台中にいるの!」


「台糖のあたりで事件が起きて」


「あちこちで人が人に噛みついてるの!」


「台北はどうなの!?」


「家は無事なの!?」




『聞くんだ!』


『映嵐!』


『落ち着いてパパの話を聞きなさい!』


電話の向こうの玥父の呼吸は、壊れた鞴のように荒く激しかった。その声は吹き荒れる猛烈な風と騒音の中でズタズタに引き裂かれ、途切れ途切れに響いてくる。


『台北に戻ってきちゃダメだ……』


『絶対に台北へ戻ってくるんじゃない!』


『台北地下鉄が……』


『板南線が……』


『三十分前に全線で運行を停止した……』


『市庁舎が……』


『さっき行政院がテレビで全島への緊急避難命令を発令したんだ……』


『台北駅のあたりは……』


『全部……』


『狂人どもで溢れかえっている……』


『軍がすでに忠孝西路に鉄条網を展開して……』


『発砲している……』


『街のあちこちで銃声が鳴り響いてるんだ!』




その言葉の数々は、青天の霹靂となって車内の五人の魂の深淵へと容赦なく叩きつけられた!


悦清禾は両手で口元を覆い、指の隙間から涙をボロボロと溢れさせながら、千慕羽の腕の中で激しく震えていた。


台北駅……忠孝西路……軍の発砲……


これは澄清病院の単独の事件でもなければ、台中だけの局所的な騒乱でもなかった。


南から北に至るまで、台湾全土の主要な人口密集地域において、常軌を逸した異常なスピードで同時多発的に発生している完全なる社会の崩壊だった!




「パパ!」


「二人はどうなの!?」


「お母さんは!?」


玥映嵐は泣き叫び、爪が手のひらの肉に深く食い込むほど拳を強く握りしめた。




『私たちは……』


『家の頑丈な防犯鉄扉を内側から施錠した……』


玥父の声には極度の疲労と、最後の力を振り絞るような決意が滲んでいた。


『お母さんもすぐ隣にいる……』


『ここにはまだ米も、水もある……』


『今のところは無事だ……』


『映嵐』


『お前、恆遠(ハンユエン)たちと一緒にいるんだろう?』


『恆遠はすぐ近くにいるのか!?』




「います!」


「おじさん!」


闕恆遠は前方に続く西屯路の上り坂を射抜くように凝視したまま、Bluetoothマイクに向かって大声で吼えた。その声は低く、岩のように揺るぎなかった。


「あいつら四人を連れてます!」


「俺たちは今車の中にいて」


「物資も全部買い揃えました!」




『恆遠……』


『映嵐を頼んだぞ……』


電話の向こうの玥父の口調は急速に焦燥を帯び、背景に響く銃声と金属の衝突音がじわじわと間近に迫ってきているようだった。


『大都市へ逃げちゃいけない……』


『もし隙があるなら』


『あいつらを連れて山へ向かえ……』


『安全な場所を見つけて、戸締りを完全に固めるんだ……』


『外で何が起きようと……』


『絶対に扉を開けるんじゃないぞ……』


『絶対に……』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。