第1章:3.4 商圏の潰走
ザザッ――ギギギィッ――!
スピーカーから突如として耳を劈く凄まじい電磁ノイズが弾け飛び、玥父の最期の言葉を容赦なく切り裂いた!
「パパ!?」
「パパッ!」
玥映嵐はスマートフォンに向かって狂ったように泣き叫んだ。
受話口の奥から返ってくるのは、ただ冷たく、規則的で、絶望を突きつける話し中音だけだった。
『ツーツーツーツー……』
通話は切断された。
画面に表示された通話時間は四十七秒で止まり、次の瞬間には完全に暗転して、アンテナマークは一切の電波を拾えない灰色のバツ印へと変わった。
車内全体が、死んだような静寂へと沈み込んだ。
ただワイパーだけがフロントガラスの上を機械的に往復し、「サッ、サッ」と重苦しい音を立てていた。
極限まで張り詰めていた神経は、今この瞬間、残酷な現実によって粉々に打ち砕かれた。
五人は幼い頃から台北で共に育ち、二十数年におよぶ人生の記憶も、家族も、故郷も、そのすべてが向こう側にあった。
それなのに今、あの見慣れた繁華の街は、わずか一分にも満たない電話の断片の中で、軍が発砲して封鎖する生ける地獄へと変わり果てていた。
千慕羽は瞳を閉じ、端正な頬を伝って涙をこぼした。だが彼女は決して取り乱さず、両腕を力強く伸ばして、悦清禾と小刻みに震え続ける玥映嵐を自らの胸元へと強く抱き寄せた。そして三人だけにしか聞こえない微かな声で、呪文のように繰り返した。
「大丈夫……」
「おじさんもおばさんも鍵をかけたって言ってた……」
「家には物資もある……」
「二人とも絶対に無事だから……」
助手席の伊凝雪の、眼鏡の奥の瞳にもまた、うっすらと涙の膜が張っていた。
彼女の両親は二人とも公務員であり、勤務先は台北の中心部にある。先ほどの状況が何を意味しているのか、彼女には誰よりも痛いほど理解できていた。
だが伊凝雪は決して声を上げて泣きはしなかった。
自らの舌の先を思い切り噛み、激痛によって巨大な悲嘆と恐慌の底から自らの脳を強引に覚醒させた。
「今、泣いても何の役にも立たないわ」
伊凝雪が口を開いた。その声はわずかにかすれていたが、紡ぎ出される一言ひとことは氷のように冷徹で、明瞭だった。
「おじさんの言う通りよ」
「この災厄は台湾全土に及んでる」
「台北は私たちの想像以上に深刻よ」
「医療も行政の中枢もすでに麻痺してるわ」
「私たちは今、帰れない」
「帰れるはずもないわ」
「台湾大通りの車列が大肚山の麓を完全に塞ぎ切る前に」
「今すぐ住宅街へ戻って、戸締りを完全に固めるのよ!」
「まずは安全な場所を見つけて、自らの身を隠すの」
「私たちが生き延びてこそ」
「この先、家族を捜しに戻る希望が生まれるんだから!」
伊凝雪の言葉は全員の頭上から氷水を浴びせかけたように、車内に広がりかけていた絶望の炎を力づくで鎮火させた。
闕恆遠は深く息を吸い込み、胸板を大きく一度上下させると、あらゆる不安と痛哭を胸の最も深い底へと力任せに押し込めた。
ハンドルを握っているのは自分だ。今この瞬間、このチームの命運を預かる唯一のドライバーである自分が、取り乱すことなど絶対に許されない。
「もうスマホに希望を託すのはやめよう」
闕恆遠は低く絞り出すように言った。その声は荒削りながらも、揺るぎない力強さを帯びていた。
「今の状況から見ても」
「通信はいずれ完全に息絶える」
「電力網や水道がいつまで保つかも分からない」
「これからの地図探しは」
「道端のリアルな書店や文房具屋に入るか」
「コンビニの棚に観光ガイドや道路地図が残ってないか探すしかない」
「今は」
「まず俺たちのシェアハウスへ帰るぞ!」
古いSUVのアクセルが、再び深く踏み込まれた。
車体は西屯路三段で最も急な上り勾配を轟音とともに駆け抜けていく。大肚山から吹き下ろす冷風が細かな雨足を突き抜け、両側のサイドウィンドウを激しく叩きつけた。
雨霧の向こうに前方の道路標識が幽かに浮かんできた。遠東街へと右折する路地の入口まで、残すところあと二百メートルを切っていた。




